衆議院

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令和六年十月三日提出
質問第二八号

TSMC及びJASMに対する支援等に関する質問主意書

提出者  原口一博




TSMC及びJASMに対する支援等に関する質問主意書


 デジタル化が急速に進展する中、半導体は、パソコンやスマートフォンといった情報端末のみならず、自動車や医療機器等のあらゆる分野に使われており、デジタル社会を支える重要な基幹部品であり、経済安全保障上も重要な戦略物資である。政府は、二〇二一年十二月に特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律(令和二年法律第三十七号)(以下「5G法」という。)等を改正し、半導体の国内生産基盤を強化するための特定半導体基金事業を開始した。
 同事業では、台湾積体電路製造(以下「TSMC」という。)及びJapanAdvancedSemiconductorManufacturing株式会社(以下「JASM」という。)に対し、二〇二二年六月に熊本第一工場建設のために最大助成額四千七百六十億円、二〇二四年二月に熊本第二工場建設のために最大助成額七千三百二十億円、合わせて一兆二千八十億円もの巨額な支援が決定された。
 以下、TSMC及びJASMに対する支援等について質問する。

一 これまでの半導体産業政策の反省を踏まえた今後の対策
 1 我が国の半導体産業は、一九九〇年頃には日本企業の半導体売上高が世界シェアの約五割を占めるなど、高い競争力を有していたが、その後、凋落を続け、二〇二二年時点で世界市場の一割弱に落ち込むなど低迷している。
  本年二月二十日の衆議院財務金融委員会において、政府は、我が国の半導体産業が競争力を落としてきた原因として、日米半導体協定に代表される貿易摩擦といった政策面の課題、設計と製造が水平分離していく世界の半導体ビジネスの潮流の変化に乗り遅れたこと、日の丸自前主義というべき国内企業の再編に注力をして、有力な海外企業との国際連携を推進できなかったことといったビジネスモデルの問題など、様々な要因があったとし、この点について真摯に反省をしなければならないと答弁している。
  この答弁を踏まえると、これまでの政府の半導体産業政策の失敗が、我が国の半導体産業の衰退を招き、我が国の強みであった半導体製造技術を海外企業に流出させ、国内で半導体の製造をすることができない状況に至らしめたと言っても過言ではないのではないかと考える。
  この答弁にあるとおり、政府がこれまでの半導体政策を真摯に反省するのであれば、我が国の半導体産業の復活を遂げるためには、TSMCをはじめとする外国企業に過度に依存するのではなく、高い国際競争力を有する国内の半導体産業の育成及び強化が重要であると考えるが、政府の見解を伺いたい。
 2 また、国内の半導体企業の育成及び強化に向けた具体的な支援策及び支援スケジュールについても明らかにされたい。
二 TSMC及びJASMに対する支援の我が国の半導体産業振興への効果等
 1 支援対象となる半導体
  TSMC及びJASMの熊本第一工場で製造する半導体は十二〜二十八ナノメートル、第二工場で製造する半導体は六〜十二ナノメートルであるが、米国が補助金等により支援するTSMCアリゾナ第一工場〜第三工場で生産される半導体は二〜四ナノメートルであり、TSMC及びJASMの熊本第一工場、第二工場で生産される半導体は最先端とは言い難い。
  最先端でない半導体を製造するために巨額な助成金を投入してTSMCを誘致することは我が国の半導体産業の振興に寄与するのか、政府の見解を明らかにされたい。
 2 我が国への半導体供給の実効性の担保
  ア 5G法においては、認定を受けた事業者に対して国内向けに優先的に供給する義務を課していないが、同法第十一条第三項第四号において、特定半導体等の需給がひっ迫した場合における増産を含む国内における安定的な生産に資する取組が行われると見込まれること等を認定要件としている。
   TSMC及びJASMが認定を受けた認定特定半導体生産施設整備等計画(二〇二二半経第〇〇一号−一及び二〇二三半経第〇〇三号−一)において、@JASMは、需給がひっ迫した場合には、緊急時対応として稼働率を向上させ、増産に取り組むこと、ATSMCは、日本政府からの要請に応じ、日本の顧客向けの供給拡大について誠実に協議に応じること、BTSMC及びJASMは、関係法規及び契約の規定を常に遵守するとされている。上記@Aを根拠に我が国への半導体供給の実効性が担保され、実質的に供給義務を課していると理解して良いか、政府の見解を求める。
  イ さらに、Bに契約とあるが、これはどのようなものであるのか、契約の趣旨、当事者等を明らかにされたい。仮に当該契約が、国とTSMC及びJASMとの契約である場合、我が国への供給義務に関する条項が含まれているのか、明らかにされたい。
  ウ また、JASMと他の民間企業との契約である場合、国が関与できない民間事業者間の契約に対し我が国への優先的供給義務の担保を求めることは適切でないと考えるが、政府の見解を求める。
 3 外国企業に半導体製造を依存する経済安全保障上のリスク
  半導体戦略の重要性が増す中、外国企業であるTSMCに半導体の製造を依存することは、我が国の経済安全保障上のリスクが高まることが懸念される。TSMCは、我が国固有の領土である尖閣諸島について領有権を主張する台湾の企業であるため、台湾有事や尖閣諸島を巡る状況次第では、TSMC及びJASMによる我が国への半導体の供給が確実に担保されるのかといった懸念があるが、政府の考えを明らかにされたい。
三 環境保全対策等
 1 環境アセスメント
  ア 熊本県は二〇二三年八月に台湾を訪問し、TSMCをはじめとする半導体関連企業が集積するエリアの水質等を調査し、同年十月に結果をまとめた報告書を公表しているが、二〇二四年末に本格稼働予定のTSMC及びJASMの第一工場について、環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)に基づく環境影響評価(環境アセスメント)は実施されたのか。実施されていない場合、その理由について政府が把握しているところを具体的に明らかに示されたい。
  イ また、今後、建設が行われる第二工場についても環境アセスメントの実施予定はあるのか、政府が把握しているところを明らかにされたい。
 2 水質や大気等環境への影響及び環境保全対策
  ア 半導体製造では大量の水が使用されるとともに、排水のほか多種多様な化学物質やガスが排出される。「火の国」とともに「水の国」とも呼ばれる熊本県は、豊富な地下水を有し、水道水源の約八割を地下水に依存するなど、熊本県民にとって地下水は大変重要な生活用水である。
   他方、TSMC及びJASMの第一工場の本格稼働を二〇二四年末に控え、熊本県内では、同工場による地下水のくみ上げによる水の枯渇や排水等に伴う水質の悪化、大気汚染など環境への影響を心配する声があがっている。
   これらを踏まえ、TSMC及びJASMの半導体製造工場の稼働に伴う地下水の枯渇や水質等の周辺環境への影響について、政府はどのように把握しているのか、明らかにされたい。
  イ また、TSMC及びJASMは、第二工場に係る特定半導体生産施設整備等計画(二〇二三半経第〇〇三号−一)において、環境対策に関し、法規制対象の項目については、法規制と同等以上の基準を設けて排水を監視するとともに、法規制対象外の項目についても、サンプリングによる自主管理などを行い、操業に伴う大気や河川への影響を最小限に抑える取組を行っていくとしている。政府は、同工場の周辺環境の保全に向け、同社が実施する環境対策の実効性確保のため、どのような対策を講じていくのか、明らかにされたい。

 右質問する。

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