衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
令和四年六月十日提出
質問第一三九号

憲法改正による緊急事態条項の規定の必要性に関する質問主意書

提出者  松原 仁




憲法改正による緊急事態条項の規定の必要性に関する質問主意書


 ロシア連邦によるウクライナへの軍事侵攻や朝鮮民主主義人民共和国による度重なる大陸間弾道ミサイルの発射など、国民が現に他国からの軍事侵攻の恐れを感じる状況が生じている。令和四年五月に日本放送協会が行った世論調査でも、憲法改正して「緊急事態条項」を設けるべきとの質問に対し、賛否がともに四十%で均衡している。
 憲法を改正して「緊急事態条項」を設けることの意味は、内閣総理大臣若しくは内閣が緊急事態と判断した場合に、法律ではなく政令で基本的人権の制限を行うことができるようになることにある(以下、本質問主意書において、かかる内容を伴う緊急事態条項を「緊急事態条項」という)。
 かかる緊急事態条項の危険性は、近年のトルコ共和国の事例から明らかになっている。平成二十八年七月十五日に発生したクーデター未遂事件を受けて同国のエルドアン大統領は、同月二十二日に同国憲法に基づいて「非常事態宣言」を発出した。同宣言により、議会での審議可決を経ることなく大統領を議長とする閣僚会議が法律と同等の効力を持つ政令を発布することができるようになった。同大統領には、閣僚会議を構成する首相指名権及び大臣任命権並びに大臣解任権があることから、一個人による独裁が可能となっている。
 実際に、同大統領は、同宣言の発出以後、基本的人権の保護を定めた欧州人権条約の効力を一時停止し、犯罪に関連したと同国捜査当局がみなす人物を令状なしに拘束できる期間を三十日に延長した。そして、同大統領は同宣言を奇貨として、クーデター事件とは無関係の左派やクルド人を対象として、十五万人を超える公務員や軍人を免職とし、約千社の企業を接収し、約百五十のメディアを閉鎖に追い込んだとされている。そして、同宣言は平成三十年七月十九日の解除まで約二年続いた。
 また、フィリピン共和国においても、同国憲法で規定されている緊急事態条項に基づいてなされた戒厳令が約二年七か月と長期間にわたった。同国ドゥテルテ大統領(当時)は、平成二十九年五月二十三日、同日発生した同国南部ミンダナオ島マラウィ市でのイスラム系反政府勢力との戦闘を受けて、ミンダナオ島に戒厳令を布告した。同国憲法には、戒厳令の期間を、六十日を超えない期間との規定があった。そして、議会に対し、戒厳令宣言を取り消す権限を与えるとともに、その延長権限も与えていた。さらに、同国憲法には、市民が最高裁判所へ戒厳令の必要性に疑義を提出する権限も規定されていた。
 しかし、同国の戒厳令は、令和元年十二月三十一日まで延長され、その期間は前記のとおり約二年七か月と長期間にわたるものとなった。
 このトルコ共和国やフィリピン共和国の事例は、緊急事態条項の危険性をまざまざと見せつけるものである。憲法上、一個人による独裁が可能とされれば、牽制機能が有効に機能する可能性は低く、基本的人権はいずれ蹂躙され、期間制限など無意味となることは明白である。
 そこで、次のとおり質問する。

一 アメリカ合衆国には、憲法上、緊急事態条項が規定されていないとされるが、政府として、アメリカ合衆国以外に緊急事態条項を憲法上設けていない国を何か国と把握しているか。
二 政府として、現行法の枠内で、内閣総理大臣が、内閣を構成するその他の国務大臣のすべてを罷免し、当該大臣を兼務することは可能と考えているか。
三 前項において、内閣総理大臣単独による内閣の構成が可能とすると、緊急事態条項の創設は、内閣総理大臣単独での基本的人権の制限を許容することとなるが、政府として如何。

 右質問する。

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.