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令和七年六月十六日提出質問第二九四号
硫黄島戦没者遺族及び旧島民等の墓参に関する質問主意書
提出者 阿部祐美子
硫黄島戦没者遺族及び旧島民等の墓参に関する質問主意書
硫黄島(現・東京都小笠原村)を含む硫黄列島は、十九世紀末から半世紀ほど、島民が豊かに暮らす入植地が存在していたが、第二次世界大戦中の昭和十九年に実施された戦時強制疎開以降、居住が認められていない。戦後、硫黄列島を含む小笠原諸島は、サンフランシスコ平和条約によりアメリカの施政権下に入ったが、昭和四十三年に日本に返還され、小笠原諸島の父島や母島には強制疎開前の島民が再居住できるようになった。しかし、硫黄島に関しては、施政権返還と同時に自衛隊の排他的管理下に置かれ、さらに昭和五十九年には、小笠原諸島振興審議会から当時の中曽根康弘内閣総理大臣に対し、硫黄島では住民の定住を前提とする振興開発は行わない旨の意見具申がなされ、以後、政府は同具申に沿った政策を進めてきた。そのため、硫黄島の旧島民は返還後も半世紀以上にわたって帰島が認められていないと承知している。
他方、昭和四十年以来、小笠原村及び東京都では硫黄島への訪島・墓参事業が実施されている。小笠原村の硫黄島訪島事業は、かつては大型船おがさわら丸をチャーターして行われ、旧島民一世に加え二世、三世も参加できていたが、硫黄島及び周辺海域の隆起問題等により、船での墓参事業は行われなくなった。そのため、現在の訪島・墓参事業は自衛隊輸送機で行われているが、日程や参加人数の面で制約もあると承知している。
そこで、以下政府に対し質問する。
一 現在の訪島・墓参事業が、自衛隊の協力で輸送機にて継続されていることには感謝する。しかし、数時間余りで島内を移動する日帰りの日程であることから高齢者には負担が大きいことに加え、自衛隊の輸送機の座席が旅客用の仕様ではないため、身体の衰えにより墓参への参加を諦める旧島民一世も多い。また、参加可能人数が極めて限られているため、旧島民一世に同行する介護者や旧島民二世、三世の墓参希望者の多くが参加できていないと承知している。そのため、高齢化した旧島民一世らに配慮した機材により、希望者全員が無理のない日程で参加できる墓参事業を国として実施すべきと考えるが、見解を伺う。
二 強制疎開前の硫黄島における生活経験の明瞭な記憶をもつ旧島民一世は、現在九十歳前後かそれ以上となり、その人数は年々減少している状況にある。このため、旧島民二世、三世は、そう遠くない将来、旧島民一世の世代が亡くなられた後も墓参事業が継続して実施されるのか憂慮しているところである。戦中戦後を通じて、硫黄島の旧島民が我が国の国策によって激しく翻弄されてきたことは忘れてはならず、旧島民一世が亡くなられた後も、二世、三世が当事者として硫黄島との密な関係を持ち続けていくことは、安全保障上の観点からも必要であると考える。そのため、島民二世以下(三世・四世等を含む)の墓参の権利が損なわれることがないよう、今後、国として責任をもって墓参事業を実施又は自治体による事業の継続に向けた支援を行う意思があるか、見解を伺う。
右質問する。