質問本文情報
令和七年六月十七日提出質問第三五〇号
国民皆歯科健診の導入等に関する質問主意書
提出者 緑川貴士
国民皆歯科健診の導入等に関する質問主意書
健康で質の高い生活を営むためには、口腔の健康が重要である。口の衰えは体の衰えにつながり、歯周病は糖尿病等の生活習慣病と密接に関わっている。また高齢者の死因に多い誤嚥性肺炎の予防や、歯周病や歯の欠損による認知症の誘発等を防ぐためにも、定期的な歯科健診等の機会の確保を通じ、生涯を通じた歯・口腔の健康の実現が必要である。以下政府に対し質問する。
一 令和七年六月に閣議決定された、骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)において「生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)に具体的な取組」が記載されたが、同健診については令和四年の骨太の方針でも具体的な検討を始める旨が明記され、以後三年が経過している。成人以降も切れ目なく歯科健診が行える制度は必要であると考えるが、同健診の実現に向けての現状の課題と対応について伺う。
二 一に関し、労働安全衛生法に基づき、企業に義務付けられている労働者に対する定期健康診断に歯科健診を取り入れる案も検討されてきたと聞く。同診断は、当初は結核、赤痢等の感染症対策を目的とし、明治四十四年制定の工場法により企業の労働者に対して義務付けられた後、労働基準法や労働安全衛生法が制定され、疾病構造の変化とともに同診断の対象範囲や内容が拡大されてきた。歯は「万病の元」といわれ、口腔細菌が生活習慣病や人命に関わる重大な病気の原因となっており、社会全体で口腔保健への意識も高まる中、同診断に歯科健診を追加することが必要であると考える。同診断に組み込むことで同健診の受診率を引き上げ、口腔の健康維持を通じた病気予防により全身の健康を守りやすくなり、長期的に医療費の抑制にもつながると考えるが、政府の見解を伺う。
三 歯科技工士は、養成校や入学希望者の減少、若手の離職率の高さ・高齢化の進行などの問題が生じており、歯科技工士の人数は、免許登録者は増えている一方、業務従事者が減少傾向にあり、特に若年世代の歯科技工士の減少が顕著に進んでいる。政府は、骨太の方針の下「デジタル化等の新技術」の導入推進も掲げ、コンピューター利用設計システム(CAD)等のデジタル技術活用による入れ歯等の製作や、歯科技工士のリモートワークを認めること等の対応策を示している。同技術の活用は、歯科技工士の作業を補完するものとして重要であるが、CADの導入費用は高額であるほか、最終的な仕上げには歯科技工士の繊細な技術力による調整作業が不可欠である。規模の小さな医院でも導入可能な汎用性の高い技術の開発を進めつつ、人による作業と機械化との効果的な分業を模索する必要があると考えるが、政府の見解を伺う。
四 全国保険医団体連合会が令和六年九、十月に全国の歯科技工所を対象に行ったアンケート調査の結果によれば、八割以上で後継者がいないとの回答や、約三割が「五年後はやめていると思う」と回答し、歯科技工士の高齢化が顕著となっている。高度な加工の技術が必要とされる仕事に見合った処遇でないことが後継者不足や離職を招いており、保険点数の引上げや、歯科技工士に適切な技術料を設定する等の早急な対応が求められるが、政府の見解を伺う。
右質問する。