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令和七年十一月十日提出
質問第五七号

創作者主義の理念に基づく著作者の権利保護の在り方に関する質問主意書

提出者  八幡 愛




創作者主義の理念に基づく著作者の権利保護の在り方に関する質問主意書


 日本の著作権法は、ドイツ法及びフランス法を範とする大陸法型の体系を採用し、著作者人格権と著作財産権の二層構造により創作の人格的側面と財産的側面の双方を保護する理念を採るとともに、その権利は、著作者が創作したときに発生し、著作者本人に帰属することを原則としている。しかし現実の運用においては、制作会社や放送局、広告代理店などが著作者たる地位や著作権の包括譲渡・放棄を契約で求めることが常態化しており、下請構造の中で弱い立場にあるクリエイターや中小制作スタジオが実質的に権利を放棄させられていると承知している。このような慣行は、米国における「ワーク・メイド・フォー・ハイヤー(職務著作条項)」制度に近似しており、本来の大陸法的理念である「創作者主義」とは大きく乖離していると考える。
 著作権法第十五条のいわゆる職務著作は法人等の指示に基づき法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物でなければならない等の要件があるにもかかわらず、現実には外部委託やフリーランスにまで拡大して解釈される傾向があると承知している。さらに、政府による取引慣行の是正も十分とは言えず、著作者の権利の保護という著作権法の理念が形骸化しているとの指摘が広く存在する。
 著作者の権利の保護を欠いた現状は、クリエイター個人の経済的・人格的自立を阻み、ひいては日本のコンテンツ産業全体の国際競争力を弱める要因ともなっていると考える。したがって政府は、この実態を直視し、法の原則と実態の乖離を是正する責務を負うものと考える。
 以上を踏まえ、政府に質問する。

一 政府は、日本の著作権法が形式的には大陸法系の体系を採用しながら、実態としては米国型の「ワーク・メイド・フォー・ハイヤー」的運用が広く行われているとの指摘を承知しているか。
二 発注元が、著作権の包括譲渡や著作権の放棄を契約上求める行為が、クリエイターや中小制作会社に対して優越的地位の濫用となり得ることを政府は認識しているか。
三 現行著作権法第十五条のいわゆる職務著作に係る規定が、フリーランスや外部委託の著作物まで実質的に適用されているとの実態について、政府は認識しているか。併せて、そのような運用が条文趣旨に反するとの見解を有するか、政府の見解を示されたい。
四 フランスなどにおいては、著作財産権の譲渡や利用許諾が目的・期間・地域などの明確な限定のもとでしか有効と認められない一方、日本では著作権の包括譲渡要求や著作者人格権の不行使特約が慣例化している。この点について、日本法が他国の大陸法系諸国と比べて著作者保護の観点から劣後しているとの評価を政府は認めるか。
五 実質的に対等でない当事者間の関係に起因して、著作者の権利が実質的に保護されていない現状を是正するため、政府はなんらかの制度的対応(立法・通達・ガイドライン等)を行う予定があるか、あるならば具体的に示されたい。

 右質問する。

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