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令和七年六月十七日提出質問第三〇六号
皇位継承問題の議論を広く国民に委ねることに関する質問主意書
提出者 たがや 亮
皇位継承問題の議論を広く国民に委ねることに関する質問主意書
衆参両院の正副議長が国会内の各会派に呼びかけられ、昨年五月より断続的に開催された「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議に基づく政府における検討結果の報告を受けた立法府の対応に関する全体会議」(以下、「全体会議」とする)は、そもそも「悠仁親王殿下までの皇位継承順位をゆるがせにしない」「女性皇族の婚姻後の皇籍維持」「皇統に属する男系男子の養子縁組の受入れ」を「皇族数確保のため」に進める方向で、意見のとりまとめが図られようとしたが、今国会ではその見通しがなくなった。
これは、婚姻後に皇籍に残る女性皇族の配偶者及び子の身分について、自民党などが「一般国民のままとする」という主張をしているのに対し、立憲民主党が「皇族とすべき」との意見を出したことについて、自民党最高顧問の麻生太郎氏、立憲民主党代表の野田佳彦氏との間ですり合わせができず、これに基づいて衆参両院の正副議長で行うとした「とりまとめ案」の作成も不可能となったからである。
しかし、そもそも「全体会議」でれいわ新選組からの出席者が主張したように、天皇の地位及び皇室の在り方は憲法第一条の定めである国民の総意に基づく国民統合の象徴という観点から見るなら、国会の各会派代表が正式の議場で意見を交わすものでもない協議の場で結論に接近するのではなく、広く国民の意見を集めて検討していくべきものである。
そうした点で、本来、皇室典範特例法案に対する附帯決議では、「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について(中略)検討を行い、その結果を、速やかに国会に報告する」ことを政府に求めていたにもかかわらず、有識者会議では「皇族数の確保」を検討し直接的に安定的な皇位継承につながる課題については触れることがなかったことも問題である。そして、この間の有識者会議で取り上げられなかった皇位継承の在り方について、五月十五日付読売新聞が「女系・女性天皇の容認」という二〇〇五年十一月の皇位継承に関する有識者会議報告書が提起した策の検討などを改めて提起したのは、その間隙を埋めるものとして注目すべき動きである。
昨年四月に共同通信が発表した世論調査結果では、「女性天皇の容認に賛成」が九十%、「女系天皇の容認に賛成」が八十四%、「旧宮家男子の皇籍復帰に反対」が七十四%と示されており、この度「全体会議」で協議され「とりまとめ」が図られた内容とはあまりにかけ離れている。これは、皇室典範特例法案に対する附帯決議に基づき検討したとされる有識者会議報告が、こうした世論動向を一顧だにせず、皇位継承安定の議論を避け、検討を「皇族数の確保」という筋違いのテーマにすり替えたものであったことにも起因している。
これでは、政府が附帯決議によって義務付けられた課題を立法府に対して果たしたとは言えない。「全体会議」で立法府の意見の「とりまとめ」ができなかったことは、そもそも政府がやるべきことを避けたことにも原因がある。結果として、非公式協議とはいえ、立法府としての検討を行った「全体会議」の議論内容は、先にあげた共同通信世論調査に示されたような国民の意識動向とは、全くかけ離れたものとなってしまったとも言える。
以上を踏まえて質問する。
一 憲法第一条にあるような国民の総意に基づく国民統合の象徴としての天皇の皇位継承の在り方については、国民の幅広い議論に委ねる努力をすべきである。政府としては、改めてその世論動向を把握するとともに、広く国民が安定的な皇位継承の在り方についての議論に参加できるようにし、その上に立って立法府とも議論を進めていくべきと考える。このために政府はどのような方策をとるべきと考えるか。
二 「全体会議」で我が党が表明したとおり、有識者会議報告が文言に盛り込んだ「悠仁親王殿下までの皇位継承順位はゆるがせにしない」ということについては、国民的議論に基づいた再検討が必要と考える。
これは、二〇〇五年十一月の有識者会議報告書で提起され、いまや世論調査では圧倒的多数の国民が支持する皇位継承安定の在り方としての「女系・女性天皇の容認」を先送りするもので、そうした点で議論を縛るものであり、不適切と考えるが、政府の見解を示されたい。
三 婚姻後の女性皇族の配偶者・子の身分について「全体会議」で意見が分かれたことについては、有識者会議報告書が「配偶者・子は皇族の身分を有しない」としていることにも起因する。そして、これは婚姻後に皇籍に残った女性皇族が、公務負担を実質自分だけで負うことを意味するとともに、配偶者が一般市民にとどまることで家計など生活面、さらには参政権の行使や事業の展開などで「皇室利用」につながってしまうことなど問題が多いとの指摘がある。これをどう考えるのか。
四 有識者会議報告書が提起した「皇族数確保」のために「皇統に属する男系男子の養子受入れ」及び「全体会議」で議論され、一部の会派が支持しながら「とりまとめ」に盛り込もうとした「旧十一宮家の男系男子を養子に迎え入れる」という点については、内閣法制局と衆参両院法制局との間で、「憲法第十四条に抵触するか否か」について意見が分かれた。実際、現在は一般国民である旧宮家から男系男子を選んで皇室に養子で迎え入れることは、同条項が定めた「身分、門地による差別の禁止」「法の下での平等」に反することは明らかだと考えるが、政府においてはどう考えるか。
五 いずれにしろ、皇位継承の安定については国民の目が届きにくい政府の有識者会議で議論し、さらにそれを立法府の正式の議場ではない「全体会議」という非公式協議の場で「静ひつに議論する」というのでは、本当の意味での目的の達成には至れない。五月十五日付読売新聞記事で提起されたように、象徴天皇制とは国民の支持なくしては成立しないものであり、国民を代表する国会議員が基本に戻って政府の提案などを議論しそれを国民に見せていくというプロセスなくして皇位継承の真の安定につながる皇室典範改正などは実現できないと考える。
その点で、「全体会議」が意見の「とりまとめ」のベースにしようとしたこの度の有識者会議報告書は、肝心の皇位継承問題を避けるなど、方策として採用するにも問題があり、政府は今一度、議論を差し戻してやり直し、立法府に対する提案をすべきだと考える。また、二〇〇五年十一月有識者報告書で提案された「女系・女性天皇の容認」などについても、改めて議論の俎上にのせるべきと考えるが、どうか。
右質問する。