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令和六年六月十日提出
質問第一三三号

「経理的基礎」の審査基準と適合性審査に関する質問主意書

提出者  山崎 誠




「経理的基礎」の審査基準と適合性審査に関する質問主意書


 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「法」という。)第四十三条の三の六では、「原子力規制委員会は、前条第一項の許可の申請があつた場合においては、その申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。」とし、第二号において、「その者に発電用原子炉を設置するために必要な技術的能力及び経理的基礎があること。」と定めている。
 この「経理的基礎」の審査と審査基準について、福島第一原子力発電所事故の前と後(以下、「事故前」、「事故後」という。)での解釈に疑義があり質問する。

一 事故前の一九五八年十月二十九日、第三十回国会衆議院科学技術振興対策特別委員会において、科学技術庁原子力局長は、「経理的基礎と申しますのは、炉の設置に要する費用のみではないのでありまして、自後これを運転するための費用、あるいは将来−−これも近い将来と思いますが、必要になると思われる保険問題等に関する経理的な基礎というふうにお考えいただきたいと思います。」と答弁している。
 この答弁での「経理的基礎」というのは、原子炉設置に掛かる費用だけではなく、つまり個別工事の資金の調達できるか否かだけではなく、運転等のランニングコスト、将来のトラブル事故あるいは損害賠償等に対応できる保険等を含めて財務基盤のあることとの理解で良いか。見解を問う。
二 事故前の一九九二年十一月十日、科学技術庁原子力局が発出した「日本原燃株式会社六ケ所再処理・廃棄物事業所における再処理の事業の指定について」の文書中、(3)法第四十四条の二第一項第三号(経理的基礎に係る部分に限る)において、
 @法文規定:「その事業を適確に遂行するに足りる(技術的能力及び)経理的基礎があること。」
 A関連する事業指定申請書等における記載項目
  ・事業計画書(添付書類二)
  ・使用済燃料の取得計画、再処理計画等
  ・工事に要する資金の額及びその調達計画
  ・事業開始後十年間にわたる年度毎の資金計画及び事業の収支見積り
 B調査審議の主なポイント
  ・事業に必要とされる資金の取得計画が明確に策定されているか。
  ・事業に必要とされる資金の確保について、確かな見通しがあるか。
としている。
 1 @法文規定の「その事業を適確に遂行するに足りる経理的基礎」とは、事業を遂行する財務状況にあること、資金計画と収支見通しのあることとの理解で良いか。見解を示されたい。
 2 ここでの「経理的基礎」は、「工事に要する資金の金額及び調達計画」だけではなく、事業計画及び「事業開始後十年間の年度毎の収支見積」等を申請書等に記載し、これを調査審議するとの理解で良いか。見解を示されたい。
 3 「年度毎の資金計画及び事業の収支」とは、工事資金の調達だけではなく投資資金の回収までも含めた事業収支との理解で良いか。見解を示されたい。
 4 調査審議ポイントとして「事業に必要とされる資金の取得計画及び確保の見通し」とある。これは「工事に要する資金調達」だけではなく、「事業に必要とされる資金」も調査審議するとの理解で良いか。見解を示されたい。
三 事故後の二〇一八年十二月五日、第百九十七回国会質問第一二二号宮川議員の質問主意書における、「一 東京電力が資金支援を決めていないとすれば、一千七百四十億円に対する経理的基礎はないと理解するが、それで正しいか。それでも経理的基礎があると原子力規制委員会が判断する場合はその理由は何か。」という質問への答弁書によれば、「御指摘の「経理的基礎」についての審査は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第四十三条の三の八第二項において準用する同法第四十三条の三の六第一項第二号の規定に基づき、申請者がその申請内容に係る工事に要する資金を調達できる見込みがあるかどうかを確認し、経理的基礎に係る許可の基準の適合性を判断するものである。」とされている。
 1 この「経理的基礎」の審査は、「個別工事の資金千七百四十億円の資金調達見込みの確認」のみを限定して審査許可基準にしているとの解釈で間違いないか。見解を示されたい。
 2 千七百四十億円の工事期間が延びたり、追加工事があれば工事金額は増額される。増額されれば、増額分の資金調達を確認するとの理解でよいか。見解を示されたい。
四 事故後の二〇一五年五月二十八日、第百八十九回国会衆議院原子力問題調査特別委員会での藤野議員の質問に対し、田中原子力規制委員会委員長は、「御指摘のように、新規制基準適合性に係る審査では、運転費用等に関する審査は行っておりません。原子炉を設置するために必要な経理的基礎があることを設置許可の要件とした趣旨は、原子炉の設置に多額の資金を要することに鑑み、そのための資金や調達能力を欠いた場合には原子炉の設置の基盤そのものを失うことになるということから、原子炉の設置に係る経理的基礎が重要であるという認識に立ったものと考えております。運転に当たってはこうした確認は必要ないだろうという判断であります。」と答弁している。
 1 この答弁のいうところは、設置許可要件となる「経理的基礎」は、原子炉の設置には多額の資金を要して、資金の調達能力を欠けば設置の基盤を失うことになるので、運転費用等の審査をする。しかし、新規制基準適合性に係る千七百四十億円工事の「経理的基礎」の審査は、千七百四十億円の資金調達が可能かの審査しかしていないとの解釈で良いか。見解を示されたい。
 2 「経理的基礎」の解釈が、事故前と事故後で変わったとすれば、正確には、いつの時点で、どのような手順で、誰が変えたのか。見解を問う。
 3 先に示した、一九五八年十月二十九日衆議院科学技術振興対策特別委員会における科学技術庁原子力局長の答弁、すなわち「炉の設置に要する費用のみではないのでありまして、自後これを運転するための費用、あるいは将来−−これも近い将来と思いますが、必要になると思われる保険問題等に関する経理的な基礎」として示された広い意味での経理的基礎は、いつの時点で審査しなくて良いことになったのか。見解を問う。
 4 原子力規制委員会は「工事の資金調達」だけを審査するが、広い意味の経理的基礎については、他の組織で審査しているのか。見解を問う。
五 事故後、二〇一八年三月二十日、更田原子力規制委員会委員長は、記者会見において東海第二原発の審査に関し、「安全に係る規制当局としては、安全上の充分な投資ができない主体に対して、原子炉のような潜在的に大きなリスクを抱える施設の運用を認めることはできない」と発言している。また、「債務保証」について「ただ、債務保証については、そもそも日本原電の方から話があったことで、基本的にこちらから債務保証がなければと言っている状態ではないというのは御理解をいただきたいと思います」と述べている。
 1 この「安全上の充分な投資ができない主体」とは、自己資金により投資、運用できない主体(事業者)ということで良いか。見解を示されたい。
 2 債務保証について「基本的にこちらから債務保証がなければと言っている状態ではない」という更田委員長の発言を聞けば、規制委員会が主体的に経理的基礎を審査しようとしているのかはなはだ疑問である。そもそも原子力規制委員会には財務、会計等の専門家はいない。原子力規制委員会に経理的基礎を審査することは可能なのか。見解を示されたい。
六 日本原子力発電株式会社(以下、「原電」という。)の「経理的基礎」について
 1 原電の借入に東北電力株式会社の「債務保証」が必要なのは、原電が金融機関に提出した千七百四十億円の工事計画、投資と回収の事業計画、財務内容、収支を示す資金繰り計画は、信用できないと金融機関が評価している結果であるとの理解で良いか。政府の見解を示されたい。
 2 事故前には、原電の資金調達の借入に東京電力株式会社(以下、「東電」という。)も「債務保証」をしている。債務保証もできない東電の前払費用金は経理的基礎の資金となりえるのか。政府の見解を示されたい。
 3 計上されていない減価償却費用分を「前払費用」として、「調達資金」だとするのは、会計処理上のルールを無視したものではないか。政府の見解を問う。

 右質問する。

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