質問本文情報
令和七年六月十七日提出質問第三三八号
ハーバード大学の外国人留学生を我が国の大学等へ受け入れることに係る疑問に関する質問主意書
提出者 竹上裕子
ハーバード大学の外国人留学生を我が国の大学等へ受け入れることに係る疑問に関する質問主意書
本年四月以降、米国のトランプ政権は、ハーバード大学に対し、留学生の受入れ停止措置や連邦政府による助成金の凍結等の措置を次々に発表している。その理由として、学内における反ユダヤ主義への対応やDEI(多様性、公平性、包摂性)施策の見直しを同大学側が拒否したこと等とともに、同大学と中国共産党との関係への疑念があるとされている。
中国共産党は、この数十年の間、何千人もの中堅・上級官僚を米国の大学キャンパスに派遣し、幹部研修や大学院での研究をさせてきており、特にハーバード大学ケネディスクールは人気の高い派遣先で、中国では国外トップの「党の学校」と評されていると報じられている(令和七年六月三日付けウォール・ストリート・ジャーナル日本版)。また、本年五月に行われた同大学の卒業式において、中国共産党との関係が指摘されている中国人留学生が、同党が提唱している「人類運命共同体」を呼び掛けるスピーチを卒業生代表の一人として行った。また、これまでに中国は、米国における学問的開放性を利用して、スパイ活動や知的財産の窃取を図るなどの活動を行ってきたことも指摘されている(同年五月二十八日付けロイター)。
五月二十八日(現地時間)、米国のルビオ国務長官は、中国共産党と関係のある中国人留学生や重要分野を専攻する中国人留学生のビザを積極的に取り消すとする方針を発表した。さらに、六月四日には、トランプ大統領がハーバード大学で新たに留学や研究をする予定の外国人の入国を停止・制限する布告に署名するに至った。
一方、我が国の動きとして、五月二十七日、文部科学省は、米国の大学に在籍する留学生が学びを継続できるよう、我が国の大学への受入れ等が可能な支援策について各大学に検討を依頼した。これを受けて、六月十二日時点で、国内の九十四大学が支援を表明することとなった。
我が国のこうした動きについて、米国が国家の安全保障上危険でふさわしくないとみなした外国人留学生を我が国の大学で受け入れようとすることは問題であり、また、主として日本国民の税金により運営されている国立大学及び公立大学(以下「国公立大学」という。)は、それぞれ全国的な高等教育の機会均等の確保等、地域における高等教育機会の提供等の役割を担っている。それらの大学に外国人留学生を受け入れる予算があるのであれば、日本人の学生及び研究者(以下「学生等」という。)に対する支援を充実させるべきであると考える。
これらを踏まえ、以下質問する。
一 現在の我が国の国公立大学における外国人留学生の総数について、以下の数をそれぞれ可能な限り示されたい。
・全学生数に占める割合
・全外国人留学生数に占める各出身国(地域)別の割合
・全外国人留学生数に占める国費(日本政府負担)留学生数、外国政府派遣留学生数、私費留学生数それぞれの割合
二 ルビオ国務長官が、中国共産党と関係のある中国人留学生や重要分野を専攻する中国人留学生のビザを積極的に取り消すとする方針を発表したことについて
1 米国が国家の安全保障上危険でふさわしくないとみなした外国人留学生を我が国の大学で受け入れようとすることは適切か、政府の見解を示されたい。
2 我が国の大学等においては、外国人留学生のうち、中国人留学生が約四割と大きな割合を占めている現状であるが、さらに中国人留学生を受け入れようとすることは適切か、政府の見解を示されたい。
3 外国在住の中国人にも、母国の国家情報法及び国防動員法で工作活動及び破壊活動を義務付ける中国の体制に鑑みれば、ルビオ国務長官の対応は常識的な措置であり、我が国も米国と同じ方向に進むべきではないのか、また、米国との関係において政治上のリスクが生じるのではないか、それぞれについて政府の見解を示されたい。
4 このように米国がスパイ活動等の国家の安全保障上のリスクに対して対策を講じる一方、我が国はいわゆる「スパイ天国」とも呼ばれているように、諸外国と比べてスパイ行為への対策が不十分である。このような現状を踏まえると、我が国におけるいわゆるスパイ防止法の一刻も早い制定が必要であると考えるが、政府の見解を示されたい。
三 国公立大学における外国人留学生の受入れについて
1 トランプ政権がハーバード大学で新たに留学や研究をする予定の外国人の入国を停止・制限する措置を講じることとなったのは、国家の安全保障上の懸念から見て正当な面があると考えられる。したがって、令和四年に東京大学がウクライナの学生等を戦争下における人道的な観点から受け入れた場合とは異なり、今回のトランプ政権の政策に伴う米国からの外国人留学生の受入れを日本国民の税金により運営されている国公立大学が行うことは問題なのではないか、政府の見解を示されたい。
2 当該外国人留学生受入れに係る予算があるのであれば、本来は我が国の学生等への支援に使うべきではないのか、政府の見解を示されたい。
3 文部科学省が当該外国人留学生の受入れについて、国公立大学を含む国内の大学に検討を依頼し、受入れを推進しているのは適切であるのか、政府の見解を示されたい。
4 大学の国際性という観点から外国人留学生の受入れ数が大学の評価項目として用いられることがあるが、受け入れた外国人留学生が我が国に定着し、能力を発揮し貢献してくれる等の保証はない。大学の評価については、外国人留学生の受入れ数ばかりを重視するのではなく、受入れの成果としての、我が国の科学技術・イノベーション力の向上や地域における産学官連携等による産業及び社会への貢献等といった大学が持つ多様な使命にどの程度寄与したか等の観点で行われるべきではないのか、政府の見解を示されたい。
四 各大学において、米国の大学に在籍する留学生等の受入れの動きが見られる。大阪大学は、医学系研究科において約六〜十億円を準備して、最大百名程度の博士研究員受入れ体制の構築を行うとしているが、その資金は国民が納めた税金を財源とするものか、それとも大阪大学が独自に民間等から集めた寄附金を財源とするものか、受入れに係る資金の調達先について政府の把握するところを示されたい。また、北海道大学は米国の協定校に在籍している日本人学生の受入れは行うものの、ハーバード大学は協定校ではないため対象外としているが、このように他の大学も協定校ではないならばハーバード大学の学生等を受け入れることを優先するのではなく、在学する日本人学生への支援をすべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。
五 国費外国人留学生制度に係る予算を我が国の教育機関への支援に充てる必要性について
1 トランプ大統領は、ハーバード大学に対する補助金を打ち切り、その資金を全米の職業訓練学校に充てることを検討している。我が国の予算においては、授業料に加えて生活費まで我が国が負担することで外国人留学生の受入れを図る国費外国人留学生制度に係る費用が計上されている。その費用を、昨今重要性が高まっている実践的な職業教育を行う我が国の教育機関への支援に充てるべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。
2 我が国の夜間中学や定時制高校の中には、外国籍の生徒が多数在籍している学校もあり、当該学校の運営に係る費用について、国による負担は少なく、地方公共団体の負担が多いという問題意識を持っている。前記の国費外国人留学生制度に係る予算があるのであれば、当該外国籍の生徒に対し日本語学習を提供している夜間中学や定時制高校に対する支援に充てるべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。
右質問する。