質問本文情報
令和七年八月一日提出質問第一四号
東京電力福島第一原発事故に伴う「除去土壌」の再生利用に関する質問主意書
提出者 阿部知子
東京電力福島第一原発事故に伴う「除去土壌」の再生利用に関する質問主意書
東京電力福島第一原発事故により発生した汚染土壌(以下、「除去土壌」)については、「中間貯蔵・環境安全事業株式会社法(JESCO法)」第三条第二項で「中間貯蔵開始後三十年以内に、福島県外で最終処分を完了する」と定められ、二〇四五年が期限とされている。二〇二五年時点、中間貯蔵施設(双葉町、大熊町)における保管量は東京ドーム約十一杯分に及ぶ。
このような中、環境省は二〇二五年二月十五日まで、「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案等」(以下、省令案等)に関する意見募集(パブリックコメント)を実施した。これに関連し、以下質問する。
一 「除去土壌」の「復興再生利用」基準について
政府は、「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(特措法)」第一条において、「事故由来放射性物質による環境の汚染が人の健康又は生活環境に及ぼす影響を速やかに低減することを目的」としている。
しかし、「除去土壌」の「再生利用」における放射性物質の濃度基準について、環境省は二〇一六年以来、「再生資材化した除去土壌の安全な利用に係る基本的考え方について」を示し、原子炉等規制法で定めるクリアランスレベル(放射性セシウム百Bq/kg)を適用せず、省令案等で八千Bq/kgと定めようとしている。
この基準は、低レベル放射性廃棄物の基準の八十倍に相当し、ダブルスタンダードであると指摘されており、規制緩和を意味し、特措法の目的に反するのではないか。
二 「復興再生利用」の定義について、環境省は省令案等において、「復興再生利用」という造語を盛り込んだ。
1 環境省はこれまで、「除去土壌の再生利用」は特措法第四十一条第一項の「処分」に含まれるとの説明を行ってきたが、どのような経緯で「復興再生利用」という言葉に置き換えられたのか。
2 「復興再生利用」と「再生利用」はどのように異なるのか。
3 「復興再生利用」は「最終処分」と実際には、何がどう異なるのか。
三 「福島県外での最終処分」との整合性について
JESCO法では中間貯蔵施設に保管されている除去土壌を「福島県外で最終処分を行う」と規定されている。
1 省令案等では福島県内での「復興再生利用」が可能とされている。これはJESCO法の「福島県外で最終処分」との整合性を欠くのではないか。
2 環境省が二〇一六年に策定した「再生資材化した除去土壌の安全な利用に係る基本的考え方について」で、「必要な規模の最終処分場の確保が困難である」として、再生利用する考えが打ち出された。しかし、省令案等では福島県外でも福島県外の市町村が除去した汚染土を当該市町村で再生利用することが可能となった。その法的根拠はどこにあるのか。
3 福島県双葉町の伊澤史朗町長は二〇二五年二月二十四日の「原子力災害からの福島復興再生協議会」において、浅尾環境大臣と非公開で面談し、「まずは(中間貯蔵された汚染土壌について)福島県内で再生利用に取り組む必要がある」と発言した。「再生利用」なら、元の自治体に戻すことも含めて、県内でも良いという了承は、各自治体にどうとったのか。そして、それらは、各自治体ごとの判断によるものなのか。
四 パブリックコメントの適正性について、行政手続法では、パブリックコメントは「国の行政機関が政令や省令等を定める際に、事前に広く一般から意見を募り、行政運営の公正さと透明性を確保すること」を目的としている。しかし、省令案等のパブリックコメントは「意見募集の対象範囲や内容が分かりにくい」との指摘がある。
1 今回実施のパブリックコメントは、意見募集の内容がわかりにくいという指摘もあったが、行政手続法の趣旨に適合していたと考えるか。
2 透明性を確保するため、パブリックコメントにとどまらず、全国各地で公聴会を実施し、国民の意見を広く聴取するべきではないか。
五 住民説明と社会的影響について、環境省はこれまでも、「除去土壌」の再生利用実証事業を、十分な住民説明がないまま埼玉県所沢市や東京都新宿区で進めようとし、批判を受けてきた。
1 「復興再生利用」という用語の使用によって、異論や懸念を示す者に対し復興に反対する「風評加害」とのレッテルを貼り、社会の分断を招く可能性があるのではないか。
2 二〇二五年二月十四日に開催された「放射能の拡散につながる「除去土壌の再生利用」問題に関する緊急市民公聴会」では、「復興再生利用」の定義が曖昧であるとの指摘があった。環境省はこの指摘をどのように受け止めるか。
3 国際原子力機関IAEAの報告書では「再生利用」と「最終処分」は明確に区別すべきとされているが、環境省の認識はどうか。
六 作業員の被ばく管理について、省令案等には、作業員の被ばくを守る規定がない。
1 環境省はガイドラインを作るというが、省令案等によれば、環境省は復興再生利用の実施者であり、同時に来年度からは規制機能を省内に設置するという規制者でもある。実施者である環境省がガイドラインに違反した場合、どのような強制力をもって、実施者である環境省を取り締まるのか。
2 作業員が他の被ばく労働にも就労する場合の積算記録を誰がどう管理しうるのか。
右質問する。