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令和六年十月一日提出
質問第一〇号

憲法第七条及び憲法第六十九条に対する石破茂総理大臣の見解に関する質問主意書

提出者  中谷一馬




憲法第七条及び憲法第六十九条に対する石破茂総理大臣の見解に関する質問主意書


 二〇一九年六月七日に掲載された石破茂総理大臣のオフィシャルブログにおいて、「本来の解散・総選挙について規定しているのはあくまで憲法第六十九条の「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、または信任案を否決した時は十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」というのが原則で、第七条に列記されている天皇陛下の国事行為の中の一つである解散に「内閣の助言と承認」を必要とする、というのは、政治的な行為をなさらない天皇陛下による解散を行われるにあたっての形式要件を規定したものと解するのが自然でしょう。国会閉会中でも衆議院解散は可能、とするのが政府の見解ですが、会期延長と解散が絡めて論じられるのは「国会開会中に衆議院が示した意思が内閣の意思と異なった場合、国民に判断を仰ぐ必要が生じる」からであるとされています。そうであるとすれば、衆議院において「衆議院の意思と内閣の意思が異なる」ことが明確にならなければなりませんが、与党が安定多数の議席を持っている場合、そのような事態は考えにくい、ということになります。この前提においては、選挙の際の公約を果たすため、与えられた四年の任期を全うするのが国民に対する責任であると考えます。自民党の先人である故・保利茂元衆院議長は、第六十九条に明記されている場合に加えて、「予算案や、国の行方を左右する内閣の重要法案が否決されたり審議未了になったりしたとき」「その直前の総選挙で各党が明らかにした公約や政策とは質の異なる重要な案件が登場し、国民の判断を求める必要が生じたとき」に限り、七条解散が許されるとの見解を示され(一九七九年・保利衆院議長見解)、故・宮澤喜一元総理は「解散権は好き勝手に振り回してはいけない。あれは存在するが使わないことに意味がある権限で、滅多なことに使ってはいけない。それをやったら自民党はいずれ滅びる」と語っておられたそうですが(出典未確認)、この言葉の持つ重さと恐ろしさを感じます。先日BS番組でご一緒した高安健将・成蹊大教授は、「解散して国民の判断を仰ぐ場合には、国民が判断するに必要な十分な情報と時間(解散から投票までは四十日以内。公職選挙法第三十一条第三項)が与えられるべき」と述べておられましたが、これもまさしく然りと思います。」という記事が掲載されている。
 また、二〇二〇年七月二日の共同通信社での講演にて、七条解散は憲法論からすべきではないとの立場で内閣不信任決議案可決か内閣信任決議案否決に伴う六十九条解散に限定すべきだと主張したと報じられている。
 さらに、二〇二四年九月十四日に開催された日本記者クラブ主催の自民党総裁選立候補者討論会において「私は、国民の判断ってのは本当に厳粛に受けなければいけないと思っています。で、そうすると、国民の皆様方が判断していただける材料を提供するのは、それは政府の責任であり、新しい総理の責任だと思っています。私も随分議員もやっていますし閣僚も随分やりましたが、本会議ってのはもう基本一方通行です。問われたことにこっちが答える、なかなかやり取りってのはないんですね。やはり、本当のやり取りってのは予算委員会だと思っている。で、そうすると一日ずつやるのかはともかくとして、国民の皆様方がご判断いただける材料を提供するってのは、やはり政府の責任だ、与党の責任だと私は思います。衆議院議員がこの国からいなくなるんですよ、解散ってのは。それがどういうことなのかというのはよく認識した方がいい。そして、世界情勢がどうなるか分からないのに、すぐ解散しますって言い方は私はしません。解散して良い状況が整うかどうかということを判断するということであって、私は国民に対する畏れの念というのは常に持っていたいと思っています。」旨の発言をしている。
 これに関連して以下、質問する。

一 石破茂総理大臣が過去に、七条解散は憲法論からすべきではないとの立場で内閣不信任決議案可決か内閣信任決議案否決に伴う六十九条解散に限定すべきだと主張したことは事実であるのか確認したい。
二 一が事実であった場合、石破茂内閣は衆議院の解散を内閣不信任決議案可決か内閣信任決議案否決に伴う六十九条解散に限定すべきと考えているのか確認したい。
三 朝日新聞社が九月十四、十五日に実施した全国世論調査で、裏金問題に関係した議員を自民党が次の衆院選で公認することを尋ねたところ、「納得できない」が七十六%と大多数を占めた。
 また毎日新聞社が同月二十八、二十九日に実施した全国世論調査で、自民党派閥の裏金事件について、石破茂総裁が実態解明に取り組むべきか尋ねたところ、「実態解明に取り組むべきだ」は七十七%でこちらも大多数を占めた。
 石破茂総理大臣は、裏金事件対応について国民が納得をしていないならば、公認権者である総裁も説明責任を果たすべきだと述べたと報じられているが、衆議院の解散についてはこれらの説明責任を果たした後に行われるという認識でよいか、見解を伺いたい。
四 「衆議院の意思と内閣の意思が異なることが明確」になる状況というのは、どのような状況を想定しているのか。また与党が安定多数の議席を持っている場合、そのような事態は考えにくいと石破茂総理大臣が述べているが、現状はそうした事態ではないと認識しているのか、石破茂内閣の見解を確認したい。
五 石破茂総理大臣は、オフィシャルブログで「本来の解散・総選挙について規定しているのはあくまで憲法第六十九条の「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、または信任案を否決した時は十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」というのが原則で、第七条に列記されている天皇陛下の国事行為の中の一つである解散に「内閣の助言と承認」を必要とする、というのは、政治的な行為をなさらない天皇陛下による解散を行われるにあたっての形式要件を規定したものと解するのが自然でしょう。国会閉会中でも衆議院解散は可能、とするのが政府の見解ですが、会期延長と解散が絡めて論じられるのは「国会開会中に衆議院が示した意思が内閣の意思と異なった場合、国民に判断を仰ぐ必要が生じる」からであるとされています。そうであるとすれば、衆議院において「衆議院の意思と内閣の意思が異なる」ことが明確にならなければなりませんが、与党が安定多数の議席を持っている場合、そのような事態は考えにくい、ということになります。この前提においては、選挙の際の公約を果たすため、与えられた四年の任期を全うするのが国民に対する責任であると考えます。」と述べているが、四で確認している「衆議院の意思と内閣の意思が異なることが明確」にならなかった場合には、与えられた任期を全うするのか、否か、石破茂内閣の見解を確認したい。
六 石破茂総理大臣は、オフィシャルブログで「自民党の先人である故・保利茂元衆院議長は、第六十九条に明記されている場合に加えて、「予算案や、国の行方を左右する内閣の重要法案が否決されたり審議未了になったりしたとき」「その直前の総選挙で各党が明らかにした公約や政策とは質の異なる重要な案件が登場し、国民の判断を求める必要が生じたとき」に限り、七条解散が許されるとの見解を示され(一九七九年・保利衆院議長見解)、故・宮澤喜一元総理は「解散権は好き勝手に振り回してはいけない。あれは存在するが使わないことに意味がある権限で、滅多なことに使ってはいけない。それをやったら自民党はいずれ滅びる」と語っておられたそうですが(出典未確認)、この言葉の持つ重さと恐ろしさを感じます。」と述べているが、現状は予算案や、国の行方を左右する内閣の重要法案が否決されたり審議未了になっているもしくは直前の総選挙で各党が明らかにした公約や政策とは質の異なる重要な案件が登場し、国民の判断を求める必要が生じていると石破茂内閣は認識しているのか見解を確認したい。また現状の予算案や内閣の重要法案の審議状況がどのような状況になっているという認識を持っているのか詳細について説明されたい。
七 石破茂総理大臣は、オフィシャルブログで「先日BS番組でご一緒した高安健将・成蹊大教授は、「解散して国民の判断を仰ぐ場合には、国民が判断するに必要な十分な情報と時間(解散から投票までは四十日以内。公職選挙法第三十一条第三項)が与えられるべき」と述べておられましたが、これもまさしく然りと思います。」と述べている。
 1 国民が判断するに必要な十分な情報と時間をどの程度与える必要があると石破茂内閣は考えているのか、定性的な見解の他に、定量的な時間数なども交えた詳細を示されたい。
 2 二〇二四年十月一日に臨時国会を召集し、九日にも衆議院解散に踏み切り、十五日公示、二十七日投開票の日程を軸に衆院選を実施する方向で検討しており、「諸条件が整えば、十月二十七日に総選挙を行いたい。」と発言したと報じられているが、九日間程度の国会開催と解散から投票日まで十八日間程度の期間で国民に対して判断するに必要な十分な情報と時間が与えられていると考えているのか、石破茂内閣の見解を伺いたい。
八 石破茂総理大臣は九月二十九日のNHK番組で「首相が代わる。国民の判断を早く仰ぐべきだ」と述べ、またフジテレビ番組で解散・総選挙に関しては「早ければ早い方がいい。」と明言している。
 1 石破茂総理大臣の一から七まで質問した過去の発言内容と昨今の発言の整合性が全くないと考えるが、石破茂内閣はその論理的整合性をどのように認識し、説明されるのか、見解を示されたい。
 2 現状で衆議院を解散するということになった時には、六十九条解散の余地は全くなく、総理の恣意的な判断での解散そのものであると考えるが、如何か。石破茂内閣の見解を示されたい。
 3 石破茂総理大臣が先の番組で「六十九条というのは憲法に書いてあるとおり、不信任案可決された時、信任案が否決された時と限定してあるわけです。だからそれには該当しない。だけど国政の審判を経ないままに新政権ができました。それってどうですかってことを判断を求めるのも六十九条の趣旨には合致するものだろうねと思っています。」と述べているが、新政権ができたことに関する現状について国民に信を問う解散は六十九条解散ではなく、七条解散であるという認識を持っているのか、石破茂内閣の見解を確認したい。
 4 石破茂総理大臣は在野の時には理想論を述べていたにもかかわらず、権力者になった途端に、裏金問題の実態解明も行わず、国会での審議はほとんどせずに臭い物に蓋をするようなかたちで、私利私欲、党利党略で選挙戦を有利に戦うことができるからと権力を濫用し、二枚舌で衆議院の解散を強行することは愚の骨頂で信頼に値しないと考えるが、石破茂内閣は特段問題ないと考えているのか、見解を示されたい。
 5 「国民の判断ってのは本当に厳粛に受けなければいけないと思っています。」「国民の皆様方が判断していただける材料を提供するのは、それは政府の責任であり、新しい総理の責任だと思っています。」「すぐ解散しますって言い方は私はしません。 解散して良い状況が整うかどうかということを判断するということであって、私は国民に対する畏れの念というのは常に持っていたいと思っています。」と九月十四日に述べていた石破茂総理大臣が十六日後の九月三十日に「十月二十七日に総選挙を行いたい。」と述べたことについて、国会軽視も甚だしいと考えるが、SNSなどのネット上では「嘘つき解散」と厳しく批判されているが、石破茂内閣はこの現実をどのように受け止めているのか、見解を示されたい。
 6 石破茂総理大臣は、能登半島の被災状況を念頭に「喫緊の課題は能登の震災、直近の豪雨対策」と述べていながら、衆議院の解散に関して「早ければ早い方がいい。」と述べ、解散総選挙を強行しようとしているが、能登地方を中心とした石川県の地域では現在も地震と豪雨の二重災害で苦しんでいる状況にあり、「急すぎる」「職員が足りない」と悲痛な声が上がっている。さらに、現実に投票所は避難所として利用されている事例が多くある。こうした状況下において、甚大な被害に対する支援を行うための補正予算編成を行わずに解散して、被災地の復旧復興を疎かにするばかりか、当該自治体に強い負担をかける状況を作ることに関して、石破茂内閣は問題ないと考えているのか、見解を示されたい。また「衆議院議員がこの国からいなくなるんですよ、解散ってのは。それがどういうことなのかというのはよく認識した方がいい。」と発言していた石破茂総理大臣自身が二重災害で苦しんでいる能登地方の状況を無視して、政治空白を作ることについても問題ないと考えているのか、石破茂内閣の見解を示されたい。
九 衆議院議長の承認を受けた質問主意書は、内閣に転送され、内閣は質問主意書を受け取った日から七日以内に答弁しなければならない。七日以内に答弁できない場合は、その理由と答弁できる期限が議長に通知されることとなっているが、何かしらの理由を無理につけて答弁を延期したり、今国会は答弁前に解散したから答弁はしませんなどということにならないようにしっかりとマネジメントをしていただきたいと考えるが如何か。石破茂内閣の見解を伺いたい。

 右質問する。

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