質問本文情報
令和六年六月七日提出質問第一二八号
自衛隊駐屯地が公道に向けて設置している看板に関する質問主意書
提出者 屋良朝博
自衛隊駐屯地が公道に向けて設置している看板に関する質問主意書
二〇二四年六月二日の琉球新報の報道によると、陸上自衛隊与那国駐屯地では、開設した二〇一六年より、法的な根拠もなく駐屯地の柵に公道に向けて「撮影禁止」の看板を設置し、市民の表現を制限する内容の文言を掲示していることが明らかとなった。また、二〇二四年五月二十日の沖縄タイムスの報道によると、陸上自衛隊宮古島駐屯地においても、「固くお断り」という、撮影禁止と同趣旨の掲示がなされている。
これらに関連して、以下質問する。
一 与那国駐屯地及び宮古島駐屯地の施設管理権として、施設内での撮影を管理することは法的に可能と考えるが、他方で、公道における市民の行動を制限する根拠とはならない。両駐屯地において、施設外の公道に向けて撮影禁止の看板を設置し、公道における市民の行動を制限する法的根拠について、条文を示した上で、本件がこれに該当する理由を詳細に示されたい。
二 政府は、「衆議院議員矢山有作君提出自衛官によつて写真撮影を妨害された事件に関する質問に対する答弁書」(内閣衆質一〇二第四一号)において、「各部隊等が、駐屯地警備等の観点から、外部からの写真撮影を禁ずる旨の掲示を行い、また、これらの掲示がない場合において写真撮影を差し控えるよう申し出ることがあるが、これらは、いずれも当該駐屯地等の施設等の写真撮影を差し控えるよう期待して行われるものであり、強制的なものとは考えていない」との見解を示している。現在もその見解に変わりはなく、今般の与那国駐屯地及び宮古島駐屯地における撮影禁止の看板の記載事項も強制的なものではないという理解でよいか。
三 政府は、前述の答弁書において「各部隊等に対して写真撮影を行わないよう強制することはできない旨適宜指導している」としている。現在もその指導が行われているという理解でよいか。
四 撮影行為を控えてもらうよう市民にお願いするにあたり、看板の記載を「お願い」ではなく、市民の表現の制限を強いる「禁止」又は「固くお断り」としたことは、お願いすることとは異なると考える。前述の答弁書にあるように、写真撮影の禁止は強制的なものではなく、かつ、禁止を強制できない旨の指導が各部隊等に対して現在も行われているとするならば、「禁止」又は「固くお断り」の文言を選択した理由は何か明らかにされたい。
五 与那国駐屯地及び宮古島駐屯地以外の自衛隊駐屯地では、公道に向けて撮影禁止の掲示をしていない事例もある。報道されている両駐屯地以外で、現在、公道に向けて撮影禁止の表示を掲げている自衛隊施設があるか、把握している範囲で明らかにされたい。
六 撮影禁止に関する実務について
1 市民に撮影禁止を求めない駐屯地がある一方で、与那国駐屯地及び宮古島駐屯地の周辺の市民には撮影禁止を求めているが、なぜ地域によって対応が異なるのか説明されたい。また、両駐屯地に看板を設置した理由、経緯及び設置者をそれぞれ明らかにされたい。
2 看板設置の決定は防衛省本省の指示か、現地施設管理者の判断か。
3 看板に記載された事項に従わず公道から駐屯地内を撮影する者への対応として、例えば、撮影した写真を見せるよう隊員が撮影者に要求する、撮影者がこれに応じないとき又は隊員が写真を閲覧しこれが世間に拡散されると安全保障上支障があると判断したときは写真を削除するよう要求する、撮影者が写真の削除要求に応じないときはカメラを没収する、といった措置をとることができるのか。あるいは、看板の記載事項に強制力はないため、撮影を控える旨のお願いしかできないのか。撮影時の個別の事情とは関わりなく一般論としてとり得る措置の内容を答えられたい。
4 与那国駐屯地が開設された二〇一六年に撮影禁止の看板の設置を認めた最終決裁権者は誰か。また、誰の判断により、現在に至るまで看板の設置が継続されてきたのか。
5 駐屯地司令や業務隊長は、どのような権限に基づき、撮影禁止の行動制限措置をとっているのか。階級上そのような権能はあるのか、説明されたい。
七 二〇二四年六月二日の琉球新報の報道によると、このような看板の設置について駐屯地側は、自衛隊の活動の特殊性を理由にしているとされるが、敷地外からの撮影まで禁止しなければならないような自衛隊の活動の特殊性とは何か。また、撮影禁止の看板を設置しなければ、自衛隊の活動にどのような支障があるのか、具体的に示されたい。
八 与那国駐屯地及び宮古島駐屯地の撮影禁止の看板について、それぞれ作成・設置に係る費用、当該費用の予算費目及び設置枚数、現在に至るまでの看板の維持管理費を明らかにされたい。
九 二〇二四年五月二十日の沖縄タイムスの報道によれば、与那国駐屯地は取材に対し、「文言など改善すべき点は検討する」と回答したとされるが、現時点において、看板に記載された表現は不適切であり、改善の必要があると認識しているか。
右質問する。