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令和四年八月三日提出
質問第二八号

安倍晋三元内閣総理大臣の国葬儀に関する質問主意書

提出者  中谷一馬




安倍晋三元内閣総理大臣の国葬儀に関する質問主意書


 政府は令和四年七月二十二日の閣議で、安倍晋三元内閣総理大臣の国葬儀を同年九月二十七日に行うと決定した。本件について、以下質問する。

一 「故吉田茂国葬儀」の際には、大喪の礼を除いて国葬についての根拠法令がなかったことから閣議決定によって国葬儀が行われた。その一方で、今回の「故安倍晋三国葬儀」に関しては、令和四年七月十四日の岸田文雄内閣総理大臣の発言によると、内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)において国の儀式が内閣府の所掌事務となっており(第四条第三項第三十三号)、国の儀式として行う国葬儀については、閣議決定を根拠として、行政が国を代表して行い得るとしている。しかしながら、内閣府設置法の内閣法制局の解釈については、岸田文雄内閣総理大臣の発言のみが先行しており、公的にどのような解釈がなされているのか、公表されていない。そこで伺うが、内閣法制局は、内閣府設置法第四条第三項第三十三号「国の儀式並びに内閣の行う儀式及び行事に関する事務に関すること(他省の所掌に属するものを除く。)。」で、国会の審議等を必要とせずに閣議決定のみで「故安倍晋三国葬儀」を行えると考えたのか、詳細についてお示し頂きたい。
二 慶應義塾大学の小林節名誉教授(憲法学)は、令和四年七月二十七日付のアエラドットの記事において、内閣府設置法第四条第三項第三十三号は、皇室典範第二十五条で決まっている国葬などの儀式を内閣が執行する規定であり、「内閣が元首相の国葬という新しい儀式類型を創出して良いという規定ではありません。だから、今回の閣議決定は明らかに違憲です」という見解を述べられており、内閣府だけで決めるのなら、「内閣葬」がふさわしいという意見があるが、岸田文雄内閣は、こうした意見についてはどのように考えているのか、所見を伺いたい。
三 史学雑誌第百三十編第七号「戦後日本の公葬 国葬の変容を中心として」によれば、「貞明皇后大喪儀」の際に佐藤達夫法務府法制意見長官が、国葬実施には、「実際上は、国会の両院において決議が行われ、それを契機として内閣が執行するという経緯をとることが望ましい」と述べているが、「故安倍晋三国葬儀」に関して岸田文雄内閣は、国会の審議等は不要であると考えているのか、所見を伺いたい。
四 史学雑誌第百三十編第七号「戦後日本の公葬 国葬の変容を中心として」によれば、「故吉田茂国葬儀」の際に、社会党は反対しなかったものの、山本幸一書記長が、閣議決定のみは不適当で、議院運営委員会でもいいので国会の議決を求めるべきだと述べている。また、今回の「国葬(故吉田茂国葬儀)」は前例とせず、今後の取り扱いは衆議院議院運営委員会で検討するべきとの主張を行っているが、今回の「故安倍晋三国葬儀」は、内閣府設置法第四条第三項第三十三号を踏まえて閣議決定のみで「国葬」を行うことができる前例になると考えているか、岸田文雄内閣の見解を伺いたい。
五 国葬に関する基準を定めることなく、時の内閣が独断で決定することは公平性に欠けるという趣旨の意見がある。「故宮澤喜一内閣・自由民主党合同葬儀記録」に記載されている「合同葬儀」の決定等の経緯に関する過去の例による考え方の整理によれば、「長期にわたり国政の重責を担い、国内的にも国際的にも大きな足跡を残したこと」、「その逝去が国政遂行上の殉職ないしこれに相当するようなものであったこと」が述べられているが、これ以上の明確な定義は定められていない。そこで伺うが、岸田文雄内閣は「国葬」が行われるべき者の基準をどのように考えているのか、詳細について所見を伺いたい。また、安倍晋三元内閣総理大臣の逝去は、国政遂行上の殉職ないしこれに相当するようなものであったと考えているか、所見を伺いたい。
六 現在の日本国憲法下で国葬を行う際には、衆参両院議長・最高裁判所長官といった三権の長との協議を行い、三権合同で行うべきであるという意見があるが、岸田文雄内閣は、三権の長との協議を行い、三権合同で国葬の開催を行うことについてはどのように考えているのか、所見を伺いたい。
七 今回の「故安倍晋三国葬儀」では、葬儀委員長は岸田文雄内閣総理大臣、葬儀副委員長は松野博一官房長官、葬儀委員は第二次岸田内閣の各国務大臣、内閣官房副長官、森昌文内閣総理大臣補佐官、内閣法制局長官、内閣府副大臣、内閣府大臣政務官及び内閣府事務次官が務めるとのことである。
 また、「故安倍晋三国葬儀」の執行に関する細部の事務を処理するため、葬儀実行幹事会を設置した。
 首席幹事は、森昌文内閣総理大臣補佐官が務め、幹事は、藤井健志内閣官房副長官補、松田浩樹内閣官房内閣総務官、出口和宏内閣官房内閣審議官、原宏彰内閣府大臣官房長、原典久内閣府大臣官房審議官、中田昌和内閣府大臣官房政府広報室長兼内閣官房内閣審議官、冨安泰一郎デジタル庁統括官、角田隆復興庁統括官、古賀浩史宮内庁長官官房審議官、小島裕史警察庁長官官房長、櫻澤健一警察庁警備局長、石田晋也金融庁総括審議官、黒田岳士消費者庁次長、今川拓郎総務省大臣官房長、澤田史朗消防庁次長、松本裕法務省大臣官房長、石川浩司外務省大臣官房長、志野光子外務省大臣官房儀典長、青木孝徳財務省大臣官房長、矢野和彦文部科学省大臣官房長、山田雅彦厚生労働省大臣官房長、榎本健太郎厚生労働省医政局長、渡邊毅農林水産省大臣官房長、藤木俊光経済産業省大臣官房長、宇野善昌国土交通省大臣官房長、久保田雅晴国土交通省航空局長、瀬口良夫海上保安庁次長、鑓水洋環境省大臣官房長、芹澤清防衛省大臣官房長が務めるとのことであるが、これ以上、葬儀委員及び葬儀実行幹事会のメンバーが増える可能性があるか、岸田文雄内閣の見解を伺いたい。また、あるとすればそれはどういう人選を想定しているのか、詳細について見解を伺いたい。
八 史学雑誌第百三十編第七号「戦後日本の公葬 国葬の変容を中心として」によれば、「故佐藤栄作国民葬儀」において、葬儀委員は、実行委員会にて選定され、国民有志が委員として選ばれた。故人と生前に親交があった井上靖氏、王貞治氏、森繁久弥氏など各界から著名な国民有志が委嘱を受けることとなった。
 そこで伺うが、今回の「故安倍晋三国葬儀」は、「国民葬儀」ではないので、国民有志を委員に委嘱する考えはないという認識で正しいか、岸田文雄内閣の見解を伺いたい。また、仮に国民有志を委員に委嘱する考えがある際には、どういった人選を検討しているのか、詳細について見解を伺いたい。
九 史学雑誌第百三十編第七号「戦後日本の公葬 国葬の変容を中心として」によれば、「故大平正芳内閣・自由民主党合同葬儀」では、カーター米大統領、華国鋒中国首相をはじめとする海外の首脳が多数参列し「喪服外交」が繰り広げられ、結果として「わが国の国際的地位の向上」を示すものとして好意的に報道された。
 そうした中、自民党の高市早苗政調会長は「故安倍晋三国葬儀」が閣議決定されたことに関して、「外国の方々に弔問の場を用意することは非常に意義がある」、「この国の儀式として内閣府が執り行うことで、外交的な意義や遺族の負担軽減は非常に大きい」などと述べており、国葬儀の外交的な意義について、肯定的な論調の意見を述べる方が少なからず存在する。
 そこで伺うが、岸田文雄内閣は、「故安倍晋三国葬儀」の外交的な意義をどのように考えているのか、所見を伺いたい。また、「国葬儀」、「国民葬儀」、「内閣・政党合同葬儀」では外交的な意義に違いが生じると考えているのか、見解を伺いたい。
十 「故安倍晋三国葬儀」に関して、岸田文雄内閣として安倍家など遺族の意向は確認されているのか、伺いたい。また、確認されているとすれば、安倍家など遺族は「故安倍晋三国葬儀」という「国葬儀」を行うことに関して賛意を示されているのか、併せて所見を伺いたい。
十一 安倍晋三元内閣総理大臣の功績に関する評価については賛否両論ある。
 岸田内閣総理大臣は、令和四年七月十四日の記者会見で、「安倍元総理におかれては、憲政史上最長の八年八か月にわたり、卓越したリーダーシップと実行力をもって、厳しい内外情勢に直面する我が国のために内閣総理大臣の重責を担ったこと、東日本大震災からの復興、日本経済の再生、日米関係を基軸とした外交の展開等の大きな実績を様々な分野で残されたことなど、その御功績は誠にすばらしいものであります。外国首脳を含む国際社会から極めて高い評価を受けており、また、民主主義の根幹たる選挙が行われている中、突然の蛮行により逝去されたものであり、国の内外から幅広い哀悼、追悼の意が寄せられています。」などとして、「国葬儀の形式で安倍元総理の葬儀を行うことといたします。」と述べている。
 その一方で、各種メディアでは、「憲法解釈変更による集団的自衛権行使の一部容認などは「国会で議論を尽くしたとは言えない。強引な政権運営は民主主義を軽んじた」」、「森友、加計両学園、桜を見る会の問題について「(安倍氏や政府の)虚偽答弁や不誠実な対応は国民に大きな政治不信を招いた」」、「森友・加計学園や「桜を見る会」を巡る問題では、説明責任を尽くさなかった。真相は依然として闇の中だ」、「桜を見る会に関しては、国会でうその答弁を積み重ねた。国会軽視の姿勢も忘れてはならない」、「国葬とすることで安倍氏の負の側面に向き合わず、ふたをしてしまうことにつながらないか」、「過去三十年間で、賃金が上がらず、物価は上昇した。アベノミクスで生活が良くなったと実感できている国民も多くはなさそう」など厳しい意見も相次いでいる。
 そこで伺うが、岸田文雄内閣は安倍晋三元内閣総理大臣の歴史的評価が定まっていると考えているのか、所見を伺いたい。また、定まっているとすれば、どのように定まっていると考えているのか、所見を伺いたい。
十二 大平正芳元内閣総理大臣が死去した際に、現職で死去したことで国葬に値するとの意見があったが、結果としては内閣・自由民主党による合同葬が行われた。
 このように戦後の歴代総理大臣の中には、国葬に値するとの意見がありながら、国葬に関する慎重意見も根強いことから内閣・政党・国民有志の三者が主催する国民葬、内閣・政党が主催する合同葬、特定の政党が行う政党葬などが執り行われてきた。
 こうした歴史的な背景を踏まえて伺うが、吉田茂元内閣総理大臣を除く、戦後歴代の総理大臣と比べ、安倍晋三元内閣総理大臣はどのような点でより国葬に値すると判断され、「故安倍晋三国葬儀」の閣議決定が行われることとなったのか、岸田文雄内閣の見解を伺いたい。
十三 佐藤栄作元内閣総理大臣が死去した際、訃報に接した政府内では、@首相在任期間が七年八か月と当時最長であったこと、A平和的な話し合いによって沖縄返還を実現するといった国際史の中でも特筆すべき実績があったこと、B「非核三原則」という日本の核兵器に対する基本政策をうち立て、ノーベル平和賞を受賞するなど功績が顕著であったこと、C国葬とされた吉田茂元内閣総理大臣と同様に、生前に大勲位菊花大綬章を受章していたことなどの意見を中心に国葬実施論が勃興したと承知している。しかしながら、様々な理由から反対意見が示され、結果としては、内閣・自民党・国民有志の三者が主催する国民葬という非国葬の形式で開催されることとなった。
 こうした歴史的な背景を踏まえて伺うが、岸田文雄内閣は安倍晋三元内閣総理大臣の功績が佐藤栄作元内閣総理大臣の功績を超えるものであると考えているのか、見解を伺いたい。また、超えるとしたならばそれはどういった点から優れていると考えているのか、詳細について所見を伺いたい。
十四 安倍晋三元内閣総理大臣の葬儀に関して、「国葬」として行うことに関して様々な世論調査が行われている。
 令和四年七月十九日に公表されたNHKの世論調査では、安倍元総理大臣の葬儀を、国の儀式の「国葬」として行う方針への評価を聞いたところ、「評価する」が四十九%、「評価しない」が三十八%であった。また、同月二十六日付産経新聞の世論調査では、政府の国葬決定を「どちらかといえば」も含めて「よかった」と答えたのは計五十・一%で、「よくなかった」も「どちらかといえば」を含めると計四十六・九%となり拮抗した。
 その一方で、同月三十一日公表された共同通信社の世論調査では、安倍晋三元内閣総理大臣の国葬に関して、「反対」、「どちらかといえば反対」が計五十三・三%、「賛成」、「どちらかといえば賛成」が計四十五・一%、同年八月一日に公表された日本経済新聞社の世論調査では、安倍晋三元内閣総理大臣の国葬に関して「反対」が四十七%、「賛成」が四十三%で、反対が賛成を上回る調査が散見されるようになった。
 トレンド的には賛成意見から反対意見が多くなっている傾向にあり、いずれにせよ賛否両論が拮抗していることから、政府による一方的な意思決定により国民の分断が深まることを懸念する。
 そこで伺うが、岸田文雄内閣は世論調査を踏まえた国民の意志をどのように受け止めているのか、所見を伺いたい。
十五 日本国憲法第六十六条により内閣は行政権の行使について国会で説明する責任を負っており、国会審議に応じない政府・与党の姿勢に対する批判が散見される状況にある。
 「故安倍晋三国葬儀」に関しては、論点が多く、確認しなければならないことが多々あるので、早急に次の臨時国会を開いて審議を行うように、岸田文雄内閣総理大臣から自由民主党総裁として与党に働きかけを行う考えはないか、所見を伺いたい。

 右質問する。

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