質問本文情報
令和七年六月十七日提出質問第三三七号
中古品取引の未計上がGDP統計の精度および政策判断に与える影響に関する質問主意書
提出者 杉村慎治
中古品取引の未計上がGDP統計の精度および政策判断に与える影響に関する質問主意書
我が国の国内総生産(GDP)は、国内で新たに生産された財やサービスによる付加価値を合算するものであり、経済実態を把握する基礎的な統計指標である。一方、近年中古市場は著しく拡大しており、実体経済への影響力を強めていると承知している。
しかしながら、当該市場で発生する取引額は、原則として新品の生産を伴わないためGDPには計上されておらず、手数料や発送料などの周辺サービスを除いて、その経済規模や所得移転の実態はGDP統計には反映されていない状態にあると考える。加えて、中古市場の拡大は消費者の選択肢の多様化や物価の実質的低下に寄与し得るものであり、家計の実質的な消費構造にも影響を与えている。また、いわゆるサーキュラーエコノミーの観点からは、環境負荷低減の経済的手段としても政策的意義が高まっていると考える。
このような背景のもと、従来のGDP統計がデジタル経済における新たな流通形態を正確に反映できていない可能性は高く、統計制度の見直しが求められていると考える。
よって、以下の事項について政府に対し質問する。
一 GDP統計における中古品取引の取扱いについて
1 現行のGDP統計において、メルカリやヤフオク等に代表される中古品取引(発送料等を除く)はどのように位置付けられているか。現時点で完全に統計対象外となっているか。
2 発送料等の周辺サービスはGDPに計上されているが、中古品取引の本体価格部分を除外する合理性について、政府はどのように説明するか。
二 中古市場規模の把握とその変化
1 政府は、直近三年間における我が国の中古市場規模(取引総額)をいかに推計しているか。各年の取引額の増減推移について、可能な範囲で示されたい。
2 前項の推計を政府として行っている場合、当該推計を行うための調査は統計法における基幹統計調査又は一般統計調査のいずれに該当するのか。また、政府は当該推計を行うための調査の実施に当たり、必要となるデータをプラットフォーム事業者(ここでは中古品取引をインターネット上で仲介する事業者をいう。以下同じ。)から収集しているのか。
3 前項で収集するデータは個人情報の保護に関する法律における個人データ、匿名加工情報又は個人関連情報のいずれに該当するか。個人データに該当する場合、同法第二十七条では第三者提供に際し原則として本人の同意を得なければならないとされているが、プラットフォーム事業者は個人データを政府へ提供するに当たり、本人の同意を得ているのか、あるいは本人の同意が不要な匿名加工情報又は個人関連情報として提供しているのか。
4 前記1の推計を現時点で行っていない場合、政府として今後行う考えはあるか。
三 経済政策・環境政策への影響
1 中古市場における活発な取引が、新品市場への価格圧力を通じて消費者物価指数や家計調査に影響を及ぼす可能性について、政府はどのように認識しているか。
2 内閣府経済社会総合研究所が公表した研究会報告書八七「環境要因を考慮した経済統計・指標について」では、OECDの枠組みに基づく汚染調整済経済成長率や、国際連合環境経済勘定に準拠した大気排出勘定の暫定試算が示されている。これらいわゆるグリーンGDP指標の整備方針を踏まえ、中古品取引をGDP統計に反映させることで資源循環や廃棄物削減の効果を当該指標に組み込む可能性について、政府はどのように認識しているか。
3 中古品取引の拡大は、GDPに計上されない一方で消費者の効用(well-being)を高める側面が指摘されている。政府は、中古市場の効用増大効果を捕捉・評価するためのwell-being指標を今後どのように整備していく考えか。
四 国際的な統計基準との整合性
1 二〇二五SNA(仮称)における中古取引に関するGDP統計への反映についてどのような議論が行われているか。また、我が国政府はその議論にどのように関与しているか。
2 内閣府経済社会総合研究所が公表した季刊国民経済計算No.一六四中、「シェアリング・エコノミーのGDP統計における捕捉の現状」では、プラットフォームのマージン(仲介手数料)方式による付加価値把握を提案されている。政府は中古品取引にも同方式を適用し得るか、適用に当たっての課題をどのように認識しているか。
五 統計改革に向けた政府の基本方針
1 政府は、中古品取引を含むデジタル経済を統計的に把握し経済政策に反映させるため、関連制度の見直しを検討しているか。その検討主体および実施時期を明らかにされたい。
2 今後、統計に関する民間プラットフォーム事業者との情報連携や官民協働モデルを確立する可能性について、政府の検討状況を伺いたい。
3 前記1の制度見直しが実現した場合、所得政策、消費税、物価の分析など経済政策全般に与える影響について、政府はどのように評価しているか。
右質問する。