質問本文情報
令和六年十二月十六日提出質問第七〇号
建設業の人手不足等の諸課題への対応に関する質問主意書
提出者 緑川貴士
建設業の人手不足等の諸課題への対応に関する質問主意書
建設業は、生活インフラや建物の整備、自然災害の復興等、地域の発展に欠かせないが、一般社団法人日本建設業連合会によれば、令和五年の建設業就業者数は四百八十三万人で、平成九年のピーク時から約三割減少している。担い手の高齢化や働き方改革等(時間外労働時間の上限規制、従来の四週四閉所から四週八閉所として週休二日以上の確保、工期の適正化等)による人手不足の影響が広がっており、過去十年で建設業の倒産件数が最多ペースで推移している。以下、質問する。
一 政府は建設業の長時間労働の改善に向け、上記の働き方改革や省人化を進めるための、情報通信技術(ICT)の調査・測量から設計、施工、検査、維持管理分野までの各建設生産プロセスに全面活用の取組等を拡大させるとしてきたが、総合建設会社(ゼネコン)等と比較した場合、現場での施工業務の多い工務店や専門工事店等の中小企業では、残業を抑制する対策や、新技術やデジタルツール導入による省人化は進んでいない。実情をふまえ、政府の今後の施策の方向性を確認したく、見解を伺う。
二 工期の適正化については「内装仕上げ工事等の工期終盤の専門工事に工事全体の遅れがしわ寄せになる」との現場の声が大きい。工期が遅れる要因として、元請けと施行会社・職人等の現場での情報連携不足が指摘されており、工期の適正化を進める上では、ゼネコンや専門工事店、建材メーカー等、関係企業が建設工程全体で必要なデータを利活用・共有できるようにする等、情報連携の仕組みの整備ができるよう支援する必要があると考える。政府見解を伺う。
三 電気保安に関する設備工事や建設工事等を行う電気工事について、電気工事士の第一種は、令和二年の需要に対し約二万人足りず、令和二十七年には二万四千人が不足し、第二種も令和二十二年に約二万人の不足が見込まれる。また電気保安・監督を行う電気主任技術者についても、第二種は再生可能エネルギー設備の将来の増加等が見込まれる中で令和十二年には約千人が不足し、第三種は業務ビルの増加等で約八百人の不足が見込まれている。政府は、離職率の高い傾向にある電気工事士については、業界ルール・マニュアルの整備や、省力化のためのデジタル技術投資等の支援を進めるとし、電気主任技術者は資格取得のオンライン学習制度の創設、保守水準の維持を前提にドローン等を活用した電気設備の保守点検の効率化等を進めるとしてきたが、電気主任技術者の中には「自分の引退までに後継者を見つけたいが間に合わない」という現場もあり、不安を払拭できるような供給不足の改善が図られているとはいえない。電気設備の定期的なメンテナンスや交換工事、バブル期の建物の改修等に伴う工事や保安監督等、長期的な需要に対応していく必要があると考える。政府見解を伺う。
四 建設業において、現場施工を担う多くの一人親方が免税事業者である。適格請求書等保存方式(インボイス制度)導入後の、令和五年十一月に全国建設労働組合総連合と建設経済研究所が共同実施したアンケートによれば、免税の一人親方を対象に集計した二千七百件のうち、「登録番号を取得したが、単価が据え置かれた事例」が約六十五%、「番号を取得しなかったら、本則課税の事業所から消費税分の値引きされた事例」が約三十七%ある等、税制の変更により、多くの一人親方が減収となっている実態が判明している。政府は、適正な価格転嫁に向け、年二回の価格交渉促進月間をふまえた発注企業の社名公表や、経営トップへの指導助言等に加え、令和五年十一月に「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を公表してきたが、一人親方を含めた免税事業者に対する値引きの強要や取引の排除等が行われていないか、より詳細に取引実態の把握に努める必要があるのではないか。政府見解を伺う。
五 インボイス制度に合わせて実施された負担軽減措置は三年間の時限措置であり、建設業の担い手不足は深刻である。業界を支える一人親方の多くが免税事業者である状況をふまえれば、同措置終了後の経営悪化、業界への悪影響が懸念される。そもそも、中小零細事業者への影響が発生しない仕組みに見直す必要があるのではないか。政府見解を伺う。
右質問する。