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令和七年六月十七日提出
質問第三四三号

「公園まちづくり計画」に基づく、新秩父宮ラグビー場整備、運営事業における権利返還に関する質問主意書

提出者  阿部知子




「公園まちづくり計画」に基づく、新秩父宮ラグビー場整備、運営事業における権利返還に関する質問主意書


 百年の星霜を重ねてきた神宮外苑の杜が、市民や国際社会からの警告の声を無視して、昨年十月二十八日より樹木の強行伐採・移植が開始され、破壊されようとしている。
 神宮外苑再開発計画は、単に東京都と事業者による同計画を強行するための環境影響評価審議会のあり方等にとどまらず、そもそも日本の首都東京にふさわしい景観と、気候変動による温暖化や災害多発の中で真に求められる首都公園の機能とは何かが、広く国民にも提示されるべきものであった。世界の先進都市の中で、社会の富である「都市の杜」の緑を切り倒して、公園面積を狭めている国はどこにもなく、それは国際記念物遺跡会議(イコモス)から出されたヘリテージ・アラート(二〇二三年九月七日)にも厳しく指摘されている。なぜこうした無謀な都市再開発計画が可能となっているのか、そこにはいくつもの守るべき法的構造の破壊があると考える。とりわけ二〇一三年の公園まちづくり制度創設にのっとって進められた秩父宮ラグビー場の一部を都市公園計画法から除外したことに始まり、本年七月に予定される独立行政法人日本スポーツ振興センター(以後JSC)所有の秩父宮ラグビー場と明治神宮所有の神宮球場の土地の権利交換計画認可の申請に至るまでの問題があるため、以下政府に質問する。

一 二〇一三年の公園まちづくり制度の秩父宮ラグビー場によって「未共有区域」の都市計画公園三・四ヘクタールが廃止されたことについて
 未共有地域として都市計画公園から削除された区域は秩父宮ラグビー場の一部であり、未共有とされた定義も曖昧なままであり、試合などの実施時以外は一般の入場ができないから未供用区域とすることの妥当性が問われている。改めて都市公園計画及び緑地に関する都市公園法にのっとって再審査するべきではないか。
二 新秩父宮ラグビー場の建設に伴う問題と最後に残された「保全緑地」が保全できない問題について
 1 新秩父宮ラグビー場は、百年の星霜を刻んできた建国記念文庫の森と、神宮第二球場の樹林帯の伐採を行うことにより建設工事が進められている。この保全緑地の南側直近に約四十八メートルの高さの新ラグビー場が建設されるため、冬場には、ほとんど全域に長時間の日影を落とす計画となっている。保存樹木で最も多い樹種は外苑を象徴するヒトツバタゴ(十七本)とヤエザクラ・シダレザクラ(二十三本)、ケヤキ・ムクノキ(十本)で、いずれも陽光の中で生育する花木や落葉広葉樹であるため、健全な生育は不可能といわざるを得ない。「保全する緑地が、保全できない計画」であることは、文部科学省の所管するJSCの計画として不適切と考えるが、政府の見解を伺いたい。
 2 群衆雪崩のリスクが大きい歩道橋計画について
  新ラグビー場と、南側の高層建築エリア及び新神宮球場は、「南北通路三号」の歩道橋により結ばれている。幅員はわずかに六・五から十メートルであり群衆雪崩のリスクがある。イベント開催時におけるシミュレーションも行われていない。ちなみに、JR千駄ヶ谷駅から新国立競技場を結ぶ歩道橋は立体公園として整備され、幅員は百メートルで、今回の新ラグビー場計画の十倍の幅員で整備が行われた。明石歩道橋やソウル・イテゥオンで発生したような群集雪崩の発生リスクの回避は厳格な審査が必要であり、人命に関わることであるため、政府が計画の見直しを要請すべきと考えるが、見解を伺いたい。
 3 文部科学省の所管するJSCが主導している「歴史的文化的資産の破壊」の問題について
  外苑を構成する歴史的資産として「門」がある。青山門・信濃町門・権田原門・内外苑連絡道路門と並び、霞ヶ丘門は聖徳記念絵画館への入口として極めて重要なものであり、門と一体のスダジイの巨樹とともに、日本イコモスから保存要請が出されてきたが、回答がないまま、伐採が強行された。
  また、新ラグビー場建設地には、外苑のシンボルである「ヒトツバタゴ」二世があり、保存要請が出されていた。ヒトツバタゴ(通称ナンジャモンジャ)は、江戸時代より、この地にあった「外苑の主」ともいえる樹木である。一世は天然記念物に指定されていたが一九三三年に枯死し、二世は外苑・東京大学安田講堂横・小石川植物園等に植樹された。外苑の二世はテニスコート建設の際、絵画館前に移植されたが枯死し、現在のものは三世である。詳細な調査の結果、外苑には秩父宮ラグビー場入口と建国記念文庫の森に、二世のヒトツバタゴが現存していることが明らかになり、現地保存の要請が出されていた。移植は強行され、樹形は改変され、人びとに愛されてきた、雲海のように開花する華麗な姿を見ることはできない状況に陥っていた。したがって、新ラグビー場の設計は、天然記念物に相当する樹木を破壊したものであると考える。文化的資産の保護を旨とする、政府の見解を伺いたい。
三 新宿区道の廃止について
 新宿区では、都の公園まちづくり制度にのっとって「神宮外苑地区で第一種市街地区再開発事業に関する基本協定書」を議会に諮らず締結した。そもそも区道廃止に関する議会軽視は、事業計画決定段階まで遡るが、これも議会に諮られていない。
 近年、こうした市街地再開発の事例は、神宮外苑再開発計画にとどまらず、全国的にも増加していると理解するが、政府は議会重視の立場に立って、事業計画段階から議会の意見が尊重されるよう指針を示すべきと考えるが、如何か。
四 新ラグビー場整備、運営へのPFI導入と事業計画認可前の活用について
 新ラグビー場整備・運営には、PFI手法が導入されたが、市街地開発事業においては、極めて稀なことである。
 二〇二一年九月、新秩父宮ラグビー場(仮称)整備、運営等事業実施方針(JSC)が示され、二〇二二年一月にPFI入札公告が出されたが、これは二〇二二年三月の地区計画、都市計画公園変更決定以前のことである。いわゆるPFI法第五条第二項で「実施方針は、特定事業について、次に掲げる事項を具体的に定めるものとする。」とし、同条第四項で「公共施設等の立地並びに規模及び配置に関する事項」を挙げている。しかし公共施設等の立地並びに規模配置が具体的に決まるのは少なくとも事業計画の認可を待たねばならないと考える。変更決定以前の入札公告に当たるのではないか。加えて、本事業では都市再開発法第九十九条の二に基づき、JSCが特定建設者となり、PFIを活用しているが、特定建築制度は、権利変換計画の認可によって保留並びに権利床が確定して初めて活用できるものである。JSCが権利変換計画の認可前にPFI事業者を決定したことは、違法の疑いがあると理解するが、如何か。
五 PFI事業者の決定によって不透明となる費用負担とリスク検証について
 この度の権利返還においては、JSCの所有する秩父宮ラグビー場の土地と、神宮球場の土地はあくまで、等価交換をされねばならないが、土地の権利返還に先立ってPFI事業者が選定され、今後のコスト等も事業者の企業情報となるため、国民に向け公表されない。果たしてどのような内容で等価交換されるのか。国民からは検証できない事態が発生している。少なくとも国民の財産を毀損することのないような透明性は担保されていないと理解するが如何か。
六 秩父宮ラグビー場はそもそも国有地として当時の文部科学省の独立行政法人であるJSCがこれを管理すると理解するが、その精神はあくまで公共性を第一にアマチュアスポーツの精神に則り使用料並びに入場料は極めて低廉であることなどは今も堅持されるべきではないか。
 その中でPFIにより事業者が利潤を第一にこれを運営していくこと自体の趣旨に相反すると思うが、如何か。
 
 右質問する。

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