質問本文情報
令和七年六月十七日提出質問第三四八号
有料老人ホームやいわゆるホスピス住宅における訪問看護制度を利用した不正請求への対応に関する質問主意書
提出者 酒井なつみ
有料老人ホームやいわゆるホスピス住宅における訪問看護制度を利用した不正請求への対応に関する質問主意書
昨年、神経難病のパーキンソン病に特化したホスピス住宅や、末期がんや難病患者向けの有料老人ホームにおける訪問看護制度を利用した診療報酬の不正請求問題が報道された。
ホスピス住宅、ホスピスホームなどと呼ばれる、がん末期や難病の方を対象とした入居型介護施設(以下「ホスピスホーム」)は、もともと、緩和ケアの担い手がいないという社会的課題の解決のために生まれたものであり、その意義は大きく、患者や家族にとって重要なものであると認識している。
しかしながら、要介護者への訪問看護では通常、介護保険から報酬が支払われ、要介護度によって利用に限度額がある一方で、終末期のがんや一部の難病患者には、報酬の出所が医療保険に切り替わり、患者の負担額に上限があることから、上限額を超えるとそれ以上どれだけサービスを利用しても負担額が変わらないことに着目し、いわゆる「儲かるビジネス」として報酬を最大化する手法が業界に浸透していると、報道等により指摘されている。パーキンソン病に特化したホスピスホームを運営する株式会社サンウェルズの不正請求額は、同社の特別調査委員会の調査結果によれば、総額二十八億四千七百万円だが、報道された不正は氷山の一角に過ぎないとも言われる。
このビジネスモデルを可能にしている要因として、患者や家族が医療費の負担を感じにくいという点が挙げられる。通常は一割から三割の自己負担を求められるが、例えば一月の医療費が高額になった場合は患者負担を一定額にとどめる高額療養費制度があることや、難病の場合は医療費助成を、生活保護受給者であれば自己負担はゼロと、医療費の負担を感じにくく、架空請求が行われたとしても、患者や家族がそれに気付くことは難しい。やはり事業者側の経営者や職員の高い倫理感に加え、制度設計や監査における透明性の確保が求められると考える。
よって、ホスピスホームにおける訪問看護制度を利用した不正請求への対応について、以下、政府に対し質問する。
一 ホスピスホームにおける訪問看護制度を利用した不正請求に対して、厳正かつ早急に対応するべきと考えるが、これまでに政府として行った対応を答えられたい。
二 一において、不正と認定された場合には診療報酬に返還を求めるべきと考えるが、その場合の見解と、現時点までに確認出来た内容及び対処した内容を示されたい。
三 ホスピスホームにおける訪問看護制度を利用した不正請求に関して、政府として認識している課題と再発防止策を示されたい。
四 令和六年十月二十二日付の事務連絡「指定訪問看護の提供に関する取扱方針について」により、「利用者の個別の状況を踏まえずに一律に訪問看護の日数等を定めるといったことや、利用者の居宅への訪問に直接携わっていない指定訪問看護事業者の開設者等が訪問看護の日数等を定めるといったことは認められない」という内容に関して周知・徹底を図ったが、不必要な高頻度・複数人訪問を行うことを防止することに対してどの程度効果があったと認識しているのか、見解を示されたい。また、モニタリング(実態の把握)と実効性を高めた早急な対応(再発防止策)を求めるが、見解を示されたい。
五 前述の問題を踏まえると、訪問看護制度の本来の価値を損なわないように制度設計そのものを整えることが求められる。つまり、今回取り上げた、いわゆる「儲かるビジネス」として着目されたビジネスモデル、具体的には、病院のような施設で施設看護を提供しているにもかかわらず、訪問看護として診療報酬を請求出来るという仕組みを認めるべきではないと考えるが、見解と今後の取組を示されたい。
右質問する。