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令和三年十二月十六日提出
質問第四二号

政府の生活保護利用の積極的な広報活動に関する質問主意書

提出者  山本太郎




政府の生活保護利用の積極的な広報活動に関する質問主意書


 新型コロナウイルスは災害と考える。そこにどのような施策が必要かを問うとともに提案したい。まずは現実の共有から行いたい。
 総務省の最新の労働力調査では、仕事を失った状態が一年以上続く「長期失業者」は、今年七月から九月は月の平均で六十六万人に上り、昨年の同じ時期より十八万人増えたという。新型コロナの影響により「失業が長期化する傾向が続いている」と総務省はコメントしている。
 他にも、国税庁・「民間給与実態統計調査」を見れば、民間企業で働く人の令和二(二〇二〇)年一年間の平均給与は四百三十三万円余りで、おととしに比べ〇・八%少なくなった。役員を除く、正社員と非正規雇用の人で比べると、二〇二〇年一年間の平均給与でみれば、正社員が四百九十五万七千円、非正規が百七十六万二千円で、差は三百十九万五千円と、おととしより九万三千円小さくなっている。
 また、厚生労働省発表では、二〇二〇年の自殺者数の確定値が二万千八十一人と、前年より九百十二人増え、十一年ぶりに増加した。女性や若年世代の自殺者が特に増え、新型コロナによる生活の変化などが影響した可能性があるとコメントしている。
 さらに、内閣府の二〇二一年十一月十五日発表によると、七〜九月期の実質国内総生産(GDP)速報値は前期比年率三・〇%減と事前予想を上回るマイナス幅となり、プラス成長を維持する米国や欧州に比べて回復力の弱さが鮮明で、新型コロナによる低迷から抜け出せずにいる様子が明らかである。
 経済の低迷は人びとの暮らしを直撃している。例えば新宿で毎週土曜に開催されている「もやい」と「新宿ごはんプラス」の食品配布には、コロナ禍前は八十人ほどしか来なかったが、コロナ禍でどんどん増え続け、九月二十五日には三百九十四人、十一月二十日には四百八人と過去最高を更新し続けている。
 一方、池袋の「TENOHASI」の炊き出しに並ぶのは、コロナ禍前は百五十人ほどだったのが、九月二十五日には四百十六人、十一月十三日には四百三十四人、十一月には過去最高となる四百七十二人にまで増えている。
 ちなみに「TENOHASI」の炊き出し人数のコロナ禍以前の最高はリーマンショック直後の四百六十人であり、現場の支援者たちは、過去最高人数が更新され続けることについて、「いつが最悪なのかわからない。これからもっと増えるのではないか」と語っている。
 コロナ禍以前は近隣で野宿する中高年男性がメインだった炊き出しや食品配布に、今や女性や子連れ、カップルが並ぶ。路上やネットカフェ暮らしの人もいるが、家がある人も多い。コロナで仕事を切られた人、シフトを減らされて収入が半分以下になった人、失業期間が長引いている人たちだ。
 新型コロナという災害の影響により生活困窮に陥る、又はその手前にいる人々の数は相当数にのぼるという危機感が政府には足りないように思える。
 困窮状態にある者を直ちに救済することはもちろんのこと、困る手前でしっかりとセーフティーネットにより生活を立て直すことが、更なる困窮者を増やさない基本と考える。
 一方で唯一といえるセーフティーネット、生活保護は捕捉率が低い。つまりは受けるべき状態にある者の多くが受給していない。実際、支援の現場においても、例え困窮状態にあっても、生活保護だけは受けたくない、という反応が非常に強いことが多数報告されている。
 年末年始を迎えるにあたり、弁護士たちが生活保護に関し、無料で電話相談に応じる「生活保護ホットライン」が全国一斉に行われるなど、生活に困窮しているにもかかわらず、生活保護の利用を知らない人びとの支援活動を行っているが、これまで事実上の受け皿を善意で務め続けてくださっている民間は、すでに限界を超えている。
 政府が本気で救済に本腰を入れなければ、困窮者も支援者も共倒れになる寸前と感じている。
 ここで、政府に問う前に提案を行いたい。
 政府広報による、「生活保護を積極的に受けてください」「生活保護はあなたの権利です」「困る前に受けてください」という趣旨の大々的な宣伝を行う必要があると考える。
 イメージとしては「三密を避けろ」と徹底して流された政府広報レベルで、最も多くの人々に情報提供が可能なテレビCMを大量かつ集中的に流す必要があるだろう。
 一方で、政府は十分ではないが、広報は行っている。
 昨年十二月二十二日、厚生労働省のウェブサイトに「生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を申請する可能性はどなたにもあるものですので、ためらわずにご相談ください」との文言を掲げ、社会保障制度の利用を促す広報を行った。
 その後、生活保護の問題に詳しい有識者(稲葉剛氏、以下、上記参考人)は、参議院厚生労働委員会(令和三年五月六日)において、参考人として、「公式サイトにおいて生活保護の申請は国民の権利ですという広報を始めましたが、ネットでの広報には限界があります」と述べた上で、「一部の政治家が主導した過去のバッシングによって浸透してしまった生活保護に関するマイナスイメージを払拭するためには、テレビのコマーシャルや駅の広告など、様々なツールを活用した広報を行う必要があります」と述べ、マイナンバーカード並みの予算を投入して広報を展開してほしいと広報活動の強化を要望している。
 内閣府・政府広報室のウェブサイトでは、その業務内容として、「内閣が進める重要政策について、各府省庁と連携しつつ、首相官邸ホームページ等、様々な媒体を活用した広報を推進」、及び「内閣の重要政策に関する広報について、政府一体となって戦略的に取り組んでいくため、各府省庁との総合調整を実施」と説明している。
 そこで、当方では、政府広報室に対して、政府広報がどのような分野で積極的に行われているか、及び、生活保護の広報予算が全体のどの程度を占めるのかを探るべく、内閣府だけではなく、各省庁も含めた過去三年間の政府広報予算の総額や、予算の媒体別配分割合、政策分野別配分割合について問い合わせた。
 その結果、政府広報室の予算総額(令和三年度では約百八十五億円)で、媒体別の配分では、テレビ・ラジオが約一割、新聞が約二割、インターネットが約二割、複合的に活用するクロスメディアが約五割とその内訳は回答を得たものの、項目ごとの予算配分がわかる資料はない、との回答であり、ほか省庁の広報予算の情報は一体的に把握していない、とのことだった。
 先に引用したとおり「内閣の重要政策に関する広報について、政府一体となって戦略的に取り組んでいくため、各府省庁との総合調整を実施」するはずの政府広報室が、政府広報の効果を測定するために必要不可欠な項目別の予算配分の情報を把握できていないことは、まことに遺憾と言わざるを得ない。
 一方、当方が、厚生労働省に生活保護利用呼びかけの実績を問い合わせたところでは、以下のような回答が得られた。
「○政府広報 政府広報を活用し、令和二年十一月十六日〜二十二日にかけてYahoo!ニュースにバナー広告を掲載し、「日々の暮らしに大変お困りのときは国民には最低限度の生活が保障されます ご相談は、地域の福祉事務所へ」と呼びかけを行いました。
○Twitter 厚生労働省の公式ツイートにおいて、以下のとおりツイートしています。
・ツイート内容「生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるものですので、ためらわずにご相談ください」
・時期 令和二年十二月二十四日、二十五日、二十八日、令和三年八月十三日
○新聞、テレビCM、ネット動画CM、街頭オーロラビジョン、電車等の動くCMなどを利用した生活保護の利用を呼びかけた実績はありません」
 つまり、政府は過去の実績ではウェブ広告やSNSを活用した広報は行っているが、新聞、テレビCM、ネット動画CM、街頭オーロラビジョン、電車等の動くCMといったインターネットにアクセスすることなく見ることができる媒体を通じての広報は依然として行っていない、ということである。
 そこで、以下に政府の見解を問う。

一 この冬にも政府は昨年に行ったような手法で、生活保護の利用を呼びかける方針か。その規模は昨年を上回るものか。
二 今後、年末年始から春に向け、これまでのウェブサイトに加え、上記の未活用の媒体(特にテレビCM)を通じて生活保護の利用について、「利用は権利である」と呼びかけることで、緊急に保護を必要としている人に必要な情報を効果的に伝達することが可能になるとともに、生活保護の捕捉率の引き上げにもつながると考えるが、政府はどのように考えるか。
三 「生活保護の申請は国民の権利である」と厚生労働省が広報する中で、上記参考人が指摘する、一部の政治家がその権利の行使を萎縮させる問題が再び発生しないように、政府としてはどのような取り組みを行っていく方針か。
四 政府広報を効果的に実施するためには、政府広報室が、各省庁も含めた政府広報予算、それらの予算がどのような分野にどれだけ配分されているかを継続的に把握し、常に政策効果を検証するべきではないかと考えるが、政府はどのように考えているか。

 右質問する。

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