質問本文情報
令和七年六月十七日提出質問第三二三号
リチウムイオン電池等の使用後の処理に関する質問主意書
提出者 井坂信彦
リチウムイオン電池等の使用後の処理に関する質問主意書
二〇二五年一月三日、埼玉県川口市のごみ処理施設が、リチウムイオン電池の混入により、火災で使用できなくなった。家庭ごみの収集が停止され、ごみ集積所にはごみ袋が山積みとなる大混乱が発生し、市は近隣自治体や民間業者に協力を呼びかけ対応してきた。施設の復旧には六十五億円以上かかるとみられ、委託費等を含めると市の財政負担はさらに大きくなることが懸念されている。
二〇二四年十二月には茨城県守谷市の常総環境センター、同年四月には新潟県長岡市の中之島信条クリーンセンター、二〇二三年四月には埼玉県さいたま市桜区の桜環境センターでも火災が発生している。いずれも、家庭ごみにリチウムイオン電池が混入して発火したものと見られている。
リチウムイオン電池は、携帯電話やノートパソコン等の充電式電池として活用されている。特徴としては、自己放電が少ない、充電効率が良い、寿命が長い、高速充電が可能、汎用性が高いといった利点があると承知している。一方で、ショートした時や高温になり過ぎると、破裂、発火、爆発の危険性があり、一度燃え上がると電池に含まれる酸化剤に燃え移るため消火が困難と言われている。
環境省は、二〇二五年四月に、各都道府県一般廃棄物行政主管部長宛てに通知を出している。近年、廃棄物処理施設や収集運搬車両等において、リチウム蓄電池に起因する火災事故等が、二〇二三年度には全国の市町村において八千五百四十三件と頻繁に発生しており、深刻な課題となっていることを述べている。その上で、家庭から排出される全てのリチウム蓄電池等の安全な処理体制を構築していくよう求めている。具体的には、住民にとって利便性が高い収集方法とすること、回収したリチウム蓄電池等の保管を適正に行うこと、可能な限り循環的利用と適正処理を行うことを方針として通知している。
いわゆる廃棄物処理法上、一般廃棄物の統括的な処理責任は市町村が有すると解されている。しかし、各自治体がそれぞれの方法で回収、処理を行ってきた結果、事故が頻発している現状を鑑みると、政府によって一定の基準や支援を行って、安全性の確保と利便性の向上を進める必要があると考え、以下質問する。
一 総務省消防庁の、住宅における電気火災に係る防火安全対策検討会資料によると、充電式電池等を原因とした火災の発生件数は平成二十五年に一件だったものが、令和二年には五十件まで年々増えている。充電式電池類の回収方法について、自治体ごとの取組に任せるだけでなく、政府が一定のルールを定める必要があると考えるが、政府の見解を伺う。
二 カメラや音楽プレーヤー、モバイルバッテリー、小型扇風機、ライト、おもちゃ、加熱式タバコなど、小型家電には充電式電池類が組み込まれているものが多くある。家電リサイクルの対象となっていないもので、充電式電池が組み込まれているものについて、一般廃棄物とは別に確実に回収する制度が必要と考えるが、政府の見解を伺う。
三 充電式電池類は、家庭ごみと一緒に処分しようとすると、収集運搬車両や廃棄物処理施設等において火災の原因になる。現在は、法令上の分別義務や罰則等はないと承知しているが、危険性を鑑みると法令で正しい処理を定め、被害を出した場合には罰則を適用することも検討できないか、政府の見解を伺う。
四 電池については、多くの自治体で、乾電池、リチウム電池(コイン電池)、ボタン電池、充電式電池(リチウムイオン電池)などに分類している。それぞれについて、処分やリサイクルの方法がばらばらで、分かりづらいことが多い。結果として市民に浸透せず、廃棄物処理施設等の火災につながる。もっと分かりやすい分類、処理方法になるよう自治体に対して指導が必要と考えるが、政府の見解を伺う。
五 ボタン電池や充電式電池類は、自治体ではなくリサイクル業者が回収するという自治体が多い。しかも、それぞれ回収業者が違ったり、民間のリサイクル業者では回収ボックスの数が少なかったりする。少量のものを遠くまで持ち込んだり、郵送するといった手間が発生するため、結局しばらく家庭に保管せざるを得ず、不便なことが多い。電池リサイクルについて、一元化して効率的な回収を進めることはできないか、政府の見解を伺う。
六 リチウム電池、リチウムイオン電池、コイン電池、ボタン電池など、似たような名前が付けられており、それぞれ処分方法が違う。政府は、分かりやすい統一した名前へと変更して、利用者が間違わないように誘導すべきと考えるが、政府の見解を伺う。
七 自治体によっては、乾電池やライター、スプレー缶、充電式電池等を発火性危険物として一つにまとめて回収し、処分業者が分類を行っている。多くの自治体が、電池類だけで何種類にも分別し、またそれとは別に小型家電、スプレー缶などはそれぞれ別の方法で回収しているが、発火性危険物という括りで回収する方がより安全で合理的という意見もある。政府の見解を伺う。
八 発火性危険物として回収した場合、その後の分類に手間とコストがかかる。しかし分類する機器やロボットが開発されており、導入する自治体や事業者が増えていると承知している。安全性や合理化を進めるため、政府はこうした機器の導入を助成、推進する必要があると考えるが、見解を伺う。
右質問する。