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令和七年四月二十三日提出
質問第一六〇号

山林火災の消火活動に海水を利用することに関する質問主意書

提出者  井坂信彦




山林火災の消火活動に海水を利用することに関する質問主意書


 各種報道によれば、二〇二五年二月十九日正午頃、大船渡市三陸町綾里で山中から煙が見えると通報があった。山林火災は約三百二十四ヘクタールの範囲で山林を焼き、二十五日午後三時五分頃に鎮圧されたが、鎮火までは確認されなかった。翌二十六日、鎮圧された地域からほど近い大船渡市赤崎町で、山に燃え広がりそうと通報があり、山林火災の発生が確認された。今度は、一週間以上にわたって延焼し、焼失面積は約二千九百ヘクタールとなった。三月五日からまとまった降水があったため火の勢いが弱まり、翌六日以降は新たな延焼が確認されず、九日に鎮圧が宣言されたとのことである。
 今回の山林火災は、リアス式海岸の突き出た半島で発生し、普段は人が訪れない場所から出火したため、陸上からの初期消火が困難であった。そのため、岩手県だけでなく近隣県や自衛隊のヘリコプターも導入され、散水が行われた。出火当初は約十五キロ離れたダムまで水をくみに行っていたが、とにかく早く少しでも散水量を増やすため、二月二十一日からは地権者の理解を得て近くの海水を散水することに踏み切った。
 山林火災への海水散布については、二〇一七年に同じく岩手県釜石市で発生した林野火災において、消火のため四千トンを超える海水が散布された例がある。岩手県林業技術センターは消火後に、海水が散布された森林土壌について調査を行っている。その結果、火災後約一か月後のpH(H2O)は海水散布されていない対照地と同程度であったが、EC(電気伝導度)は一部の調査地で高く、海水散布の影響を受けていた。しかし時間の経過とともに測定値は減少し、土壌の化学性に与えた影響は小さく、残存木の生残や復旧造林に問題ないと考えられるとしている。
 また海外では、米国のスミソニアン環境研究センターが、海岸林が塩水にさらされた際にどのような反応を起こすのか実験を行っている。この実験では、長時間塩水を散布した場合に落葉植物の葉が平年より早く葉を失ったり、土壌中の水が枯れた植物と化合して茶色に変色するなどの変化があったが、降雨によって塩分が洗い流されると影響が少なくなることが観測された。
 海水による消火活動には、波が高い場合には海水をすくい上げる際に危険を伴うことや、塩分が消防用設備を腐食させること、生態系に影響を与えることなどもあり、難しい判断が必要となると考えることから、以下、政府に質問する。

一 海に近い場所で山林火災等が発生した場合、水源まで真水をくみに行くよりも海水を散布する方が消火の作業効率が良い。しかし場合によっては危険や環境への影響が考えられる。山林火災等で海水を散布する判断は誰がすることになっているのか。
二 海水を散布した場合、塩分が山林や農地へ悪影響を及ぼす可能性が懸念されるが、政府はその影響についてどう考えているか見解を伺う。
三 海水を散布した場合、昆虫や野生動物、河川の生物などの生態系への影響が懸念されるが、政府はその影響についてどう考えているか見解を伺う。
四 海水を散布し塩害等の被害が出た場合、その土地の復興について政府は責任を持って対応する必要があると考えるが、誰が復興に当たるのか。
五 今回の大船渡市の山林火災では早い段階で海水の散布が行われた例となった。鎮火後に環境や生態系に与える影響について調査をすべきと考えるが、政府の見解を伺う。
六 環境に与える影響が少ないなら、海水の散布は早い段階で選択肢にすべきと考える。消火活動に海水を利用することについて条件やガイドラインを示す必要があると考えるが、政府の見解を伺う。

 右質問する。

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