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令和七年六月十六日提出
質問第二九五号

離婚後共同親権の導入に関連する諸課題に関する質問主意書

提出者  篠田奈保子




離婚後共同親権の導入に関連する諸課題に関する質問主意書


 離婚後共同親権を導入する等の改正民法は来年二〇二六年五月までに施行される予定となっている。しかしながら、「改正法により家庭裁判所の業務負担の増大及びDV・虐待のある事案への対応を含む多様な問題に対する判断が求められることに伴」う、「@家事事件を担当する裁判官、家事調停官、家庭裁判所調査官等の裁判所職員の増員、A被害当事者及び支援者の協力を得ることなどにより、DV・虐待加害者及び被害者の心理の理解を始めとする適切な知見の習得等の専門性の向上」などの「必要な人的・物的な体制の整備」(二〇二四年五月十六日参議院法務委員会附帯決議)が見通せている状況とは言えないと考える。
 また、男女共同参画推進本部が本年六月十日に決定した女性活躍・男女共同参画の重点方針二〇二五では、「今般の改正により、配偶者からの暴力の被害者の避難や被害者の支援を行う関係機関等の活動に支障が生ずることがないよう」と記されたが、その支障となるような動向も見られる。
 これらに関わる諸課題につき政府の認識及び方針を問う必要があると考える。
 よって、以下質問する。

一 今国会における、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の審議では、家庭裁判所調査官の欠員が話題になった。調査官欠員の詳細な状況、それにつながる退職の理由及び増加している精神疾患での休職に係る理由並びに在職者のメンタルヘルスの状況などは早急に調査、分析をする必要があると考えるが政府の所見は如何か。
二 改正民法との関係では、離婚、親権、監護、面会交流等に係る事件を担当することが調査官にどのように影響しているのかは注視すべき問題である。このことは家庭裁判所裁判官、調停委員等についても同様である。例えば、昨年来エックス(旧ツイッター)の「裁判所 採用」アカウントには、別居親と思われるアカウントなどから執拗に罵詈雑言が浴びせられているが、別居親からの繰り返しの調停等申立て、過度なあるいは理不尽な要求、ハラスメント言動といったことが調査官の休職や退職と無関係とは思えない状況があると承知している。改正民法施行準備の一環として、これらにつき調査、分析し対応策を講じるべきと考えるが、政府の見解は如何か。
三 法務省では、離婚後の子の養育計画について二〇二四年度に調査研究を行っており、引き続き本年度も調査研究が予定されている。また、離婚や親子交流等に係る紛争について裁判外紛争解決手続(ADR)の活用を求める声があり、養育計画の作成もその対象となる。ドメスティックバイオレンス(DV)・虐待等がなく、父母間に力関係の偏りがない状況で、双方とも真摯に合意する意思はあるものの具体的な点で意見の違いがあるといったケースであれば、第三者が入るADRには利点もあり得る。しかしながら、DV等があり父母間の関係性が非対称なものである場合、殊に、加害者が加害を否認し自分に正当性があると考え、被害者は恐怖、自己肯定感の低下、被害の無自覚といったことのために自己主張ができないというような場合には、ADRは大変危険であり、そこで合意してしまう養育計画や親子交流の取決めは同居親や子どもにとって深刻な影響をもたらし得る。この点、認定ADR機関、弁護士会等への具体的な周知徹底が欠かせないが、政府はどのように考えているか。
四 ADRの利用についてのみならず、地方公共団体や民間機関等による養育計画作成支援、親子交流支援、親講座については、入口段階でのアセスメントが不可欠であり、対象となる者においてDV・虐待や支配関係、トラウマの存在が推認される場合には手続を進めないという原則が必要であると考えるが、政府の見解は如何か。
五 学校や保育所への保護者の申請・提出書類について父母二名分の記名・署名欄を設けよという要求があり、一部の地方公共団体では二名分の欄を設けた様式が導入されている。二〇二四年十二月十八日の衆議院法務委員会における鎌田さゆり委員の質問に対して、法務省民事局長から「申請書に父母双方の氏名を記載する欄があるからといって、常にその双方の同意がなければ保育所の入退所の手続をすることができないというわけではないものと理解をしております」との答弁があったように、学校であれ保育所であれ、申請・提出書類への父母二名分の署名あるいは双方の明示の同意は必須ではなく、基本的に一人分の署名で以て有効な同意と解されると承知しているが、それでよろしいか。また、そうであるにもかかわらず二名分の欄を設けることは父母双方の記名又は署名が必須であるとの誤解を招き得るとともに、ひとり親やDV被害者にとって無用な圧力となり得ることとなり、望ましくないと考えるが、政府の見解は如何か。
六 別居親(婚姻中であると離婚後であるとを問わず、又親権の有無を問わない)の学校又は保育所の行事への参加、成績の通知、学校生活等の状況の報告などについて、別居親が直接学校若しくは保育園又は教育委員会等所管部局に問合せをし、又は要望、要求をするケースがあり、地方議会でも対応を求める質問等がされている。原則的にこれらは父母間の協議により取決めがされることであり、合意が得られなければ調停、審判等により決められるものである。これらが学校等に直接持ち込まれその判断が求められるということは、異常事態あるいは不正常な状態であると言えるが、政府の認識は如何か。
七 保護者又は緊急連絡先としての登録のない別居親や親族から学校等に直接連絡があった場合、児童・生徒の在籍の有無を含めその場で答えてはならず、同居親又は登録のある保護者にまず確認をすることが原則であると考えるが、政府の見解は如何か。
八 別居親の学校などの行事参加等については、親権の有無など別居親の主張する事情によって直ちに認められる訳ではなく、父母間の取決めの状況、DV・虐待等の事情の有無などに従い判断されるものであり、それ故に、学校や保育所の現場はもちろん教育委員会等の所管部局でも決せられるものではなく、父母間の合意又は調停・審判等に従って対応すべきものであると考えるが、政府の見解は如何か。
九 四ないし六に係る事柄につき地方公共団体の所管部局及び学校や保育所の現場への周知徹底がなされなければ、不用意な対応により子どもや同居親が危険に晒され、子どもの利益が損なわれることになりかねない。このことは改正民法の施行をまたず現行法下でも起こっていることであり、また、起こり得ることであるため、周知を急ぐべきであると考えるが、政府の見解は如何か。

 右質問する。

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