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令和六年六月五日提出
質問第一二〇号

国民の信頼に応える医療事故調査制度への改善に関する質問主意書

提出者  阿部知子




国民の信頼に応える医療事故調査制度への改善に関する質問主意書


 医療事故調査制度は二〇一五年十月の開始以来、本年で十年を迎えようとしている。この制度の目的は、原因究明によって事故に学び、再発防止策を講じて今後の医療に活かし、もって医療の質を高め、安全を確保するという公益のためにある。ところが制度開始前から指摘されていた課題がいまだに放置されていることにより、本来の目的が果たせないばかりか、医療への信頼性をも損なう事態となっている。
 十年を経てますます問題が顕在化してきていることに危機感を持ち、公正な事故調査とその結果を社会へ還元するために、以下質問する。

一 医療事故調査・支援センター(以下センター)の権限・機能強化について
 1 制度開始前、医療事故報告件数は年間千三百〜二千件と試算されていた。これは日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業において収集した件数を、全国の病院病床数で割り戻した数等に基づき算出されたものである。しかし、この間の報告件数は二〇一五年:八十一件、二〇一六年:四百六件、二〇一七年:三百七十件、二〇一八年:三百七十七件、二〇一九年:三百七十三件、二〇二〇年:三百二十四件、二〇二一年:三百十七件、二〇二二年:三百件、二〇二三年:三百六十一件と、九年間の合計でもわずか二千九百九件に留まっている(センター二〇二三年年報。以下年報)。
  実績数と試算の数値との顕著な乖離について、政府の見解を示されたい。
 2 年報の「病床規模別医療事故発生報告実績の割合」では、二〇一五年十月〜二〇二三年十二月末までの八年三か月で、「報告実績なし」が、四百〜四百九十九床:五十四・二%、五百〜五百九十九床:三十九・九%、六百〜六百九十九床:二十七・九%、七百〜七百九十九床:十・三%、八百〜八百九十九床:十四・八%、九百床以上:十七・〇%とされている。しかし、大規模な医療機関ほど多数の症例を扱うことから事故事例も多いと考えられ、一例も医療事故に該当する事例がないのはいかにも不自然である。積極的に医療安全に取り組んでいる医療機関とそうでないところとの格差は一目瞭然であり、制度として機能していないことは歴然である。この状況を放置したままでよいのか。政府の見解を示されたい。
 3 年報の特定機能病院(八十八病院)の全体に占める報告割合は三百六十一件中五十六件(十五・五%)にとどまっている。また、報告回数は「四回〜六回」が最も多く三十七・五%(三十三病院)であった。「一回〜三回」は三十四・一%(三十病院)、「七回〜九回」は十五・九%(十四病院)、「十回〜十二回」は四・六%(四病院)、「十三回〜十五回」は一・一%(一病院)、「十六回以上」は三・四%(三病院)で、まったく報告実績がないのは、三・四%(三病院)であった。
  特定機能病院は平成二十九年の医療法改正に伴い、承認要件の見直しが行われた。医療事故の多発により、特に医療安全管理体制の整備が求められ、事故等の報告はもちろん、全ての死亡事例の医療安全管理部門・管理者への報告が義務づけられている。さらに死亡事例以外でも、一定以上の事例については事例を認識した全職員からの報告を義務化し、内部通報窓口機能を制度化している。病院管理者に報告が挙げられる体制が整備されたにもかかわらず、事故報告ゼロはあり得ない。政府の見解を示されたい。
 4 また、年報で「センター合議における助言内容および医療機関の判断」によれば、医療機関からの医療事故か否かの相談に対し、センターで合議を行い「医療事故」として報告を推奨すると助言した件数は四十五件であったにもかかわらず、医療機関が事故報告をしなかった件数は十九件にも上っている。報告すべき事例が報告されていない実態が端的に示されたこうした実態について、政府の見解を示されたい。
 5 この制度は医療機関の管理者が医療事故と判断しなかったものについては報告の必要がなく、それを不服とする遺族側からのセンターへの調査依頼はできないことになっている。しかし、医療の一方の当事者は患者・家族である。センターに遺族の届け出窓口を新設し、医療機関のみならず、遺族側から相談を受けたセンターが、医療事故として報告すべきと判断した事例については、医療機関に対して調査・報告を求めることができ、当該医療機関が一定期限内になお調査を開始しないときは、センターが調査を開始できる制度を創設する必要があるのではないか。センターの機能強化と公正性・透明性の保持について、政府の見解を示されたい。
二 センターの調査報告書の公表について
 1 現在、センターが行う調査に係る報告書は公表されていない。しかし、そもそも調査制度の目的の一つは同様の事故の再発防止である。公表されれば、これを教訓として他の医療機関でも参考にすることができる。個人の特定につながる情報を排除し、匿名性を担保したうえで共有され、再発防止に活かされることが重要と考えるが、政府の見解を示されたい。
 2 さらに、医療機関に適切に医療事故の報告を促す観点からも事例の公表は必要である。「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡又は死産であって、当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかった」死亡は医療事故として報告することとされている。しかし、医療機関にとって目の前の事例がその定義に当てはまるかどうかの現場の判断は難しい。医療法の施行規則で一定の基準は示されているものの、やはり具体性を欠くとともに、報告を免れたい医療機関にとっては「医療に起因していない」「予期していたこと」を拡大解釈できるものとなっている。
  どういう事例が医療事故に当たるのか判断を迷うケースについては、センターの調査事例を公表することで、医療機関の適切な判断に資することとなるのではないか。政府の見解を示されたい。
三 制度の見直しのための検討会の設置について
 現行の医療事故調査制度においては、本来報告されるべき医療事故が報告されず、センター調査報告書が公表されていないという重大な問題に加えて、院内事故調査報告書を遺族に交付するか否かについては医療機関の選択に委ねられていることや、剖検事例の少なさなど、センター調査における医学的評価が適切かつ中立公正に行われているのかが客観的に評価できないことなどが指摘されている。
 制度開始十年を迎えようとする今、改めてこうした問題点に向き合い、見直すための議論の場を設置すべきではないか。政府の見解を示されたい。
 
 右質問する。

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