質問本文情報
令和七年六月十六日提出質問第二九〇号
キャリアアップ助成金制度の変更に関する質問主意書
提出者 井坂信彦
キャリアアップ助成金制度の変更に関する質問主意書
厚生労働省が公表したキャリアアップ助成金の趣旨は、「有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者等の企業内でのキャリアアップを支援するため、これらの取組を実施した事業主に対して助成金を支給することにより、労働者の雇用の安定、処遇の改善を推進するものである」と、支給要領に定められている。その中でも特に正社員化コースは、有期雇用労働者等を正規雇用に転換することで助成が受けられるため、中小企業に広く活用されていると承知している。
このキャリアアップ助成金制度が二〇二五年四月より変更され、有期雇用労働者が重点支援対象者と重点支援対象者以外に分類された。重点支援対象者は、「一・雇入れから三年以上の有期雇用労働者、二・雇入れから三年未満で@過去五年間に正規雇用労働者であった期間が一年より長い者、A過去一年間に正規雇用労働者として雇用されていない、のいずれかに該当する有期雇用労働者、三・派遣労働者、母子家庭の母等又は父子家庭の父、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者」とする旨定められた。また、新規学卒者については、雇い入れられた日から起算して一年未満の者については、支給対象者から除外された。
さらに、重点支援対象者かどうかによって、助成金の額に差が設けられたため、当初予定していた助成金が八十万円から半額の四十万円に大きく減額されたり、受けられなくなってしまうケースが発生している。インセンティブが受けられなければ、事業者はそのまま正規雇用化せずに、有期雇用としておいた方が有利であると判断してしまう可能性があると考える。政府が促進している正規雇用化が減速、停滞するおそれがあることから、以下、政府に質問する。
一 新規学卒者については、雇い入れられた日から起算して一年未満の者については、支給対象者から除外された。試用期間は解約権留保付労働契約とはなっているものの、実際にはなかなか解雇できないため、中小企業では試用期間という制度はほとんど使用されていないと承知している。試用期間ではなく、一旦は有期雇用契約を結び、働きぶりを確認してから正規雇用に転換する中小企業も多く存在する。新規学卒者で一年未満の者を支給対象者から除外することにより、中小企業の雇い控えにつながったり、または雇い入れた者の待遇改善を遅らせることになるのではないかと考えるが、政府の見解を伺う。
二 新卒から一年以内の正規雇用転換の中には、助成金目当ての不適切なものが少なくないと考えているのか、政府の見解を伺う。
三 三年未満の有期雇用労働者を正規雇用にする場合、特定の条件を満たさないと重点支援対象者とは認められず、助成額が減額される。この制度変更は、企業側が有期雇用労働者の正規雇用化を遅らせる原因になるのではないかと考えられるが、政府の見解を伺う。
四 三年以上にわたって有期雇用となっている者は、そもそも本人が正規雇用転換を望まない場合が多いといわれている。むしろ助成をすべきは、一番雇い止めをされやすい勤続三年未満の者であって、特に早期に正規雇用を増やすならば勤続一年未満の者を正規雇用とすることを目指すべきではないかと考えるが、政府の見解を伺う。
五 今回の制度変更は、猶予期間を設けずに行われたと承知している。つまり、既にこの助成制度を前提に採用や人事計画を立てていた企業にとっては、予定していた助成金が申請できなかったり減額されたりする可能性があると考える。こうした影響を受けた中小企業に対して、救済措置を考えているか、政府の見解を伺う。
六 キャリアアップ助成金の令和六年度と令和七年度の支給要領において、冒頭の趣旨の部分が全く変わっていない。同じ趣旨にもかかわらず、対象が変わるというのはいかなる理由によるものか、政府の見解を伺う。
七 長期にわたっての制度変更であれば、状況の変化もあり致し方ないことかもしれないが、猶予期間もない急激な制度変更は、令和七年度の新規学卒者や、雇い入れられた日から起算して一年未満の者の待遇改善等に多大な影響を与えると考える。これによって正規雇用化が減速、停滞した場合は、事業者側の責任と考えるか、それとも制度変更が原因と考えるか、政府の見解を伺う。
右質問する。