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令和七年六月十七日提出
質問第三二九号

バイオマス発電における輸入木質燃料の持続可能性確認に関する質問主意書

提出者  山崎 誠




バイオマス発電における輸入木質燃料の持続可能性確認に関する質問主意書


 二〇一二年の再生可能エネルギー固定価格買取制度(以下、FITという)開始以降、輸入木質バイオマスを燃料とする大型発電所が急増し、FITバイオマス発電の容量全体の八割を占めている。主な燃料である木質ペレットの輸入量は当初比八十倍以上に増加し、昨年度は六百三十万トンを超えた。燃料輸入費は円安もあって高騰しており、そのために運用停止した発電所もある。FITの目的は、環境負荷の低減、エネルギーの安定や自給率の向上、地域振興だが、輸入燃料に依存するバイオマス発電は、これらの目的に沿っておらず、安定調達も充分果たせていないと考えられる。
 近年、木質ペレットの主要な輸入元であるカナダと米国で、木質ペレット加工場での法令違反が多数指摘されている。米国では過去十年間に一万件以上の大気汚染や水質汚濁、労働基準法違反などの法令違反が報告され、うち八千件は過去五年に起きていると承知している。これは、平均一日四〜五件に上り、日常的・継続的に環境基準違反が起きている状況と言える。
 またインドネシアからは、熱帯林を伐採した原料がペレットに加工され日本に輸入されているとの情報がある。インドネシアから日本への輸入量はまだ少ないものの、二〇二四年は前年比五倍と急増しており、日本の木質ペレット市場が熱帯林の開発を進めてしまう可能性も指摘されている。熱帯林に由来する燃料が再生可能エネルギー燃料として適切かどうかは、改めて検討する必要があると考える。
 FITでは「合法性・持続可能性」を要件に消費者負担の賦課金で再生可能エネルギーを買い取っているが、なかでもバイオマス発電の買取価格は他の再生可能エネルギーより高く設定されている。燃料生産地での法令違反や、仮に合法であっても熱帯林や原生林の伐採などが明らかである場合、これらを再生可能な燃料としてFIT対象に含めることは不適切であると考える。
 二〇二四年四月改訂の事業計画策定ガイドライン(バイオマス発電)で、輸入燃料のいわゆるトレーサビリティの確認が事業者に課されたことは、合法性・持続可能性の確認に向けて一歩前進と言える。しかし、二〇二四年九月十八日に開催された、総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会新エネルギー小委員会バイオマス持続可能性ワーキンググループにおいて、バイオマス発電事業者協会が報告した際、燃料の輸入先を公開した事業者はわずかであったと承知している。
 前述の環境基準違反や熱帯林・原生林伐採と関連している加工場から日本の発電所が調達していないことを確実にするためには、事業者が自らトレーサビリティを確認するだけでは不十分で、調達先の加工場の情報公開が必要である。それにより違反案件や持続可能でない燃料生産地との関係が明白になれば、行政が調査を行う必要もなくなり行政コストの削減にも役立つと考えられる。
 毎年高額な燃料費が海外へ流出するのは国富の喪失であり、生産地で法令違反や熱帯林・原生林の開発との関係が疑われている現状では、消費者に再生可能エネルギー支援として賦課金の負担を求め続ける合理性がない。トレーサビリティと情報公開を義務化し、法令違反などに関わるものについてはFIT/いわゆるFIPから確実に排除されるような仕組みを早急に確立していく必要があると考える。そこで、以下質問する。

一 昨年六月四日の衆議院環境委員会における近藤昭一委員の質疑において、経済産業省はカナダにおけるペレット生産業者による百八十九件の法令違反について事実関係の確認中と答弁した。
 1 カナダの違法案件についての何を確認し、その結果、どのような事実が判明したのか。また、米国で昨年報告された一万件の違反案件についての経済産業省の認識の有無と、日本のFITバイオマス認定事業者のいわゆるサプライチェーンとの関連について、どのような方法で確認し、どのような事実を認識しているのかをそれぞれ明らかにされたい。
 2 日本のFIT/FIPバイオマス発電所で、これらの法令違反を起こした加工場からの調達があったかどうか、もしあった場合は、その発電所の件数を可能な限り明らかにされたい。
二 FIT/FIPでは、ガイドラインへの違反が確認された場合、指導、改善命令、認定取消しが検討される。また違反案件の認定取消し以前に、FIT/FIP交付金の支払い留保ができる制度が導入されている。
 1 これまでにFIT/FIPの輸入木質バイオマス発電に関連して、これらの指導、改善命令、認定取消し、FIT/FIP交付金の支払い留保を実施した事案が実際にあったかどうか、それぞれについて件数を可能な限り明らかにされたい。
 2 現在のところ、認定取消しされた案件だけが情報公開に至るが、指導・改善命令を受けた案件についても、情報公開をするべきと考える。賦課金を負担している消費者には知る権利があり、消費者が電力会社を選ぶ際にも重要な参考情報となり得ると考えるが、政府の見解を問う。また、個社名が公表できないとしても、違反内容と指導・改善命令の内容は公開可能と考えるが、併せて見解を示されたい。
三 FIT/FIP制度ではパーム油とPKS(パーム核殻)を燃料とする場合、燃料の認証が取れるまでの過渡的措置として加工(搾油)工場までの情報公開が義務とされ、事業者が守秘義務違反を問われることはなかったと承知している。海外での法令違反案件が多数に上ることを鑑みると、FIT/FIP制度の支援を受けるバイオマス発電所は、海外の燃料加工場までのトレーサビリティを確認するだけでなく、消費者・国民への情報公開を義務とすべきだと考えるがいかがか、政府の見解を問う。
四 インドネシアやカナダの現地NGOからの情報では、木質ペレット生産のために原生林や天然林が伐採され、ほぼ単一の樹種が植林されるプランテーションへの転換が起きているという。天然林は炭素蓄積量と生物多様性の両面で、人工林よりもはるかに価値が高いため、天然林から人工林への転換は「森林の劣化」と呼ばれている。FITでは現在、森林が農地に転換された場合を「森林減少」と規定して、土地利用変化からの排出量算定を求めているが、森林劣化についてもFIT制度側で明確に規定し、日本の燃料調達が、生産地で森林劣化を引き起こしていないことを確認すべきと考える。森林認証ではこのような森林劣化が必ずしも十分に把握され予防されているわけではないと認識しているが、政府の見解を問う。
五 二〇二四年には、輸入木質バイオマス発電の燃料購入費用として、三千三百億円以上が海外に支払われている。これは林野庁の当初予算に匹敵する金額であると承知している。全てのFIT/FIP認定バイオマス発電所の燃料輸入費用の総額とペレット、PKS、チップほかの内訳について、その経年の推移をそれぞれ可能な限り明らかにされたい。
 
 右質問する。

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