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令和四年八月三日提出
質問第四一号

会社版地面師事件への対処に関する質問主意書

提出者  松原 仁




会社版地面師事件への対処に関する質問主意書


 平成二十九年六月、大手上場会社のハウスメーカーが約六十億円弱の詐欺被害を被った事件が報道され、世間の耳目を集めた。この事件は、不動産の正当な所有者になりすます偽の所有者が、買主に当該不動産を購入させ、買主から売却代金をだまし取る事件であり、地面師事件といわれたりする。当該ハウスメーカーの地面師事件以外にも、近年多数の地面師事件が報道されている。
 不動産を対象とする地面師事件は、真正な所有者を偽って書類を偽造するなどして不動産取引が行われるため、購入者が慎重に取引を進める他に防ぎようがない。もっとも、不穏な動きを真正な所有者が察知できれば、不正登記防止申出書を法務局に提出する方法で、防御を図ることも可能であるが、まったく認識できないなかで進められてしまうと防ぎようがない。
 この地面師事件と同様の詐欺行為が、会社においても起こりうると当職は聞き及んだ。会社においては、会社の代表者として買主に当該会社資産を購入させ、買主から売却代金をだまし取ることがなされる。加えて、会社版地面師事件では、預金を引き出すなど会社が保有する資産そのものを窃取する行為も行われうる。
 会社版地面師事件を実行する詐欺師は、会社の代表者に就任するために、現任の代表者の辞任届を偽造して、虚偽の登記を法務局に申請して代表者を変更するとのことである。さらに、会社版地面師事件で特徴的なのは、辞任届を偽造しなくとも、偽って支配株主だとして、株主総会を開き、現任の代表者を含むすべての役員を解任して、新たに、詐欺師の関係者を代表者に就任させるという方法でも、代表者変更が可能な点である。この危険性は、公正証書原本不実記載罪などの成立により刑罰を受けることを覚悟した詐欺師であれば、どんな大きな株式会社でも、一時的に詐欺師が代表取締役に就任することができるということである。そして、当該株式会社は、弁護士などに相談し、被害回復を図らなければならない。相手が詐欺師であるから、被害株式会社が損害を回復できる可能性が低い。
 そこで、次のとおり質問する。

一 令和二年三月二十三日付け法務省民商第六十五号法務省民事局商事課長が発出した「役員全員の解任を内容とする登記申請があった場合の取扱いについて(通知)」により、それまでは、会社又は法人の役員(会計参与を除く…)全員の解任を内容とする変更の登記の申請があった場合、速やかに、当該会社の本店又は法人の主たる事務所に宛ててその旨を記載した書面を普通郵便で発送して連絡するとなっていたものを、「会社又は法人の役員(会計参与を除く…)全員の解任を内容とする変更の登記の申請があり、当該登記をした場合には、登記完了後速やかに、原則として、当該会社の本店又は法人の主たる事務所に宛ててその旨を記載した書面を普通郵便で発送して連絡するものとする」と改められた。この変更により、公正証書原本不実記載罪などの成立により刑罰を受けることを覚悟した詐欺師により、一時的に当該詐欺師が代表取締役に就任することができてしまう可能性が変更前より高くなった。同法務省民商第六十五号の前の運用に戻すべきと考えるが、政府として如何。
二 同法務省民商第六十五号には、「申請権限に疑義がある事案については、当該登記をする前に連絡することを妨げない」との記載があるが、現場でどのような場合に当該事案に該当するかを判断することは困難と思料するが、政府として如何。
三 同法務省民商第六十五号には、「登記完了前に、解任されたとされる役員のうちのいずれかが申請書又は添付書面の閲覧を求めた場合には、届出印又は運転免許証の提示等の適宜の方法により、登記簿上の役員本人又はその代理人であることを確認した上、閲覧に応じて差し支えない」との記載があるが、全国で、このような求めが、過去五年間で各年何件あったと政府は承知しているか答えられたい。
四 同法務省民商第六十五号には、「登記完了前に、解任されたとされる代表者から、当該登記申請に係る申請人が代表者の地位にないことを仮に定める内容の仮処分決定書その他の一定の公的文書が提出された場合には、当該公的文書を当該登記申請の審査の資料とすることができる」との記載があるが、全国で、同公的文書を当該登記申請の審査の資料とした事案が、過去五年間で各年何件あったと政府は承知しているか答えられたい。
五 同法務省民商第六十五号には、「登記完了前に、解任されたとされる代表者から、当該登記申請に係る申請人が代表者の地位にないことを仮に定める内容の仮処分の申立てを行った旨の上申書…が提出された場合には、一定の期間に限り、当該申立てに係る仮処分決定…が行われるまでの間は、登記を留保して差し支えない」との記載があるが、全国で、当該内容を理由として登記が留保された事案が、過去五年間で各年何件あったと政府は承知しているか答えられたい。
六 同法務省民商第六十五号には、「登記完了前」にとの記載が多いが、通知が登記完了後であることと平仄が合っていないと思料するが、政府として如何。
七 不実の代表者変更の登記申請を行い、申請会社を乗っ取ろうとする事件に対処するためには、「会社又は法人の役員(会計参与を除く…)全員の解任を内容とする変更の登記の申請が」あった場合に、「登記完了」前にその旨の連絡を受けるのみならず、「解任されたとされる代表者から、当該登記申請に係る申請人が代表者の地位にないことを仮に定める内容の仮処分の申立てを」行う旨の上申書を提出することにより、当該仮処分を申し立てるに必要な合理的期間、当該登記を留保する運用に改められるべきと考えるが、政府として如何。

 右質問する。

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