衆議院

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令和六年十月四日提出
質問第四九号

拉致被害者救出のための圧力強化に関する質問主意書

提出者  松原 仁




拉致被害者救出のための圧力強化に関する質問主意書


 北朝鮮による日本人拉致問題は、全く進展していない。その主たる原因は、北朝鮮が拉致被害者解放を決断する最大の要因となる我が国独自の制裁措置が、十分に実施されていないことにある。本職は、長年拉致問題に取り組み、拉致問題担当国務大臣も拝命した経験から、北朝鮮との交渉では圧力が必要不可欠との結論に達している。
 そこで、北朝鮮への圧力強化の方策についてお尋ねする。

一 在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総連)は、法人でない社団であるが、破産法(平成十六年法律第七十五号)第十八条第一項によれば、債権者は、破産手続開始の申立てをすることができるとされている。株式会社整理回収機構(以下、整理回収機構という。)が、いまだ朝鮮総連に対して破産手続開始の申立てを行っていないのは、いかなる理由によるものか、政府が把握しているところを明らかにされたい。
二 整理回収機構は、朝鮮総連から、令和三年四月一日から現在まで、幾ら回収できたか。また、朝鮮総連の整理回収機構に対する未払の債務に伴って発生した遅延損害金は、令和三年四月一日から現在まで、幾らか。政府が把握しているところを、それぞれ明らかにされたい。
三 我が国は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対して、資産凍結等の措置を講じているか。講じているとするなら、北朝鮮の金正恩国務委員長に対して同様の措置を講じていないのは極めて奇異であるが、いかなる理由によるものか、明らかにされたい。
四 北朝鮮国営の高麗航空について、国際連合安全保障理事会(国連安保理)決議第千八百七十四号に基づいて設置された専門家パネルは、過去に公表した複数の報告書において、スカッド・ミサイルの部品の密輸に関与したこと及び朝鮮人民軍と極めて密接な関係にあることを記している。米国は、林芳正外務大臣(当時)が令和四年十一月十一日の衆議院外務委員会で答弁したとおり、高麗航空を制裁対象に指定している。我が国が、いまだ高麗航空に対して資産凍結等の措置を講じていないのは、いかなる理由によるものか、明らかにされたい。
五 我が国は、在日北朝鮮当局職員及び当該職員が行う当局職員としての活動を補佐する立場にある者の北朝鮮を渡航先とした再入国の原則禁止措置を実施している。しかしながら、対象者は限られているため、いわゆるコロナ禍前は、北朝鮮の重要行事に多数の朝鮮総連幹部が参列していた。日本人拉致被害者が何十年も帰国できない現実を考えるとき、朝鮮総連幹部が公務のため北朝鮮に渡航できることは、不条理の極みである。そこで、再入国の原則禁止措置の対象者を、朝鮮総連の中央委員会委員約三百五十人及び専従職員の全員に拡大すべきと考えるが、政府の見解如何。
六 政府は、国連安保理において、非常任理事国の任期を務める本年中に、北朝鮮の人権状況について協議する公開会合を、再度開催するよう求めるべきと考えるが、見解如何。
七 国連安保理決議第二千二百七十号十四の規定は、加盟国は、自国の国民でない個人が、指定された個人若しくは団体の代理として若しくはそれらの指示により活動を行っていると決定する場合には、適用可能な国内法及び国際法に従い、国籍国への送還を目的としてその個人を自国から追放することを決定した。例えば、政府は、国連制裁対象の北朝鮮工作機関・偵察総局の代理として又はその指示により活動を行っていると認定した在日外国人を、強制的に国外へ退去させる義務を負っている。政府は、国連安保理決議を誠実に履行するか、あらためてお尋ねする。
八 我が国は、国連における北朝鮮人権状況決議案の起案に関わり、提出国としてこれを採択させてきた。例えば、第六十九回国連総会本会議において平成二十六年十二月十八日、「朝鮮民主主義人民共和国における状況の国際刑事裁判所への付託の審議」及び「調査委員会が人道に対する罪を構成し得るとした行為に最も責任を有するとみられる者への効果的で対象を特定した制裁にむけた実現可能性の審議」を求めた北朝鮮人権状況決議案を共同提出し、これを採択させた。ところが、その後、日本人拉致被害者が一人も帰国していないにもかかわらず、提出国から下りてしまった。このことは、拉致問題解決に悪影響を及ぼしたと評価せざるを得ない。そこで、本年末に国連総会に提出される北朝鮮人権状況決議案について、我が国は提出国に復帰し、北朝鮮当局による人道に対する罪を阻止するためにより効果的な施策を決議させるべきと考えるが、政府の見解如何。
九 国連安保理決議第二千二百七十号十七の規定は、加盟国が自国領域内で、北朝鮮国民への核・ミサイル開発に寄与し得る分野の専門教育又は訓練を防止すると決定し、禁止対象として応用物理学、応用コンピューター・シミュレーション及び関連するコンピューター科学、地理空間ナビゲーション、原子力工学、航空宇宙工学、航空工学並びに関連分野を例示した。同年に採択された国連安保理決議第二千三百二十一号十の規定は、先端の材料科学、化学工学、機械工学、電気工学及び産業工学を追加で例示し、「これらに限定されないことを明確にする。」とした。政府は、これらの規定を誠実に履行するために、いかなる施策を講じたか、明らかにされたい。
十 米国大統領令第一万三千七百二十二号は、北朝鮮政府及び朝鮮労働党の資産凍結を定め、「北朝鮮政府」とは朝鮮民主主義人民共和国政府、機関、部門及び支配下の団体を意味すると規定した。米国に拠点を有する我が国金融機関グループ等は、米国法の適用を受けるので、北朝鮮政府支配下の団体とは日本国内であっても取引をしてはならないと考えるが、政府の見解如何。
十一 本職の調査によれば、国連安保理決議第千八百七十四号に基づいて設置された専門家パネルの報告書で制裁破りへの関与を指摘された貨物船の所有会社の役員を務める中華人民共和国籍の男らが、東京都千代田区に日本法人を設立していた。北朝鮮制裁破りに関与する第三国の者に対し、我が国が資産凍結等の措置を講じるいわゆるセカンダリーサンクションは、時として非常に効果的である。政府は、いわゆるセカンダリーサンクションを積極的に行うべきと考えるが、見解如何。
十二 朝鮮総連は、外交関係に関するウィーン条約(昭和三十九年条約第十四号)に規定される使節団に当たるか。当たらないならば、朝鮮総連に対して、政府拉致問題対策本部が平成二十五年一月二十五日に決定した「拉致問題の解決に向けた方針と具体的施策」にある「現行法制度の下での厳格な法執行を推進する。」との施策を、「全力を尽くす。」との決定どおりに実施すべきと考えるが、政府の見解如何。
十三 国連安保理決議第二千九十四号十一の規定は、加盟国が、北朝鮮の核若しくは弾道ミサイル計画又は安保理決議により禁止されたその他の活動に貢献し得る金融サービスの提供を防止することを決定した。「貢献し得る」の英文原文は、could contribute to≠ナあり、一般に二割程度の貢献可能性があることを意味する。我が国は、国連安保理決議を誠実に履行するため、北朝鮮の核若しくは弾道ミサイル計画又は安保理決議により禁止されたその他の活動に貢献する可能性が二割以上ある金融サービスの提供を禁圧する義務があると考えるが、政府の見解如何。
 
 右質問する。

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