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令和六年十一月十一日提出質問第三一号
税の再分配機能と消費減税に関する質問主意書
提出者 井坂信彦
税の再分配機能と消費減税に関する質問主意書
財務省のパンフレット「もっと知りたい税のこと」には、税の役割として「財源調達」「所得再分配」「経済安定化」の三つが書かれている。ところが、二〇二三年三月に国会図書館が刊行した論文「税制による所得再分配の在り方」によると、格差を表すジニ係数について、日本では税による改善度が低迷しており、先進主要国の中で最低となっている。税の基本的な役割である所得再分配機能を回復するため、以下、政府の見解を問う。
一 二〇二四年六月三日の衆議院決算行政監視委員会において、鈴木国務大臣(当時)は「我が国の税によるジニ係数の改善効果はOECD平均を下回っているが、税と社会保障による効果を合計した全体の改善効果はOECD平均を上回っている。(中略)税による改善度を単体として取り出して、その高い低いを論ずるのは、必ずしも適当ではない」旨答弁している。財務省が税の役割として明記する「所得再分配機能」とは、課税による所得格差の是正を指すのか、給付など税の使途による所得再分配も含むのか、定義を問う。仮に税の使途も含めて「税の所得再分配機能」と定義するのであれば、税は教育や国防にも使われているため、「税には教育機能や国防機能がある」という考え方になるのか。
二 同日の衆議院決算行政監視委員会において私が配付した日本総研の論文によると、年収五百万円未満の人の消費税の負担率は五・九%であるのに対して、年収二千万円以上の人の消費税の負担率は二・八%となっている。高所得者の消費税の負担率は低所得者の半分以下で、消費税の課税には「逆再分配機能(格差拡大効果)」があると考えられるが、政府も同様の認識か。
三 同日の衆議院決算行政監視委員会において、政府参考人は「税による再分配については、所得税、相続税の累進構造などを含めて、税制全体としてそれを実現することが重要である」旨答弁している。しかし、日本では「直間比率の是正」の名の下に、所得税に比べて消費税の割合が著しく引き上げられてきた。その結果、累進構造があり再分配機能を持つ所得税が減り、逆再分配機能がある消費税が増え、税制全体として課税による再分配機能が弱まってきたと考えられるが、政府も同様の認識か。
四 軽減税率も含めた日本の消費税の実効税率は約九・六%と想定されるが、政府が把握している消費税の実効税率は何%か。
五 日本の消費税は軽減税率が八%で本則税率の十%とほとんど差がないため、低所得者も高所得者も実効税率がほぼ同じで、再分配機能が極めて弱い税目になっている。ヨーロッパのように軽減税率を〇%や五%に引き下げ、軽減税率の対象品目を日用品全般に広げれば、低所得者の支払う消費税の実効税率が下がり、消費税の再分配機能が強化される。そうすることの是非はともかく、仕組みとしてはそのとおりであると政府も認めるか。
六 同日の衆議院決算行政監視委員会において、鈴木国務大臣(当時)は「税による再分配機能の重要性をしっかりと認識をしながら、これからの税制の在り方を考えてまいりたい」旨答弁した。税制全体で課税による再分配機能を強化するためには、所得税などの累進性を強化するか、消費税を減らすか、軽減税率を引き下げて消費税の再分配機能を高めるしかないと考えるが、政府の見解はどうか。
右質問する。