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令和四年六月十日提出
質問第一三三号

「経済安全保障についての政府の基本認識」に関する質問主意書

提出者  小山展弘




「経済安全保障についての政府の基本認識」に関する質問主意書


 今国会では、「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律」も成立し、軍民両用技術の流出防止、企業のサプライチェーンの維持・確保、サイバー攻撃への対応など、いわゆる経済安全保障といわれる分野への対応が求められるとともに、国民的関心が高まっている。一方で、経済安全保障の概念は、時として経済活動、経済の自由とも矛盾する局面もあり、経済界からもその点について懸念の声も示されている。そこで、以下の経済安全保障に関する政府の基本認識について伺いたい。

一 国際政治学における「ネオリアリズム」の論者は、国家は相対的利得を求める存在と規定するが、経済は交換によってWINWINの関係を築く要素もある。エコノミック・ステイトクラフトのように経済を手段として相手を脅し、政治的意思を実現しようとする相対的利得を求めるゼロサム的な姿勢や、その国民生活への影響を最小限にとどめるための経済安全保障政策と、WINWINの関係、絶対的利得を求める経済の本質的な性質は根本的に矛盾する要素があると考えられる。また、経済的な利潤追求や国家が「新自由主義制度論」のように絶対的利得をも求める存在であることも踏まえ、そのように定義するならば、特に経済分野においては、エコノミック・ステイトクラフトや経済安全保障とともに、国家間の協調や経済の発展に資する政策も展開すべきと考える。この点についての政府の認識は如何。
二 岸田総理は衆議院本会議で「経済安全保障は特定の国を念頭に置いたものではない」としつつも「基本的価値やルールに基づく国際秩序の維持強化に向けて米国をはじめとする同盟国・同志国との連携強化は重要」と答弁している。また、一月七日の日米安全保障協議委員会の共同発表では「同盟が技術優位を確保」「日米は新興技術に関する協力を前進及び加速させ」「防衛分野におけるサプライチェーンの強化に関する協力を行う」と述べている。これらの文脈から米国やクアッド以外の国が対象となっていると推測され、中国やロシアを主な対象としているという論理的帰結になろうかとも思われる。中国の特許取得数、引用される科学論文数などが増加し、数だけ見れば米国を抜いて世界第一位となっている。二十年前と異なり、5G技術をはじめ、かなりの技術を開発できる国になっている。経済安全保障、技術安全保障の障壁を高め、技術の移転規制を強化すれば、対象国が対抗手段をとり、中国から日本への技術流入も減少する可能性も考えられる。日本にもメリットとデメリットが存在するが、政府は経済安全保障政策についてどのようなメリット、デメリットがあると認識しているか。また、経済安全保障政策を実施することによって相互依存を軽減するデカップリングのために対中貿易の減少を意図することはあるのか。
三 国際政治学の代表的古典的現実主義者のモーゲンソーは、「国家の力を決定する諸要素の中で明らかに地理が最も安定した要素である、地理的位置が政治的決定に及ぼす意義が過去の別の時期と比べて異なっていようとも、すべての国家の対外政策はこれを考慮しなければならない」と述べる一方で、地政学について「地理という要因が国家の力や運命を決定するはずの絶対的なものであるとみなす似非科学である」とも述べ、「諸国家の相対的な力は征服された空間の相互関係によって決定される」という地政学について「排他的かつそれゆえに歪曲された角度から地理を描いた映像を提示」と痛烈に批判している。私は地政学や地経学、地戦略(geostrategy)的発想を全否定しないし、モーゲンソーの時代に比べれば、地政学も発展していると考える。しかし、ネオリアリズムの主張する、国家は相対的利得を求めるという国益概念に基づいて、国家間関係をゼロサムとしてのみとらえ、絶対的利得を求める国家間関係の他の側面を捨象することは、モーゲンソーの指摘するとおり、一面的で歪んだものにもなりかねないと考えるが、政府は経済安全保障概念の基礎となっている地経学、その元となっている地政学について、どのような認識を有しているか。
四 米国は冷戦時代においても、同盟諸国に対してココム規制を守らなければ制裁を科す、あるいはココム違反を指摘して同盟諸国の共産圏への貿易抑制を要請する一方で、自国の共産圏への輸出を拡大するような行動も見られた。現在では、米国は中国の脅威を主張しつつ、米中の貿易額は過去最大を記録している。米国に出し抜かれないような経済安全保障の姿勢が必要と考えるが政府の認識は如何。
五 経済安全保障と関係する概念である産業安全保障を、政府はどのように定義するのか。日本の産業競争力の比較優位を保つという観点なのか。軍民両用技術の無制限の流出を防ぐ、あるいはそのような産業を守るという狭義の意味で定義するのか。

 右質問する。

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