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令和七年六月十七日提出
質問第三二四号

漢方・生薬の薬価の見直しに関する質問主意書

提出者  井坂信彦




漢方・生薬の薬価の見直しに関する質問主意書


 保険診療における漢方治療、とりわけ生薬を用いた処方が極めて困難な状況に直面しているという。
 農林水産省が二〇二五年四月に発表した、薬用作物(生薬)をめぐる事情によると、生薬の輸入量のうち約八割が中国産である。しかし、中国国内で需要が増加していること、乱獲により自生の薬用作物が減少していること、輸出制限を課す等の動きが見られることなどから、日本が輸入する価格が上昇している。中国国内の問題だけでなく、円安、物流や人件費・エネルギーコストの上昇、投機的な買占めなどの影響も重なり、中国産生薬の価格は大幅に上昇しており、安価な中国産生薬の安定的確保が難しくなっている。
 一方、国産の生薬は、全体の約九%に留まっている。栽培面積についてはほぼ横ばいで推移しているが、栽培戸数については減少傾向となっている。大手漢方薬企業の拠点施設がある北海道などの一部の地域を除いて、野菜等の他作物との複合経営が多いことや機械化が進んでいないことから、一戸当たりの栽培面積が比較的小さく、栽培品種も限られている。
 また二〇二四年八月の中央社会保険医療協議会薬価専門部会における日本製薬団体連合会の意見陳述資料によると、漢方・生薬の採算性を悪化させる製剤特有の要因として、原料生薬の品質管理コストや保管設備費の増加が挙げられている。
 このように漢方・生薬は、内外の事情や物価高騰の影響を受けた結果、多くの品目が不採算となっている。先の日本製薬団体連合会の意見陳述資料によると、不採算品目の割合は、漢方・生薬は二千六十品目中、千百五十三品目の五十六%、医療用漢方製剤は五百八十品目中、五百一品目の八十六・四%、生薬製剤は九品目中、九品目の百%、生薬は千四百七十一品目中六百四十三品目の四十三・七%となっている。
 漢方を使用した保険診療では、生薬の流通価格が高騰する一方で薬価が据え置かれており、仕入れ価格と薬価の逆転が常態化しているという。保険診療においては患者に追加費用を求めることはできず、その損失は医療機関側の負担となる。医療機関は生薬を使用するたびに赤字を強いられる状況で、やむなく処方を断念せざるを得ないことがあると承知している。医療提供体制の縮小や治療選択肢の制限につながることから、適正化を進めるため、以下政府に質問する。

一 漢方・生薬の薬価高騰について、現状の把握と政府の見解を伺う。
二 漢方治療の本質は、一人ひとりの体質や症状に応じて柔軟に処方を調整することにある。個別対応を可能にするのが、生薬を用いた煎じ薬であり、エキス製剤に生薬末を加えた加味方である。このようなオーダーメイドの処方をする場合に、不採算品があると処方に影響が出てしまう。こうした漢方・生薬の特性を踏まえて薬価の算定を行っているか、政府の見解を伺う。
三 医療用漢方製剤は、二〇二四年度の不採算品再算定を受け、大幅な薬価の引上げが行われた。しかし、漢方・生薬等についてはほぼ据置きであったと承知している。なぜ医療用漢方製剤だけが引き上げられたのか、全ての漢方・生薬の薬価を見直す必要があるのではないか、政府の見解を伺う。
四 厚生労働省は不採算品再算定の説明として、急激な原材料費の高騰、安定供給問題に対応するため、医療上の必要性が高い品目を対象として不採算品再算定を臨時・特例的に適用するとしている。生薬は、急激な原材料費の高騰と安定供給に問題が発生し、医療上の必要な処方ができない状態となっている。不採算品再算定の定義に近い状況と考えるが、政府の見解を伺う。
五 物価高騰や円安などの影響で、漢方・生薬のように仕入れ価格と薬価が逆転する状況が起きている。不採算品再算定を行い薬価を適正価格に引き上げる必要があり、少なくとも薬価を引き下げる改定はすべきでないと考えるが、政府の見解を伺う。
 
 右質問する。

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