答弁本文情報
令和七年八月十五日受領答弁第一四号
内閣衆質二一八第一四号
令和七年八月十五日
内閣総理大臣 石破 茂
衆議院議長 額賀福志郎 殿
衆議院議員阿部知子君提出東京電力福島第一原発事故に伴う「除去土壌」の再生利用に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員阿部知子君提出東京電力福島第一原発事故に伴う「除去土壌」の再生利用に関する質問に対する答弁書
一について
御指摘の「クリアランスレベル」については、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第六十一条の二第一項の規定に基づき、工場等において用いた資材その他の物に含まれる放射性物質についての放射能濃度が放射線による障害の防止のための措置を必要としないものとして定められた基準である。他方で、復興再生利用(平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法施行規則(平成二十三年環境省令第三十三号。以下「放射性物質汚染対処特措法施行規則」という。)第五十八条の四に定める復興再生利用をいう。以下同じ。)の基準における除去土壌(平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成二十三年法律第百十号。以下「放射性物質汚染対処特措法」という。)第二条第四項に規定する除去土壌をいう。以下同じ。)の放射能濃度は、放射性物質汚染対処特措法第四十一条第一項の規定に基づき、復興再生利用を行う者が適切な管理の下で利用する除去土壌の放射能濃度として、放射性物質汚染対処特措法施行規則第五十八条の四第一号ホの規定に基づき「事故由来放射性物質についての放射能濃度を環境大臣が定める方法により調査した結果、復興再生利用によって受ける一般公衆の実効線量が一年間につき一ミリシーベルト以下となるものとして環境大臣が定める放射能濃度」である。このように根拠となる法律や前提となる考え方が異なるものであり、また、復興再生利用については、放射性物質汚染対処特措法第一条の目的に沿って、当該基準の下に進めているところであり、「規制緩和を意味し、特措法の目的に反する」との御指摘は当たらない。
二の1及び2について
環境省において、従来、御指摘の「再生利用」という表現を用いていたところ、これに代わるものとして、令和六年十月二十三日の放射線審議会への諮問及び同審議会の答申を経て、放射性物質汚染対処特措法施行規則第五十八条の四において、「事故による災害からの復興に資することを目的として、再生資材化(除去土壌について、用途に応じた必要な処理をすることにより、盛土、埋立て又は充塡の用に供する資材として利用することができる状態にする行為をいう。)した除去土壌を適切な管理の下で利用すること(維持管理することを含む。)」と定義した復興再生利用を規定したものであり、以降、復興再生利用という表現を用いているものである。
二の3について
復興再生利用は、一について及び二の1及び2についてで述べたとおり、放射性物質汚染対処特措法施行規則第五十八条の四の規定に基づき実施されるものである。また、御指摘の「最終処分」は福島県内の除去土壌の最終処分と理解した上で、中間貯蔵・環境安全事業株式会社法(平成十五年法律第四十四号。以下「JESCO法」という。)第二条第三項において、「「最終処分」とは、福島県内除去土壌等について除去土壌等処理基準(放射性物質汚染対処特措法・・・第四十一条第一項の規定に基づき福島県内除去土壌等の処理に当たり従うこととされている基準をいう。・・・)に従って行われる最終的な処分をいう。」とされており、例えば、放射性物質汚染対処特措法施行規則第五十八条の三の規定に基づき実施される埋立処分があるところ、復興再生利用については、一についてで述べたとおり、除去土壌の放射能濃度の基準がある一方、埋立処分については、対象となる除去土壌の放射能濃度の基準について定めがないなどの違いがある。
三の1について
御指摘の「省令案等」は平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令(令和七年環境省令第九号。以下「改正省令」という。)による改正後の放射性物質汚染対処特措法施行規則等と理解した上で、JESCO法第三条第二項の規定に基づき、福島県内の除去土壌等について「中間貯蔵開始後三十年以内に、福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずるものとする。」とされており、これは当該期間、福島県内で復興再生利用を行うことを妨げるものではないことから、「整合性を欠く」との御指摘は当たらない。
三の2について
御指摘の「省令案」は改正省令による改正後の放射性物質汚染対処特措法施行規則と理解した上で、お尋ねについては、放射性物質汚染対処特措法第四十一条第一項においては、「除去土壌の収集、運搬、保管又は処分」について、その実施地域を福島県内に限定して定めていないところ、復興再生利用を規定する放射性物質汚染対処特措法施行規則第五十八条の四においても、福島県内で発生した除去土壌と福島県外で発生した除去土壌の性質が異なるものではないことも踏まえ、その実施地域を限定して定めていない。
三の3について
お尋ねについては、地方自治体の首長の発言に関することであり、また、「「再生利用」なら、元の自治体に戻すことも含めて、県内でも良いという了承は、各自治体にどうとったのか。」の趣旨が明らかではないことから、お答えすることは困難である。
四の1について
令和七年一月十七日から同年二月十五日までにかけて実施した「「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案等」に対する意見募集(パブリックコメント)について」は、概要資料等をお示ししつつ、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三十九条第二項に規定する「具体的かつ明確な内容のもの」としており、御指摘の「行政手続法の趣旨」に即して行ったものであると考えている。
四の2について
お尋ねの趣旨が明らかではないが、御指摘の「パブリックコメント」を経て、改正省令により省令を改正し、令和七年四月一日から施行しているところ、着実に取組を進めていくこととしており、引き続き、必要な周知に努めてまいりたい。
五の1及び2について
御指摘の「社会の分断を招く可能性」の意味するところが必ずしも明らかではないため、「可能性」の有無について一概にお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、復興再生利用の法令上の定義については、二の1及び2についてで述べたとおりであるところ、御指摘のような「「復興再生利用」という用語の使用によって、異論や懸念を示す者に対し復興に反対する「風評加害」とのレッテルを貼」る意図はない。
五の3について
お尋ねの「国際原子力機関IAEAの報告書では「再生利用」と「最終処分」は明確に区別すべきとされている」の具体的に意味するところが明らかではないが、いずれにせよ、二の3についてで述べたとおり、我が国の法令上、復興再生利用と最終処分はそれぞれ別に定義されているものである。なお、国際原子力機関が令和六年九月に公表した「除去土壌の再生利用等に関する国際原子力機関(IAEA)専門家会合」の「最終報告書」において、「再生利用及び最終処分に関する取組や活動がIAEAの安全基準に合致している」(仮訳)とされているところである。
六の1について
御指摘の「ガイドライン」は令和七年三月に環境省が策定した「復興再生利用に係るガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)と、また、御指摘の「省令案等」は改正省令等と理解した上で、ガイドラインは復興再生利用の基準に係る解説や復興再生利用の実施に当たっての留意事項等を取りまとめたものであり、「強制力をもって」、同省を含め、「復興再生利用の実施者」を取り締まるものではない。
六の2について
ガイドラインにおいては、「復興再生利用で用いる再生資材化した除去土壌の放射能濃度は、「八千ベクレル毎キログラム以下」であり、電離則等による放射線障害防止措置の適用外の放射能濃度(一万ベクレル毎キログラム以下)となる。このため、施工や万一の災害時等の復旧に当たり、特別な防護措置を要することなく、通常の作業の範囲内で対応できる。(中略)電離則等による放射線障害防止措置の適用は受けないが、除染実施者は・・・防護の最適化の観点から、作業者の更なる追加被ばく線量の低減について検討を行う。(中略)除染実施者は作業者に対して、施工中の空間線量率の測定により作業環境における放射線量を把握することや、作業者の代表者が個人線量計を携帯することにより、作業者の追加被ばく線量を把握することが可能であることを説明することも考えられる。・・・除染実施者は、復興再生利用実施前(施工前)にバックグラウンド値の把握のための空間線量率の測定を行い、施工時における放射線量の測定結果等を踏まえて作業者の追加被ばく線量を予測し、作業者の追加被ばく線量が年間一ミリシーベルト以下となることを確認する」等としているところである。その上で、お尋ねについては、復興再生利用に係る業務が、東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則(平成二十三年厚生労働省令第百五十二号。以下「除染電離則」という。)第二条第八項に規定する特定線量下業務として、「除染特別地域等内における厚生労働大臣が定める方法によって求める平均空間線量率・・・が事故由来放射性物質により二・五マイクロシーベルト毎時を超える場所において事業者が行う除染等業務その他の労働安全衛生法施行令別表第二に掲げる業務以外の業務」に該当する場合は、当該業務に従事する者の被ばく線量が管理されることとなるところ、当該者が除染等業務(除染電離則第二条第七項に規定する除染等業務をいう。以下同じ。)又は放射線業務(電離放射線障害防止規則(昭和四十七年労働省令第四十一号)第二条第三項に規定する放射線業務をいう。以下同じ。)にも従事する場合には、除染電離則第二十九条第一項又は第三項の規定に基づき、除染等業務又は放射線業務に従事する際に受けた線量を特定線量下業務により受ける線量とみなした上で、除染電離則第二十五条の二に定める被ばく線量の限度を超えないように、被ばく線量が管理されることとなる。