質問本文情報
令和六年十一月十一日提出質問第四九号
憲法第七条及び憲法第六十九条と憲法に保障された参政権の行使に対する石破茂総理大臣の見解に関する質問主意書
提出者 中谷一馬
憲法第七条及び憲法第六十九条と憲法に保障された参政権の行使に対する石破茂総理大臣の見解に関する質問主意書
二〇一九年六月七日に掲載された石破茂総理大臣のオフィシャルブログにおいて、「本来の解散・総選挙について規定しているのはあくまで憲法第六十九条の「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、または信任案を否決した時は十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」というのが原則で、第七条に列記されている天皇陛下の国事行為の中の一つである解散に「内閣の助言と承認」を必要とする、というのは、政治的な行為をなさらない天皇陛下による解散を行われるにあたっての形式要件を規定したものと解するのが自然でしょう。国会閉会中でも衆議院解散は可能、とするのが政府の見解ですが、会期延長と解散が絡めて論じられるのは「国会開会中に衆議院が示した意思が内閣の意思と異なった場合、国民に判断を仰ぐ必要が生じる」からであるとされています。そうであるとすれば、衆議院において「衆議院の意思と内閣の意思が異なる」ことが明確にならなければなりませんが、与党が安定多数の議席を持っている場合、そのような事態は考えにくい、ということになります。この前提においては、選挙の際の公約を果たすため、与えられた四年の任期を全うするのが国民に対する責任であると考えます。自民党の先人である故・保利茂元衆院議長は、第六十九条に明記されている場合に加えて、「予算案や、国の行方を左右する内閣の重要法案が否決されたり審議未了になったりしたとき」「その直前の総選挙で各党が明らかにした公約や政策とは質の異なる重要な案件が登場し、国民の判断を求める必要が生じたとき」に限り、七条解散が許されるとの見解を示され(一九七九年・保利衆院議長見解)、故・宮澤喜一元総理は「解散権は好き勝手に振り回してはいけない。あれは存在するが使わないことに意味がある権限で、滅多なことに使ってはいけない。それをやったら自民党はいずれ滅びる」と語っておられたそうですが(出典未確認)、この言葉の持つ重さと恐ろしさを感じます。先日BS番組でご一緒した高安健将・成蹊大教授は、「解散して国民の判断を仰ぐ場合には、国民が判断するに必要な十分な情報と時間(解散から投票までは四十日以内。公職選挙法第三十一条第三項)が与えられるべき」と述べておられましたが、これもまさしく然りと思います。」という記事が掲載されている。
また、二〇二〇年七月二日の共同通信社での講演にて、七条解散は憲法論からすべきではないとの立場で内閣不信任決議案可決か内閣信任決議案否決に伴う六十九条解散に限定すべきだと主張したと報じられている。
さらに、二〇二四年九月十四日に開催された日本記者クラブ主催の自民党総裁選立候補者討論会において「私は、国民の判断ってのは本当に厳粛に受けなければいけないと思っています。で、そうすると、国民の皆様方が判断していただける材料を提供するのは、それは政府の責任であり、新しい総理の責任だと思っています。私も随分議員もやっていますし閣僚も随分やりましたが、本会議ってのはもう基本一方通行です。問われたことにこっちが答える、なかなかやり取りってのはないんですね。やはり、本当のやり取りってのは予算委員会だと思っている。で、そうすると一日ずつやるのかはともかくとして、国民の皆様方がご判断いただける材料を提供するってのは、やはり政府の責任だ、与党の責任だと私は思います。衆議院議員がこの国からいなくなるんですよ、解散ってのは。それがどういうことなのかというのはよく認識した方がいい。そして、世界情勢がどうなるか分からないのに、すぐ解散しますって言い方は私はしません。解散して良い状況が整うかどうかということを判断するということであって、私は国民に対する畏れの念というのは常に持っていたいと思っています。」旨の発言をしている。
これに関連して以下、質問する。
一 石破茂総理大臣が過去に、七条解散は憲法論からすべきではないとの立場で内閣不信任決議案可決か内閣信任決議案否決に伴う六十九条解散に限定すべきだと主張したことは事実であるのか確認したい。
二 一が事実であった場合、先般の解散は、石破茂内閣は衆議院の解散を内閣不信任決議案可決か内閣信任決議案否決に伴う六十九条解散に限定すべきとの石破茂総理大臣の従来の発言と矛盾していると考えるが石破茂内閣の見解を確認したい。
三 朝日新聞社が九月十四、十五日に実施した全国世論調査で、裏金問題に関係した議員を自民党が次の衆院選で公認することを尋ねたところ、「納得できない」が七十六%と大多数を占めた。
また毎日新聞社が同月二十八、二十九日に実施した全国世論調査で、自民党派閥の裏金事件について、石破茂総裁が実態解明に取り組むべきか尋ねたところ、「実態解明に取り組むべきだ」は七十七%でこちらも大多数を占めた。
石破茂総理大臣は、裏金事件対応について国民が納得をしていないならば、公認権者である総裁も説明責任を果たすべきだと述べたと報じられたが、衆議院の解散についてはこれらの説明責任を果たしたと石破茂内閣は考えているという認識でよいか、見解を伺いたい。
四 「衆議院の意思と内閣の意思が異なることが明確」になる状況というのは、どのような状況を想定しているのか。また与党が安定多数の議席を持っている場合、そのような事態は考えにくいと石破茂総理大臣が述べているが、衆議院解散時の勢力分野はそうした事態ではなかったと認識しているのか、石破茂内閣の見解を確認したい。
五 石破茂総理大臣は、オフィシャルブログで「本来の解散・総選挙について規定しているのはあくまで憲法第六十九条の「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、または信任案を否決した時は十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」というのが原則で、第七条に列記されている天皇陛下の国事行為の中の一つである解散に「内閣の助言と承認」を必要とする、というのは、政治的な行為をなさらない天皇陛下による解散を行われるにあたっての形式要件を規定したものと解するのが自然でしょう。国会閉会中でも衆議院解散は可能、とするのが政府の見解ですが、会期延長と解散が絡めて論じられるのは「国会開会中に衆議院が示した意思が内閣の意思と異なった場合、国民に判断を仰ぐ必要が生じる」からであるとされています。そうであるとすれば、衆議院において「衆議院の意思と内閣の意思が異なる」ことが明確にならなければなりませんが、与党が安定多数の議席を持っている場合、そのような事態は考えにくい、ということになります。この前提においては、選挙の際の公約を果たすため、与えられた四年の任期を全うするのが国民に対する責任であると考えます。」と述べているが、四で確認している「衆議院の意思と内閣の意思が異なることが明確」となった現状において、与えられた任期を全うするつもりであるのか、否か、石破茂内閣の見解を確認したい。
六 石破茂総理大臣は、オフィシャルブログで「自民党の先人である故・保利茂元衆院議長は、第六十九条に明記されている場合に加えて、「予算案や、国の行方を左右する内閣の重要法案が否決されたり審議未了になったりしたとき」「その直前の総選挙で各党が明らかにした公約や政策とは質の異なる重要な案件が登場し、国民の判断を求める必要が生じたとき」に限り、七条解散が許されるとの見解を示され(一九七九年・保利衆院議長見解)、故・宮澤喜一元総理は「解散権は好き勝手に振り回してはいけない。あれは存在するが使わないことに意味がある権限で、滅多なことに使ってはいけない。それをやったら自民党はいずれ滅びる」と語っておられたそうですが(出典未確認)、この言葉の持つ重さと恐ろしさを感じます。」と述べているが、先般の解散は、予算案や、国の行方を左右する内閣の重要法案が否決されたり審議未了になっているもしくは直前の総選挙で各党が明らかにした公約や政策とは質の異なる重要な案件が登場し、国民の判断を求める必要が生じていたと石破茂内閣は認識しているのか見解を確認したい。
七 石破茂総理大臣は、オフィシャルブログで「先日BS番組でご一緒した高安健将・成蹊大教授は、「解散して国民の判断を仰ぐ場合には、国民が判断するに必要な十分な情報と時間(解散から投票までは四十日以内。公職選挙法第三十一条第三項)が与えられるべき」と述べておられましたが、これもまさしく然りと思います。」と述べている。
1 今般の衆院選において、国民が判断するに必要な十分な情報と時間をどの程度与える必要があると石破茂内閣は考えていたのか、定性的な見解の他に、定量的な時間数なども交えた詳細を示されたい。
2 二〇二四年十月一日に臨時国会を召集し、九日間程度の国会開催と解散から投票日まで十八日間程度の期間で国民に対して判断するに必要な十分な情報と時間が与えられたと考えているのか、石破茂内閣の見解を伺いたい。
3 石破茂総理の就任からわずか八日後の「戦後最短」で衆議院の解散を行ったことは、各自治体や配送事業者などへの負担が極めて大きくなり、選挙戦の終盤になっても投票所の入場整理券が届かない事例が続出した。有権者の中には、投票入場券が届かないと投票できないと誤解していた者も多く散見された。この状況は、結果として憲法に保障された国民の参政権行使を侵害され、第五十回衆院選の投票率(小選挙区)が五十三・八五%、戦後三番目の低さとなったと考えるが、無理な日程で解散総選挙を行ったことに対する反省はあるのか、石破内閣の見解を伺いたい。
4 朝日新聞デジタル版十一月七日の記事によると、「戦後最短」で衆議院の解散を行った悪影響は国内に留まらず、海外で暮らす日本人が国政選挙に一票を投じる「在外投票」の衆院選小選挙区での投票率は在外投票が始まった二〇〇九年以降で過去最低となる十八・一一%を記録した。在外投票の登録をしていない海外有権者も含めると、実質的な投票率はわずか一・六八%となった。「海外有権者ネットワークNY」の竹永浩之共同代表は、@遠すぎる大使館(在外公館)、A短すぎる投票期間、B間に合わない郵便投票という三つの問題点があると指摘している。住んでいる場所によっては、数百キロメートル先の大使館まで大金をかけて移動する必要がある上、最短二日間〜最大六日間(平均四・二九日)の投票期間に計画を合わせなければならず、「在外投票には労力がかかりすぎる。まさに「無理ゲー」」だと竹永浩之共同代表は述べている。コストが比較的抑えられるはずの郵便投票についても、セーフティーネットにはなっていないのが現実で、前回の衆院選では、海外から各地の選挙管理委員会に届いた千四十一人分の小選挙区投票用紙のうち、約十五%にあたる百五十八人分の郵送が期間内に間に合わなかったと報じられている。竹永浩之共同代表は不安定な制度のもと、海外の日本人の選挙権が侵害されている状況だと危機感を強めており、「日本側の制度をいくら改善しても、海外の郵便サービスに問題がある場合が多く、意味がない。結局、解決方法はネット投票しかない。政治には、有権者の選挙権を守る姿勢を見せてほしい」と訴えている。私、中谷一馬はインターネット投票の実現を一つのライフワークとしており、三年前の二〇二一年には筆頭提出者として衆議院にインターネット投票導入推進法案を提出した。ネット投票は、今の投票制度に不自由を感じている多くの人たちの不便を解消できると確信をしており、速やかに実現すべきと考えている。ネット投票法案は、国民民主党とも、日本維新の会とも共同提出をしてきた経緯があり、二〇二二年の参議院選挙の際に行われたネット投票に関するアンケートでは、各党から反対表明がなかった現状を踏まえれば政府与党がやると言えば明日からでも実施に向けた具体的な検討を進めることができる状況にある。こうした状況にも関わらず、残念ながら、現状は自民党がボトルネックとなり多くの政治改革が進んでいないことから、インターネット投票に関する政府与党での合意形成を行い、少なくとも約二%の方しか投票できていない在外有権者の投票環境を改善する在外インターネット投票を可能とする法改正を本気で実現したいと考えるが如何か。石破茂内閣の見解を示されたい。
八 石破茂総理大臣は九月二十九日のNHK番組で「首相が代わる。国民の判断を早く仰ぐべきだ」と述べ、またフジテレビ番組で解散・総選挙に関しては「早ければ早い方がいい。」と明言した。
1 石破茂総理大臣の一から七まで質問した過去の発言内容と昨今の発言の整合性が全くないと考えるが、石破茂内閣はその論理的整合性をどのように認識し、説明されるのか、見解を示されたい。
2 先般の衆議院解散は、六十九条解散の余地は全くなく、総理の恣意的な判断での解散そのものであると考えるが、如何か。石破茂内閣の見解を示されたい。
3 石破茂総理大臣が先の番組で「六十九条というのは憲法に書いてあるとおり、不信任案が可決された時、信任案が否決された時と限定してあるわけです。だからそれには該当しない。だけど国政の審判を経ないままに新政権ができました。それってどうですかってことを判断を求めるのも六十九条の趣旨には合致するものだろうねと思っています。」と述べているが、新政権ができたことに関する現状について国民に信を問う解散は六十九条解散ではなく、現在も七条解散であるという認識を持っているのか、石破茂内閣の見解を確認したい。
4 石破茂総理大臣は在野の時には理想論を述べていたにもかかわらず、権力者になった途端に、裏金問題の実態解明も行わず、国会での審議はほとんどせずに臭い物に蓋をするようなかたちで、私利私欲、党利党略で選挙戦を有利に戦うことができるからと権力を濫用し、二枚舌で衆議院の解散を強行したことは愚の骨頂で信頼に値しないと考えるが、石破茂内閣は特段問題がなかったと考えているのか、見解を示されたい。
5 「国民の判断ってのは本当に厳粛に受けなければいけないと思っています。」「国民の皆様方が判断していただける材料を提供するのは、それは政府の責任であり、新しい総理の責任だと思っています。」「すぐ解散しますって言い方は私はしません。解散して良い状況が整うかどうかということを判断するということであって、私は国民に対する畏れの念というのは常に持っていたいと思っています。」と九月十四日に述べていた石破茂総理大臣が十月二十七日に総選挙を行ったことについて、国会軽視も甚だしいと考える。この点について、SNSなどのネット上では「嘘つき解散」と厳しく批判されたが、石破茂内閣はこの現実をどのように受け止めているのか、見解を示されたい。
6 石破茂総理大臣は、能登半島の被災状況を念頭に「喫緊の課題は能登の震災、直近の豪雨対策」と述べていながら、衆議院の解散に関して「早ければ早い方がいい。」と述べ、解散総選挙を強行したが、能登地方を中心とした石川県の地域では現在も地震と豪雨の二重災害で苦しんでいる状況にあり、「急すぎる」「職員が足りない」と悲痛な声が上がっていた。さらに、現実に投票所は避難所として利用されている事例が多くあった。こうした状況下において、甚大な被害に対する支援を行うための補正予算編成を行わずに解散して、被災地の復旧復興を疎かにするばかりか、当該自治体に強い負担をかける状況を作ることに関して、石破茂内閣は問題ないと考えていたのか、見解を示されたい。また「衆議院議員がこの国からいなくなるんですよ、解散ってのは。それがどういうことなのかというのはよく認識した方がいい。」と発言していた石破茂総理大臣自身が二重災害で苦しんでいる能登地方の状況を無視して、政治空白を作ることについても問題ないと考えていたのか、石破茂内閣の見解を示されたい。
右質問する。