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令和七年六月十六日提出
質問第二九七号

いわゆる能動的サイバー防御法の域外適用等に関する質問主意書

提出者  杉村慎治




いわゆる能動的サイバー防御法の域外適用等に関する質問主意書


 令和七年五月十六日、いわゆる能動的サイバー防御法が成立し、同月二十三日に公布された。これにより、通信情報の取得・分析を通じたサイバー攻撃(予備行為)の検知、実行前に無害化する措置の法的根拠が構築された。
 しかしながら、他国のサーバーやネットワークに対して防御措置を講じる場合に、主権侵害や国際法違反となる可能性について、両議院の内閣委員会等での審議中に十分議論が果たされたとは言い難い。内閣官房HPに掲載された同法律の説明資料には、令和六年中に観測されたサイバー攻撃関連の通信の九十九%以上が海外からの発信であったことが明らかにされ、また、本年四月三日の衆議院内閣委員会総務委員会安全保障委員会連合審査会での岡田克也委員の質疑に対する平国務大臣の答弁でも、サイバー攻撃関連通信の九十九・四%が国外からという発言があったように、能動的サイバー防御措置の領域外にあるサーバー等への実施には、国際法上の違法性阻却事由を国内法上明記しておくことが必要不可欠であり、それが、サーバー等が所在する国からの非難や対抗措置の発動に対し、反論を行うに当たり重要となるものと考える。
 この点、北大西洋条約機構サイバー防御センターの下で専門法律家チームがまとめ、二〇一七年に発表されたタリン・マニュアル二・〇は、他国領域内でのサイバー活動の無害化が同国の主権侵害や内政干渉禁止の原則に抵触するか否かに関する国際法の基準を明確化したものだと承知している。
 そこで、日本の領域外に所在するサーバー等への能動的サイバー防御措置の域外適用について、以下政府に質問する。

一 本年三月十八日の衆議院本会議において、石破茂内閣総理大臣は、アクセス無害化措置が国際法上許容される範囲内で行われるものである旨答弁している。にもかかわらず、能動的サイバー防御法には、アクセス無害化措置の域外適用に関する基準が明確化されていない。
 同法に基づき日本領域外のサーバー等に対してアクセス・無害化措置の実施に当たるのは、第一義的には、我が国の警察官(サイバー危害防止措置執行官(警察官職務執行法第六条の二第三項))であり、当該措置が国際法違反にならないよう、同法に違法性阻却事由を明文化することが、当該サーバー等が所在する他国による非難や対抗措置の発動を事前に回避する際に重要な法的根拠の一つとなると考えるが、政府の見解を示されたい。
二 同法に違法性阻却事由を明確化しない理由について
 1 これまで国際法の要件を国内法に規定するという前例がないからなのか。そうであれば、我が国の領域外に所在するサーバー等へのアクセス・無害化措置を可能とする能動的サイバー防御法そのものも前例に従ったものではなく、国際情勢の現状に鑑み、同法が早急に成立した事実と矛盾しないのか。
 2 日本領域外のサーバーに対して防御措置を執行するサイバー危害防止措置執行官に、国際法に合致するか否かについて、前例がないことを理由に曖昧にしたまま、アクセス無害化措置の実施を命じるのは、政府として無責任ではないかと考える。サイバー危害防止措置執行官の国際法上の免責について、政府の見解を示されたい。
三 同日の衆議院本会議において、石破茂内閣総理大臣は、域外のサーバー等へのアクセス無害化措置の実施主体が、警察庁長官又は防衛大臣を通じ予め外務大臣との協議を行うことにより、国際法上許容される範囲で措置を行うことを確保するものと答弁している。そうであれば、協議を行うための、国際法上の要件が明確化されていなければ、アクセス無害化措置は実際には講じられないことになり、能動的サイバー防御法そのものが絵に描いた餅となると考えるが、政府の見解を示されたい。
四 三に関連し、警察庁長官又は防衛大臣を通じた外務大臣との協議の時間的制限(何時間内に行う等)について、政府としてどのように整理しているのか。アクセス無害化措置は、そのまま放置すれば、我が国国民の生命、身体、財産に重大な危害が発生するおそれがあるため緊急の必要があるときに行われるものであり、迅速な対応が必要不可欠と考える。ケースバイケースで判断することと措置の実効性を高めるために時間的制限を設けることの必要性は、別問題であると考えるが、政府の見解はいかがか。
五 国外に所在するサーバー等に対して、我が国のサイバー危害防止措置が誤って発動された場合について、本年四月三日の衆議院内閣委員会総務委員会安全保障委員会連合審査会で、政府は、国家責任条文の関連する規定等を踏まえて対応する旨の答弁を行っている。しかし、他国に所在するサーバー等への無害化措置が、例えば同国において我が国の外患誘致罪に相当する犯罪を構成する場合、政府はサイバー危害防止措置執行官の身の安全をどのように保障するのか。政府の見解を示されたい。

 右質問する。

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