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令和七年六月十七日提出
質問第二九八号

中国における日本軍性暴力被害に関する質問主意書

提出者  有田芳生




中国における日本軍性暴力被害に関する質問主意書


 二〇二四年八月、中国湖南省の日本軍性暴力被害者八名が日本政府に対し損害賠償を求める訴訟を湖南省高級人民法院に対し提起し、同年四月には山西省でも十八名の日本軍性暴力被害者遺族が同様の訴えを起こしました。このニュースは日本国内でも、NHK、日本テレビなど複数のメディアが報じています。二件の中国国内訴訟は一九九〇年代からの日本国内での訴訟が敗訴に終わったことを受け、被害者や遺族が自国政府に正義と日本軍性暴力被害者の名誉回復を促す行動を求めた動きです。
 韓国でも日本軍性奴隷制被害者による裁判に対し、日本政府の主権免除を否定する判決が出るなど、国際的にも責任追及の機運が高まっています。しかし日本政府は、公式謝罪、法的賠償を避け、女性のためのアジア平和国民基金(アジア女性基金)や日韓合意などによる形式的な対応にとどまり、被害者の声に真摯に向き合っていません。また、中華人民共和国や朝鮮民主主義人民共和国など、アジア女性基金で対象外とされた国の被害者に対してはその形式的な対応すら行われていないのが現状です。
 昨年の中国国内での訴訟提起は、日本政府に謝罪と賠償を求める声が、被害者が高齢になったり、亡くなった後も消えないことを示しています。このニュースを受け、日本の市民からも政府に対する謝罪、賠償を求める署名が行われているので、以下政府に対して質問します。

一 日中戦争から第二次世界大戦期にかけて、慰安所での性奴隷制と同時に、また性奴隷制と連環する形で日本兵士による性暴力及び捕虜への性拷問が極めて広範に、多様な形で、常態的に行われていました。一九九〇年代から日本軍性暴力の被害者たちはすでに日本政府を相手取って十件の裁判を起こしています。政府として、慰安所内での性奴隷制、いわゆる「慰安婦」の問題以外に、戦時性暴力の被害があった事実を認識していますか。
二 二〇二四年の四月と八月に中国山西省及び湖南省で、日本軍性暴力被害者の遺族及び当事者が中国高級人民法院に対し、日本政府を相手取って損害賠償請求の訴えを起こしたことを政府は把握していますか。また、本件について中国政府との協議を行っていますか。
三 すでに韓国においては反人道的犯罪行為の場合、人間としての尊厳と価値、裁判請求権と普遍的人権尊重の原則を国家免責の抗弁よりも優先させるべきであるとして、日本政府の「主権免除」を認めず、日本軍性奴隷制の被害者に対する賠償を命ずる判決が確定しています(二〇二三年十一月二十三日)。中国においても国際的な潮流に沿った制限的国家免責の考え方に基づく「外国国家免責法」が二〇二四年一月一日より施行されました。山西省および湖南省で起きた訴訟は、この「外国国家免責法」に期待をかけたものです。
 外国国家に対する差押行為は現実的に極めてハードルが高いとはいえ、人道に対する罪について、こうした国際的潮流があることは無視できません。日本政府は、過去の人道に対する罪に対する謝罪と賠償を求める声についてどう認識していますか。
四 二〇二四年八月に中国国内で日本政府を訴えた日本軍性暴力被害者の原告は、当時最高齢の方が百二歳と、人生の最晩年にさしかかっています。また、その訴訟を受け継いだ子どもたちの世代もすでに平均年齢が七十代と高齢期を迎えています。こうした被害原告及びその継承人たちが最も求めているのは日本政府の公式謝罪と法的賠償です。再びの長期にわたる訴訟は、過酷な被害を経験し、高齢になった被害者たちにとって極めて負担です。それにもかかわらず、中国では二〇一〇年代後半から新たに名乗り出る被害者が相次いでおり、謝罪を求める強い意志を示しているのです。日本政府は自発的に被害実態の調査、謝罪及び人権救済の措置を取る考えはありますか。
五 山西省の日本軍性暴力の被害者は一九九〇年代に三件、日本政府を相手取った損害賠償請求訴訟を起こしています。今回、山西省で提訴を行ったのは当時の原告の遺族です。この裁判で日本の裁判所は損害賠償請求を却下したものの、三件すべてで原告の被害事実を認め、二〇〇四年に判決が出た損害賠償等請求訴訟(平成十年(ワ)第二四九八七号損害賠償請求事件)では「戦後五十有余年を経た現在も、また、これからも、本件被害が存命の被害者原告である原告らあるいは既に死亡した被害者原告らの相続人あるいは訴訟承継人である原告らの心の奥深くに消え去ることのない痕跡として残り続けることを思うと、立法府・行政府において、その被害の救済のために、改めて立法的・行政的な措置を講ずることは十分に可能であると思われる」、「いわば未来形の問題解決として、関係当事者国及び関係機関との折衝を通じ、本件訴訟を含め、いわゆる戦後補償問題が、司法的な解決とは別に、被害者らに直接、間接に何らかの慰謝をもたらす方向で解決されることが望まれることを当裁判所としても付言せざるを得ない」と、新たな立法による解決を促しています。
 被害者たちも、公式謝罪・法的賠償及び歴史教育、再発防止など被害者中心のアプローチでの解決を求めてきました。
 しかし、日本政府はアジア女性基金、日韓合意により一部の被害国・地域に対し、被害者が求めるのとは異なる形での対応を行ってきました。この措置についても韓国など対象国の被害者からは強い非難がおきていますが、中国や朝鮮民主主義人民共和国など(これ以外のアジア女性基金の対象外である国は東ティモール、マレーシア他がある)の被害者に至っては何ら協議、措置が行われることなく現在に至っています。日本政府はこの責任をどう考えているか、お答えください。

 右質問する。

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