答弁本文情報
令和七年六月二十七日受領答弁第三五〇号
内閣衆質二一七第三五〇号
令和七年六月二十七日
内閣総理大臣 石破 茂
衆議院議長 額賀福志郎 殿
衆議院議員緑川貴士君提出国民皆歯科健診の導入等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員緑川貴士君提出国民皆歯科健診の導入等に関する質問に対する答弁書
一について
お尋ねについては、例えば、就労世代における歯科健診の受診率が低い傾向にあることを踏まえ、「健康増進事業実施要領の一部改正について」(令和六年三月二十二日付け健生発〇三二二第十三号厚生労働省健康・生活衛生局長通知)により、「健康増進事業実施要領」(平成二十年三月三十一日付け健発第〇三三一〇二六号厚生労働省健康局長通知別添)を改正し、市町村(特別区を含む。)が、健康増進法(平成十四年法律第百三号)第十九条の二の規定に基づき実施する健康増進法施行規則(平成十五年厚生労働省令第八十六号)第四条の二第一号に掲げる歯周疾患検診の「対象者」について、「四十歳、五十歳、六十歳及び七十歳」から「二十歳、三十歳、四十歳、五十歳、六十歳及び七十歳」への拡大を図ったところであり、引き続き、必要な取組を検討してまいりたい。
二について
御指摘の「歯科健診」を労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第六十六条の規定に基づく健康診断の項目に追加することに関しては、令和七年一月十七日の労働政策審議会安全衛生分科会において、「今後の労働安全衛生対策について(報告)」の建議が行われ、同建議において、「歯科に関する項目を法定健診項目に追加することに関しては、業務起因性又は業務増悪性、就業上の措置等のエビデンスが乏しいことを踏まえると、困難である。一方で、労働者の口腔の健康の保持・増進は重要である。現在、「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」(昭和六十三年健康保持増進のための指針公示第一号)に「歯と口の健康づくりに向けた口腔保健指導」が盛り込まれているが、現状では十分に実施されているとは言えないことから、今後、好事例を展開する等普及啓発を強化することにより、歯科受診に繋げる方策を検討することが適当である。また、職場の健康診断実施強化月間、全国労働衛生週間の周知等の機会を捉えて、周知を強化することが適当である」とされたところであり、御指摘のように「同診断に歯科健診を追加すること」は現時点で考えていないが、同建議を踏まえ、労働者の口腔の健康の保持・増進のため、労働者を「歯科受診に繋げる方策」等について必要な対応を検討してまいりたい。
また、御指摘の「同診断に組み込むことで同健診の受診率を引き上げ、口腔の健康維持を通じた病気予防により全身の健康を守りやすくなり、長期的に医療費の抑制にもつながる」ことについては、御指摘の「同診断に歯科健診を追加すること」を、現時点では具体的に検討していないことから、お答えすることは困難である。
三について
御指摘の「人による作業と機械化との効果的な分業」の意味するところが必ずしも明らかではないが、歯科技工士の就業者数が減少傾向にある中で、国民に対し、良質な補てつ物、充てん物又は矯正装置を提供する体制を確保する観点から、御指摘のような「技術」を活用しながら歯科技工士の業務効率化を推進することは重要であると考えており、歯科技工士法施行規則(昭和三十年厚生省令第二十三号)第十三条第一項第六号において、歯科技工における「電子計算機を用いた情報処理による、特定人に対する歯科医療の用に供する補てつ物、充てん物又は矯正装置の設計及びこれに付随する業務を行う」ことを可能とした上で、「歯科技工所の開設及び歯科技工所間の連携について」(令和四年三月三十一日付け医政歯発〇三三一第二号厚生労働省医政局歯科保健課長通知)により、都道府県等を通じて歯科技工所等に対して、「歯科医療の用に供する補てつ物等・・・の作成等に用いる機器(中略)については、地域の歯科技工所間で連携し、共同で利用することが可能」と示し、業務の効率化を図っているところである。さらに、令和七年度には、御指摘の「規模の小さな」歯科技工所も含め、「「歯科技工所業務形態改善等に係る調査・検証事業一式」仕様書」によって、「歯科技工所業務形態改善等調査検証事業」を委託して実施し、「歯科技工士の業務形態等の改善計画に基づくモデル事業を検証等すること」を通じて、「全国の歯科技工所の業務形態等の改善に資する適切な方策等」の「調査・検証」を行うこととしているところ、こうした事業も踏まえて、厚生労働省医政局長が参集を求めて開催している、歯科技工に関する学識経験者、実務経験者等により構成される「歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会」において、歯科技工士の業務の在り方等に対する具体的な検討を行っているところである。引き続き、これらの取組を通じて、歯科技工士の業務効率化に関する必要な対策を検討してまいりたい。
四について
お尋ねについては、令和六年二月十四日の中央社会保険医療協議会の答申において、「歯科診療にかかる評価について、・・・医療機関の職員や歯科技工所で従事する者の賃上げを実施すること等の観点から、初再診料や歯冠修復及び欠損補綴物の製作に係る項目について評価を見直す」とされたことを踏まえ、診療報酬の算定方法(平成二十年厚生労働省告示第五十九号)別表第二区分番号M018に規定する「有床義歯」及び同表区分番号A000の1に規定する「歯科初診料」の点数を引き上げるとともに、令和七年一月二十九日の同協議会の答申において、「現下の高齢化の進展等により歯科診療のニーズが増加しているなか、歯科診療所等において、より専門的な業務を行う歯科衛生士及び歯科技工士を確保し、限られた人材で歯科医療を効率的に提供する観点から、歯科衛生士及び歯科技工士の業務に係る評価を見直す」とされたこと等を踏まえ、同表区分番号M003の注1等に規定する「歯科技工士連携加算」の点数を引上げたところであり、引き続き、賃金の動向や令和六年度診療報酬改定による影響等を踏まえ、同協議会において検討してまいりたい。