質問本文情報
令和七年六月十七日提出質問第三三五号
外国人による自国外送金アプリの利用と日本国内における不可視経済圏の形成に関する質問主意書
提出者 杉村慎治
外国人による自国外送金アプリの利用と日本国内における不可視経済圏の形成に関する質問主意書
近年、外国人労働者や短期滞在者が、規制の枠外で、日本国内で得た収入を母国へ送金する事例が多数報告されていると承知している。このような国境をまたぐ送金は、日本の金融機関や税務当局による規制を回避する形で資金移動を可能にし、所得の申告漏れ、課税逃れ、さらにはマネーロンダリングの温床となる懸念があると考える。
また、こうした送金手段が、外国語SNS等を通じて行われる資格外活動(いわゆる白タク行為や無許可のツアーガイド、通訳、家事代行等)と結びつくことで、労働実態を不可視化し、日本国内に「非課税・非登録」の準外国経済圏(以下「不可視経済圏」という。)を形成することも可能との指摘もある。これは、労働市場の公正性を損ない、地域経済や究極的には国家財政に対して深刻な影響を及ぼす構造的問題であると考える。
これらを踏まえて、以下の事項について政府に質問する。
一 外国人による国外送金の利用実態と制度的把握
1 外国人が規制の枠外で日本国内から資金を国外に移動させている実態について、政府は国別、送金行為の種別等の統計を有しているか。有していれば、可能な限りそれぞれ示されたい。
2 当該送金の原資となる外国人が日本国内で得た収入は、非居住者であったとしても給与所得、事業所得、報酬、贈与等いずれに該当するものとして捉えられ、源泉徴収などで納税する必要があると考えられるが、税務上の対応がなされているか。
3 暗号資産交換業者を経由しないデジタル資産について、国外への送金にアプリ内で完結するP2P送金が利用された場合、国税庁および金融庁が課税・監視する上での限界および制度的課題を政府はどのように認識しているか、それぞれ示されたい。
4 第三者を経由するなどして国外送金の本来の委託者を特定不可能とするような行為に関して、その法的取扱いと規制の可能性について、政府の見解をそれぞれ示されたい。
二 不可視経済圏と不法就労との関連
1 外国語SNS等を通じたサービス提供(配車、観光案内、通訳、家事代行等)について、在留資格に違反して行われる事例の有無と把握状況をそれぞれ可能な限り示されたい。
2 報酬が国内外の銀行口座を介さず、送金アプリを通じて国外の法人または個人から当該外国人労働者のアプリ口座へ直接支払われる場合、銀行記録や給与台帳によるいわゆるトレーサビリティが欠如し、在留資格に定める就労範囲の逸脱や不法就労助長罪の立証が極めて困難となると考える。この構造的課題を踏まえ、政府は、@入管当局による取締指針・摘発体制の整備、A国税当局による送金アプリ事業者への情報照会・報告義務強化、B海外当局およびプラットフォーム運営事業者との情報共有・協力覚書の締結等を含め、どのような具体的方策を現在講じているか、または講じる予定かを示された上で、就労助長罪の立証が困難となる構造に対し、政府としてどのような対応を講じているか示されたい。
3 送金アプリの匿名性や非課税性を利用して、不法就労の痕跡を意図的に隠蔽する事例が確認されたことはあるか。
三 国外送金アプリ事業者への規制および協力体制
1 外国系送金アプリ事業者に対する、本人確認、記録保持、報告義務等の規制的対応を行う外国の法的枠組みの整備状況について、政府の把握するところをそれぞれ示されたい。
2 日本政府が、外国に本拠を置くアプリ事業者に対して送金履歴等の情報提供を要請した実績の有無と、協力状況を国別にそれぞれ可能な限り示されたい。
3 国外送金アプリが、事実上の報酬支払手段や非合法な所得移転の経路として機能している場合、当該アプリの使用を助長する行為に対して政府として規制を検討しているか。
四 国際的対応と政策的方針
1 共通報告基準等の国際的資金移動情報共有枠組みに、送金アプリサービスを提供する資金移動業者のデータを含める方向で国際交渉を行う方針があるか。
2 外国人による日本での不可視経済活動への対応について、国税庁、出入国在留管理庁、警察庁、金融庁など関係機関が横断的に情報連携・摘発を行う体制の構築状況をそれぞれ可能な限り示されたい。
3 こうした不可視経済圏が、地域経済や中小事業者の事業環境に悪影響を与えているとの認識が政府にあるかを示した上で、その経済的影響について定量的把握を行っているか明らかにされたい。
4 日本国内での合法的な経済活動が、アプリ等を活用した規制の枠外での資金取引によって侵食される事態に対し、政府は構造的対策を講じる方針があるか。
右質問する。