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令和四年十月十九日提出
質問第一八号

不動産を取得した外国法人の実質的支配者情報の収集に関する質問主意書

提出者  松原 仁




不動産を取得した外国法人の実質的支配者情報の収集に関する質問主意書


 英国は本年八月一日、二千二十二年経済犯罪(透明性及び執行)法の規定に基づく新たな外国法人登記制度を施行させた。イングランド及びウェールズでは、平成十一年以降に不動産を取得して保有する外国法人は、基本的に英国の法人登記所での登記を義務付けられ、実質的支配者情報の申請を求められることとなった。登記懈怠や虚偽申請に罰則が定められている他、未登記の外国法人は令和五年二月以降に不動産の移転登記を行えなくなったことで、実効性が担保されている。英国の専門家によれば、対ロシア制裁を効果的に実施する必要が生じ、同制度の施行が早まったとのことである。
 一方、本邦で不動産を取得した外国法人の実質的支配者情報の収集体制は、大きな問題があると言わざるを得ない。本職が、本年三月三十日に開かれた衆議院外務委員会で指摘したように、不動産を取得した外国法人は、公的機関に実質的支配者を報告する義務を課されていない。
 本年の外交青書が述べたように、我が国の周辺には、強大な軍事力を有する国家が集中し、軍事力の更なる強化や軍事活動の活発化が顕著となっており、我が国を取り巻く安全保障環境は格段に速いスピードで厳しさと不確実性を増している。そこで、外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号)の規定に基づく経済制裁措置を、抑止力として積極的に活用すべきと考える。我が国に対して武力による威嚇又は武力の行使を行おうとする国の政府高官等が、我が国に保有するいわゆる隠し財産を把握しておけば、不法な行動を思いとどまらせる抑止力になり得る。また、重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律(令和三年法律第八十四号)の規定に基づく調査を実施するためには、土地等を所有する法人の実質的支配者情報が必要となる。さらに、中華人民共和国が近年、海外の港湾施設を支配下に収める目的で組織的な投融資活動を行っていると度々指摘されていることからも、対内直接投資の実態を把握できるようにする必要がある。外国法人の実質的支配者情報の収集は、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策の観点ばかりでなく、我が国の平和及び安全の維持のためにも、極めて重要といえる。
 それらを踏まえ、以下、質問する。

一 我が国は現在、ウラジーミル・プーチン大統領やセルゲイ・ラブロフ外務大臣を含む多数のロシア連邦の団体及び個人を、資産凍結等の措置の対象として指定している。本年二月二十四日以降、資産凍結対象のロシア連邦の団体又は個人が所有等しているとして、資本取引を行うことについて許可を受ける義務を課した不動産は、土地・建物それぞれ何個あるか。また、凍結した不動産の市価の合計は、凡そ幾らくらいか。政府の把握しているところを述べられたい。
二 金融活動作業部会の「FATF勧告」は、マネー・ローンダリング又はテロ資金供与のための法人の悪用を防止するため、各国は法人の実質的支配者情報について、どのようにせよと勧告しているか。政府の把握しているところを述べられたい。
三 金融活動作業部会の第四次対日相互審査報告書(令和三年八月三十日公表)は、法人の透明性と実質的支配者情報に関して、課題を指摘したか。指摘したとするなら、どのような指摘であったか。
四 現行、株式会社(特例有限会社を含む)、一般社団法人及び一般財団法人を設立する際、公証人による定款認証がなされる際、「実質的支配者となるべき者の申告書(又はその写し)」の提出が求められているが、「FATF勧告」や第四次対日相互審査報告書の趣旨から十分な法人の実質的支配者把握がなされていると、政府として認識しているか。また、十分でないと認識している場合、今後、どのように法人の実質的支配者把握を進めていく予定であるか。政府の見解如何。
五 英国の二千二十二年経済犯罪(透明性及び執行)法は、英国で不動産を取得した外国法人に対して、基本的に毎年、実質的支配者を含む法人登記を更新することを求めている。一方、我が国の宅地建物取引業者は、犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成十九年法律第二十二号)の規定に基づき、取引を行う顧客等が法人である場合において、実質的支配者等の確認を行うことを義務付けられているが、取引が終了した後は、当然のことながら、実質的支配者の変更を確認することを求められていない。そのため、外国法人の実質的支配者の変更による不動産の実質的な所有権移転があった場合に、これを把握することは極めて困難である。不動産の登記名義人となっているいわゆるペーパーカンパニーを売買することで、実質的支配者情報を開示することなく、かつ所有権移転登記を伴わず、巨額の資産を移転できることが、マネー・ローンダリング又はテロ資金供与のため悪用される危険性があると考えるが、政府の見解如何。
六 不動産を取得した外国法人に対して、実質的支配者及びその変更の報告を義務付け、報告懈怠や虚偽報告に厳しい罰則を定めるべきと考えるが、政府の見解如何。

 右質問する。

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