質問本文情報
令和七年六月十七日提出質問第三三九号
在留資格「経営・管理」の悪用防止に関する質問主意書
提出者 竹上裕子
在留資格「経営・管理」の悪用防止に関する質問主意書
日本保守党は経営・管理ビザの見直しを令和六年十月投票の衆議院議員総選挙の公約に掲げ選挙戦を戦ってきたところであるが、その後も、「経営・管理」の在留資格による在留外国人数は増加傾向にあり、令和六年末における総数は四万千六百十五人となっている。本来、「経営・管理」の在留資格は、日本企業又は我が国に進出している外資系企業において経営・管理の手腕を存分にふるい、我が国の経済の活性化や雇用の増加に貢献できる高度人材にこそ相応しい在留資格であると考える。「経営・管理」の在留資格で在留する外国人は、配偶者や子供の帯同が認められるほか、将来的には「永住者」の在留資格も取得し得る。しかしながら、昨今、「経営・管理」の在留資格が安易な移住の手段として悪用される事例が報じられており、国会審議においても重要課題として取り上げられているところである(令和七年五月二十六日参議院決算委員会及び同年六月九日同委員会)。
そこで、以下政府に対し質問する。
一 在留資格「経営・管理」の要件については、出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令(以下「上陸基準省令」という。)において定められているところ、現行の要件のままでは、移住を主目的とする外国人の流入を防ぐことはできないと考える。
1 上陸基準省令においては、要件の一つとして「資本金の額又は出資の総額が五百万円以上であること」が定められている。しかし、海外では、同種の在留資格を得るためにはるかに高額の資本金が要件とされている国もある。例えば、シンガポールでは最低千シンガポールドル(約千百万円)以上、米国では二十万ドル(約二千九百万円)から三十万ドル(約四千三百万円)、韓国では三億ウォン(約三千二百万円)以上とされている。これらの国と比べて我が国の金額要件は「格安」ではないかとの指摘もあるところ、移住を主目的とした安易な在留資格の取得を防ぐためにも、我が国の金額要件については、米国の金額を念頭に、より適切な水準へと引き上げるべきではないか。
2 移住を主目的として「経営・管理」の在留資格を取得した外国人の中には、我が国において事業の経営・管理を行っていくのに十分な才覚や資質を持たない者が数多く含まれることが想定される。そうした者は、やがては事業に行き詰まり、生計を立てることが困難となり、我が国の公共の負担となる可能性も否定できないが、現行、そのような場合に生活を維持する原資となる預貯金の保有は要件とされていない。海外で同種の在留資格を得る際、例えば、オーストラリアでは純事業資産と個人資産の合計百二十五万オーストラリアドル(約一億二千万円)以上を保有していることが求められるとされている。我が国においても、当面の生活を維持するのに十分な額の預貯金の保有を要件として追加すべきではないか。
3 政府は、「経営・管理」の在留資格は、本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動に対応するもので、そうした活動を英語等の外国語で行うことも想定されるため日本語能力を要件としておらず、また、日本語能力を許可基準とすることについては、高度人材の積極的な受入れという方針に加えて、在留資格全体への影響も踏まえて慎重に検討する必要があるとしている(令和七年五月二十六日参議院決算委員会)。しかしながら、外国人が我が国のルールを理解し、日本人と協調して生活していこうとするのであれば、一定程度の水準の日本語能力は不可欠であると考える。また、日本語を全く話せない外国人を受け入れ続けることにより、一定の外国語のみを解する外国人が固まって集住し、そのコミュニティ内で日本の法令や生活文化を無視したビジネスを完結させるような地域が増加するおそれもある。以上のことから、たとえビジネス上では英語等の外国語で事足りるとしても、我が国のルールを遵守し日本人と協調して生活していく意思や能力を測る観点から、日本語能力要件を新たに設けるべきではないか。
二 令和七年三月十六日付けの産経新聞では、在留資格を取得する目的でペーパーカンパニーが設立された事例や、在留資格を取得した外国人が本来取り組むべき事業に取り組んでいない事例など、「経営・管理」の在留資格が移住目的で悪用されている実態が報じられている。いわゆる入管法上、在留資格に応じた活動を継続して三か月以上行っていない外国人については、その在留資格を取り消すことができるとされているが、その前提として、在留資格に応じた活動を行っていないことが疑われる外国人について十分な調査を行うことが必要である。令和六年度末現在、出入国在留管理庁の定員は六千三百五十八人で、そのうち入国審査官は三千九百九十一人、入国警備官は千六百七十六人であるが、これで在留資格に応じた活動を行っていないことが疑われる外国人を漏れなく把握し、調査を行うための十分な人員体制ではないから、産経新聞に違法の疑いが強い事例を指摘される羽目となっている。出入国在留管理庁、とりわけ入国警備官の大幅な増員を行うか、あるいは、外国人の受入人数を出入国在留管理庁による適切な在留管理が可能な水準に抑制すべきではないか。
三 昨今、「経営・管理」の在留資格を、適当な物件を購入しさえすれば比較的容易に始めることができる民泊経営を行うことで取得する外国人が増えていると聞く。事実、中国のSNSには、「経営・管理」の在留資格を取得し、民泊経営者として日本に移住する方法を解説した投稿があふれているという(令和七年四月十八日読売オンライン)。政府は、いわゆる「移民政策」はとらないという方針を掲げていると承知しているが、このような形での在留資格の取得を認めることが移民の「抜け穴」となっているのではないかと考える。また、我が国で民泊経営を行おうとする外国人に対し安易に在留資格の取得を認めることは、我が国の宿泊業界の発展を不当に阻害する懸念がある。「経営・管理」の在留資格は、我が国の経済に真に利益をもたらす高度人材に限り取得を認めるべきであるが、民泊経営が移民の「抜け穴」となっている現状に鑑み、「経営・管理」の在留資格の取得は当面中止すべきと考えるが、政府の見解を伺いたい。
右質問する。