質問本文情報
令和七年六月十七日提出質問第三四一号
先発医薬品と後発医薬品の薬価逆転及び薬剤費逆転に関する質問主意書
提出者 竹上裕子
先発医薬品と後発医薬品の薬価逆転及び薬剤費逆転に関する質問主意書
我が国の年間医療費は四十八兆円を超え、毎年一兆円増えていく状況である。現役世代の社会保険料負担の高さが問題となっているが、対応策の一つは医療費の抑制である。日本保守党は、減税(酒類を含む食料品消費税ゼロ)政策とともに、医療費の国民負担率の軽減を訴えている。医療費の内訳をたどれば、先発医薬品(長期収載品。以下同じ。)を、値段が安価な後発医薬品に置き換えることで薬剤費を減らし、医療費の伸びを抑制してきたのは明らかであると考える。
国は、診療所・病院には一般名処方加算、薬局には後発医薬品調剤体制加算など診療報酬点数上のあめを与え、患者には薬剤費が下がることをもって、診療報酬施策で後発医薬品処方率を上げてきた。しかしここで重要なのは、先発医薬品と後発医薬品は同等であるとする国の保証とともに、患者の医師や薬剤師への信頼があってこそ後発医薬品利用が進んだことであると考える。
さらには、令和六年十月一日より、医療上の必要性がある場合等を除き、薬の有効性に関係のない使用感や味といった理由で患者が先発医薬品を希望する場合、選定療養の対象として、「特別の料金」(先発医薬品と後発医薬品の薬価差の四分の一相当額)の徴収が開始されている。患者には特別料金を課すむちで、後発品へと誘導する施策が、新たに始まったのである。選定療養の対象となる先発医薬品は、最も薬価の高い後発医薬品より薬価が高いことが要件の一つとなっているが、本年四月一日より適用が開始された、令和七年度薬価改定においては、抗アレルギー薬の「アレグラ錠六十mg」等、一部の先発医薬品については、後発医薬品より薬価が低くなり、選定療養の対象から外れたものもあると承知している。
さらには患者が支払う薬剤費についても問題が起こった。一日薬剤費は、一日薬価を十円単位に四捨五入し、それを十倍する。例えば、先発医薬品アレグラ錠六十mgを例にとると、一日薬価が二錠で五十二・二円(薬剤費五十円)に対し、後発医薬品「フェキソフェナジン塩酸塩錠六十mg「SANIK」」二錠で五十七・四円(薬剤費六十円)となる。この例では、先発医薬品を後発医薬品に換えることで一日の薬剤費が十円、一か月では約三百円も薬剤費が高くなるという前代未聞の逆転現象が起こった。
選定療養の仕組みについて、厚生労働省は、国民の保険料や税金で賄われている医療保険の負担の上昇を抑え、将来にわたって国民皆保険を守っていくため、低薬価の後発医薬品への置換えを進めていくための取組であると説明している。しかし、今回の事例のように先発医薬品と後発医薬品とで薬価が逆転し、支払薬剤費まで逆転してしまうと、施策の目的との整合性が保てず、現場にも混乱を招きかねないと考える。実際、後発医薬品を長年勧めてきた医師、薬剤師にとって、今回の事例は患者に説明のできないことである。「先発医薬品を後発品に換えたら薬剤費が高くなった。医者や薬剤師が嘘をついた。」という苦情に答えようがない。医療現場では患者との信頼感を揺るがしかねない事態となっていると考える。
こうした観点から、次の事項について質問する。
一 政府が、後発医薬品の使用促進を図る理由は、先発医薬品よりも後発医薬品の方が比較的安価であり、患者負担が軽減されるとともに、医療保険財政の持続可能性に資するためという理解でよいか。後発医薬品の使用促進を図る理由について、政府の見解をお示し願いたい。
二 令和七年度薬価改定において、先発医薬品であるアレグラ錠六十mgの薬価が、後発医薬品であるフェキソフェナジン塩酸塩錠六十mg「SANIK」の薬価を下回った理由及びその妥当性について、政府の見解をそれぞれお示し願いたい。
三 後発医薬品の使用促進を図る理由が、先発医薬品よりも後発医薬品の方が安価であり、患者負担が軽減されるとともに、医療保険財政の持続可能性に資するためという理由のみであれば、後発医薬品の支払薬剤費が高くなることは、政府の方針と相容れないのではないかと考えるが、政府の見解をお示し願いたい。
四 選定療養費開始により後発品の使用率が急激に増えたと聞くが、選定療養費開始後の後発医薬品の使用率の推移及び後発医薬品の最終的な使用率の目標はいくらか、それぞれ答えられたい。
五 患者負担を抑えるため、これまで先発医薬品から後発医薬品への切替えを促してきた医師、薬剤師のもとに「先発医薬品を後発品に換えたら薬剤費が高くなった。医者や薬剤師が嘘をついた。」との苦情が寄せられていると耳にする。患者との信頼を揺るがしかねない事態となっていることに対する政府の見解をお示し願いたい。
六 診療報酬改定・薬価改定など医療施策を決めるのは国であるが、その施策の変更説明は医療現場に委ねられる。国・厚生労働省が先頭に立ち、周知に力を注ぐべきと考えるが、政府の見解をお示し願いたい。
七 今回の薬価改定により患者との関係を悪化させた政府は、これ以上の後発品使用を望んでいないように感じるが、政府の見解をお示し願いたい。
右質問する。