質問本文情報
令和七年三月十三日提出質問第九九号
AI戦略会議・AI制度研究会「中間とりまとめ(案)」についてのパブリックコメントの募集形式に関する質問主意書
提出者 八幡 愛
AI戦略会議・AI制度研究会「中間とりまとめ(案)」についてのパブリックコメントの募集形式に関する質問主意書
パブリックコメント(以下、パブコメ)は、政府が国民の意見を公正かつ透明に収集し、政策決定に適切に反映することを目的とした制度であり、行政手続法第三十九条に基づく意見公募手続である。同条の趣旨に照らせば、意見の提出様式は原則として自由であり、広く国民の意見を収集するために、可能な限り多様な提出手段を確保することが求められると思える。さらに日本政府はデジタル社会形成基本法のもとで、すべての国民が公平に行政手続を利用できるようデジタル環境の整備を進めるとしている。
しかしながら、今回の「AI戦略会議・AI制度研究会 中間とりまとめ(案)に関する御意見の募集について」(以下、本件パブコメ)において内閣府科学技術・イノベーション推進事務局(社会システム基盤担当)が設置したwebフォームの構造が、意見提出を困難にする設計となっており、国民が政策形成に参加する機会を不当に制限するものとなっていると考えられる。
特に問題なのは、本件パブコメを社会システム基盤担当という部局が設計した点である。社会システム基盤とは、政府の意思決定の透明性を確保し、国民が公平に政策形成に参加できる環境を整備する役割を担うと考える。しかし、本件パブコメは、その「社会システム基盤」を担う部局が主導したにもかかわらず、「公正さ」「透明性」「自由な意見提出」というパブコメ制度の根幹を大きく損なうものとなっていると考える。
さらに、他の省庁や内閣府の他の部局が実施したパブコメと比較しても、本件パブコメの設計は特異であり、これは、行政手続法の趣旨を逸脱し、国民の表現の自由を侵害する可能性があると考える。本件パブコメのフォーム設計には、〈意見提出のハードルを意図的に上げる設計〉について、@パブコメの提出様式は原則として自由であるべきにもかかわらず、特定の形式を強制し、電子メール・FAX・郵送といった他の提出手段を排除していること、A意見提出者に対し、不必要な情報(企業の従業員数や設立年数等)の入力を強制し、意見提出の負担を過度に増やしていること、B複数の意見を提出する際に、毎回同じ情報を再入力することを強制し、意見提出を不必要に煩雑にしていること、Cフォームの構造が不明瞭であり、意見提出の手順が分かりにくい形で設計されているという問題があり、〈意見の偏向を誘導する設計〉については、@意見提出を「賛成・反対」の二択に限定し、意見の多様性を反映する仕組みが欠如していること、A提出後に意見の修正ができず、また控えも残らないため、提出者が自身の意見を管理しにくいこと、B意見提出者の種別(種別1〜4)の選択を必須としながら、その基準の合理性が不明瞭であること、C政府が基幹産業として育成すると明言している「コンテンツ産業」を意見提出者の種別に含めていないという問題があると考える。
これらの設計は、政府が意図的に特定の意見を排除しようとしているのではないかとの強い疑念を生じさせるものであり、民主的な政策決定のプロセスを著しく歪めるものであり重要な問題と考える。
よって、以下の事項について政府に対し質問する。
一 パブリックコメントの適正性について
1 行政手続法第三十九条の趣旨に照らして、パブコメの提出様式は自由であるべきであると考える。本件パブコメにおいて、特定の形式を強制した理由は何か。
2 他の省庁や内閣府の他の部局が実施したパブコメのwebフォームと比較して、本件パブコメの設計が特異に煩雑であるのはなぜか。
3 本件パブコメの設計は、政策決定を特定の方向へ誘導する目的があるのではないか。政府の見解を示されたい。
二 意見提出者の種別(種別1〜4)に関する特定の属性情報を必須入力としたことについて
他の省庁や内閣府の他部局が実施するパブコメでは、通常、企業の設立年数や従業員数などの入力は求められていない。内閣府科学技術・イノベーション推進事務局が本件パブコメにおいて特定の属性情報を必須入力とした理由は何か。
三 意見提出者の種別(種別1〜4)に関する設計の適正性について
1 本件パブコメでは、意見提出者の種別として「種別1〜4」を設け、それを必須入力としたが、それぞれの種別が設定された理由は何か。
2 これらの分類を必須としたことで、特定の属性の意見が統計的に偏る可能性はないか。
3 意見提出者の種別によって、意見の扱いに差異が生じたのか。
4 日本政府は、AIの影響を大きく受けると考えられるコンテンツ産業を基幹産業として育成すると明言しているが、本件パブコメの意見提出者の種別に「コンテンツ産業」を含めなかった理由は何か。また、フォームの設計者は、コンテンツ産業従事者はどの業種に含まれると認識していたか。
四 意見提出の負担といわゆるユーザビリティについて
1 一つの意見を提出するたびに、同じ企業情報を繰り返し入力しなければならない仕様が採用された理由は何か。
2 他省庁のパブコメでは、通常、一度入力した情報を記憶させる仕組み(自動入力や一括送信機能)が備えられている場合が多い。本件パブコメがそのような仕様になっていないのはなぜか。
3 本件パブコメのフォーム設計が、他のパブコメと比べて、極めて使いづらい設計となっているのはなぜか。
五 意見の適正な収集と反映について
1 意見を「賛成」または「反対」の二択で分類することを強制しているが、この方式が意見の多様性を適切に反映するものと考えるか。
2 本件パブコメにおいて、政府が都合の悪い意見を選別・排除することがないようにするための具体的な措置は講じられているか。もし講じられていないならば、その理由を示されたい。
3 行政手続法第三十九条の趣旨に照らせば、本来、政府はすべてのパブコメにおいて電子メール・FAX・郵送などの複数の提出手段を確保すべきであると考える。本件のような不適切な運用が再び行われないよう、今後、政府は法の趣旨を厳格に遵守する意思があるか。またそのための具体的な措置を講じる考えはあるか。
六 本件パブコメの透明性と実施プロセスについて
1 本件パブコメの設計に関する決定プロセスを明示されたい。特に、どのような基準でフォーム設計を決定したのかを示されたい。
2 本件パブコメがどのように集計・整理・公表されたのかについても、作業のプロセスを可能な限り示されたい。
右質問する。