質問本文情報
令和六年十二月十七日提出質問第一〇五号
安全保障面からの外国企業による日本企業買収に関する質問主意書
提出者 松原 仁
安全保障面からの外国企業による日本企業買収に関する質問主意書
現在、日本企業である日本製鉄株式会社が米国の鉄鋼大手United States Steel Corporation(以下「USスチール」という)の買収を計画し、交渉を行っている。この件に対し、バイデン政権並びに、来年一月から米国政権を担うトランプ氏が否定的な見解を示し、政治的介入により阻止しようとしている。
鉄鋼製品は軍事装備やインフラ整備に必要不可欠であり、USスチールのような鉄鋼大手を、米国国防総省に関連する供給者として、自国資本の企業にとどめておく意思決定も安全保障上の観点からはある種納得できる。その結果、外国企業がUSスチールを買収することは、国防の観点から「安全保障リスク」になると見られることもやむを得ない面がある。
我が国においても、現在、株式会社セブン&アイ・ホールディングス(以下「セブン&アイ」という)に対し、カナダケベック州モントリオール郊外のラヴァルに本社を置くAlimentation Couche−Tard Inc.(以下「クシュタール」という)が買収提案を行っている。
セブン&アイは、多くの国民にとって最も身近な食糧品を含む日用品の供給企業であると同時に、災害対策基本法において、災害時には指定公共機関として、物資やトイレなどの施設を提供する生活インフラとして重要な役割を果たしている。このようなセブン&アイが、外国資本の企業に買収されることは、食料安全保障の面でも、防災上の安全保障の面でも、多くの問題を有している。実際、セブン&アイは、外国為替及び外国貿易法(以下「外為法」という)において、投資に際して事前届出が必要な企業に分類されている。
そこで、次のとおり質問する。
一 米国には、外国企業による米国内企業買収を審査する外国投資委員会(CFIUS:Committee on Foreign Investment in the United States)」がある。CFIUSは、米国の国家安全保障に影響を与える恐れのある外国投資をブロックする権限を持つが、日本で、同様の審査を行う機関はどこか。また、USスチールの買収は、鉄鋼業の戦略的重要性から審査の対象となり、否決される可能性が指摘されているが、日本においても、セブン&アイに関し、食糧安全保障及び防災安全保障の観点から、クシュタールによる買収を認めるべきでないと考えるが、政府の見解如何。
二 クシュタールのセブン&アイ買収に関し、クシュタールからセブン&アイへ役員を送り込まないなどの措置を実施すれば、外為法上の事前届出が免除される可能性もあるとの報道もあるが、それは事実か。また、それが事実としても、今回は、セブン&アイの我が国における安全保障上の重要性を考えれば、外為法上の事前届出を義務付けるべきと考えるが、政府の見解如何。
三 フランス共和国(フランス)では、外国企業による自国の重要企業の買収に対し、政府が国益を守るため積極的に関与する例がある。例えば、フランス政府は経済安全保障の観点から、重要な産業や企業の買収に対して反対の意思表示や対抗措置を講じている。クシュタールも二〇二一年、フランスの小売り大手Carrefour SA(以下「カルフール」という)への買収提案を、フランス政府が認めない姿勢を示し、カルフールの買収を断念した経緯がある。政府においても、自国の安全保障に関する重要な一翼を担っているセブン&アイへのクシュタールの買収に関し、毅然と反対の姿勢を示すべきと考えるが、政府の見解如何。
右質問する。