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令和五年二月八日提出
質問第三号

出生前検査に関する質問主意書

提出者  阿部知子




出生前検査に関する質問主意書


 妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる出生前検査(以下、NIPT)に関しては、二〇一三年に日本産科婦人科学会が指針を策定するとともに、日本医学会が施設の認定制度を設けて検査が行われてきた。しかし、認定施設以外での検査が増加し、適切な遺伝カウンセリングが行われずに受検するなどの問題が指摘されていたことから、厚生労働省は二〇一九年十月から二〇二〇年七月までワーキンググループで実態把握や分析を行い、その報告を踏まえて二〇二〇年十月に厚生科学審議会科学技術部会の下にNIPT等の出生前検査に関する専門委員会を設置、翌年五月に報告書がまとめられた。報告書に基づいて二〇二二年二月に日本医学会出生前検査認証制度等運営委員会が「NIPT等の出生前検査に関する情報提供及び施設認証の指針」を公表した。旧制度では認定施設が大学病院など百八施設に限られていたが、指針に沿って、同年九月に連携施設、暫定連携施設合わせて二百四施設が発表され、六月に公表されていた基幹施設と合わせて三百七十以上の施設が認証された。これらの状況を踏まえて、質問する。

一 新たな認証制度によって対象施設が拡大した現在においても、インターネット上には認証を受けずに検査を実施している施設の情報があふれている。報道や専門委員会の報告書によると、非認証施設は皮膚科や美容外科など専門外の医療機関も含まれており、十分な説明や遺伝カウンセリングが行われなかったり、結果が郵便やメールで伝えられたり、結果判明後のフォローが十分でなかったりするケースもあることが指摘されている。また、運営委員会の指針で定められている三種類以外の、精度が検証されていない検査を行っているところもある。これらのことから、NIPTをめぐる問題には国が主体的に取り組む必要があると考える。まずは、どの施設でどのような検査が行われているのか、検査にあたっての説明やカウンセリングはどのようになされているのか、結果の伝達やその後のフォローがどのように行われているのか、非認証施設も含めて実態を調査する必要があると思うが、国の見解を示されたい。
二 専門委員会の報告書では、今後の課題として認証制度について「一定の基準を満たした検査実施医療機関を全国に整備するとともに、NIPTの受検を希望する妊婦及びそのパートナーが非認証施設で受検するのではなく、認証医療施設で受検するよう促すことを目的としている」などとある。国としては今後、認証施設での受検を促すためにどのような施策を実施していくつもりか、また、非認証の施設に対してどのような対応を取るつもりか、答えられたい。
三 同指針では、「市町村で母子健康手帳を交付する際にチラシを使って検査について情報提供する」としている。同指針は、自治体の情報提供を「受検を勧奨するものではない」としているが、専門委員会の報告書によると、妊娠経験者へのNIPTについてのインターネット調査結果(二〇一五年、有効回答数二千二百二十一)では、検査について「知らないままで良かった」という声もあり、情報提供は、意図しなくても受検を勧めていると理解されることがあることに留意が必要であるとしている。一九九九年に厚生科学審議会先端医療技術評価部会の出生前診断に関する専門委員会が出した「母体血清マーカー検査に関する見解」においては、「本検査の情報を積極的に知らせる必要はない」としていた。この間、国内でもNIPTが行われるようになり、非認定施設での検査が増え、スマートフォンの普及で情報が入手しやすくなったなど、妊婦を取り巻く社会環境の変化があることは理解できるが、基本的にすべての妊婦に情報提供することに方針を転換した根拠を示されたい。
四 日本産科婦人科学会周産期遺伝に関する小委員会の「NIPT受検者のアンケート調査結果について」によれば、認定施設が加盟するNIPTコンソーシアムが二〇一三年四月から二〇二〇年三月までに実施した八万六千八百十三件の検査で陽性が判明した千五百五十六例のうち千八十三例が妊娠を中断しており、中断率は七十八・二%に上る。21トリソミー(ダウン症候群)に限ってみると九百四十三例中七百七十四例が妊娠を中断し、中断率は八十七・五%に上る。このようにNIPTが広く呼びかけられ、胎児に障害があることが疑われた場合、多くが妊娠を中断している現状がある。妊娠の中断は母親である女性に肉体的、精神的な負担と苦痛を強いるだけでなく、障害者の出生を防止するという優生学的な思想を生むこと、また、障害者の存在や人権を脅かす可能性があることを、障害者権利条約を締結している立場から、国としてどう考えるか見解を答えられたい。
五 同指針では「産まれながらの病気の有無やその程度と本人及びその家族の幸、不幸は本質的には関連がない」としている。ダウン症をはじめNIPTで検査されるトリソミーの子どもたちのこの十年における生命予後や医療・生活ケアの向上について、国はどのように把握し、妊婦やパートナーへの遺伝カウンセリングにおいてどう伝えているのか、伝える際の指針はあるのか。また、NIPTのあり方や遺伝カウンセリングに関して、遺伝的な病気のあるお子さんを持つ方々の要望をどのように把握しているのか。

 右質問する。

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