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令和六年十月三日提出質問第三二号
食料・農業・農村政策に係る政府の基本的認識に関する質問主意書
提出者 原口一博
食料・農業・農村政策に係る政府の基本的認識に関する質問主意書
食料・農業・農村政策に係る政府の基本的認識について、以下、質問する。
一 農地の相続については、登記の申請と農業委員会への届出が義務とされている。しかし、登記の申請と農業委員会への届出が行われた農地であっても、当該農地の地理的条件や相続人の状況等によっては、相続後に耕作放棄地となる懸念がある。
1 相続に伴う農地の課題についての基本的認識とその解決策を始め農地面積の減少を食い止めるための施策を明らかにされたい。
2 相続に伴う農地の課題等の実態を正確に把握するために、令和三年度に実施した相続未登記農地等の実態調査を毎年度行うとともに、相続土地国庫帰属制度の利用や相続人の不在等により国庫に帰属した農地に係る実態調査を行い、また、平成二十七年まで行われていた耕作放棄地の調査を再開する必要があると考えるが、政府の認識を明らかにされたい。
二 個人経営体で主に農業に従事する基幹的農業従事者数は平成十二年の二百四十万人から約四半世紀で半減し、高齢化も進行しており、今後二十年間で現在の約四分の一まで減少することが見込まれている。政府は、離農する個人経営体の農地の受け皿として法人経営体が農業生産を支えていく体制や、スマート農業技術の活用・開発・普及により少ない人数でも安定的に食料を供給できる体制の確立を図るとしているが、こうした対策だけで我が国の農業が維持できるのか懸念がある。我が国農業の五年後、二十年後及びその後の状況について、政府の認識を明らかにされたい。
三 農業・農村は食料の生産以外にも、国土の保全、水源の涵養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承、癒しや安らぎをもたらす等の多面的機能を有している。政府は、多面的機能の効果は国民の大切な財産であるとし、これを維持・発揮させるために、農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律に基づき、日本型直接支払制度を実施しているが、それにもかかわらず、農村人口の減少、集落の縮小により農業を支える力が衰退し続けている。農業・農村の衰退は、日本の文化そのものの衰退に等しいが、農業に関連する文化や農村における文化を守るために十分な施策を講じてきたのか、政府の認識を明らかにされたい。あわせて、農業・農村の多面的機能を維持するための施策の効果及び実績について、政府の認識を明らかにされたい。
四 今夏、米の販売価格が高騰し、スーパーの棚から米がなくなるなどの事態が発生したが、稲作農家の経営は、昨今の農業資材価格の高騰もあり大変厳しい状況にある。水田活用の直接支払交付金による支援は、飼料用米や米粉用米等の主食用米以外の米を対象としている。米は日本人の健康を維持するためにも重要であり、主食用米の再生産を確保するためにも、民主党政権時に実施した農家への戸別所得補償制度を復活させる必要があると考えるが、政府の認識を明らかにされたい。
五 主要農作物種子法は、民間事業者が行う種子の生産や供給を促進する観点も踏まえ平成三十年四月に廃止され、種苗法は国内の優良品種の海外流失を防止する等のため令和二年十二月に改正されたところである。主要農作物種子法の廃止や種苗法の改正は、現場の声を汲んだものではなく、種子代の高騰、許諾料の支払いや手続の複雑化により、農家経営が圧迫されるのではないかという不安の声が上がっていた。廃止された主要農作物種子法を復活させる等により、主要農作物の種子の安定供給の確保に努める必要があると考えるが、政府の認識を明らかにされたい。
六 遺伝子組換え食品の表示に関し、従来のものと組成、栄養価等が同等の遺伝子組換え農産物を原料とする加工食品であっても、組み換えられたDNA及びこれによって生じたタンパク質が、加工後に最新の検出技術によっても検出できない加工食品の原料について「遺伝子組換えでない」との表示を認めている。このような食品表示制度は、国民による安全・安心な食品の選択を不可能とするものであり、国民の健康の観点から見直しが必要であると考えるが、政府の認識を明らかにされたい。
七 農林水産省は、みどりの食料システム戦略において昆虫食の研究開発の産学官連携による推進を位置付けている。国内には、食用コオロギの生産に取り組む企業やコオロギを原材料に使用した食品を製造・販売する企業が存在し、また、コオロギを利用したメニューが給食で提供された事例もある。一方で、コオロギの食品利用への忌避感や安全性に対する懸念の声があることから、みどりの食料システム戦略の見直しが必要と考えるが、政府の認識を明らかにされたい。また、コオロギが含まれる食品についてその旨の明確な表示やアレルギー表示を求める声もあり、表示制度の整備について、政府の認識を明らかにされたい。
右質問する。