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令和八年六月二十三日提出
質問第二〇号

円借款で建造されたモロッコ王国・国立漁業研究所の海洋・漁業調査船が西サハラの海域で公然と調査を行っている件に関する質問主意書

提出者  山本ジョージ




円借款で建造されたモロッコ王国・国立漁業研究所の海洋・漁業調査船が西サハラの海域で公然と調査を行っている件に関する質問主意書


 北アフリカ大西洋岸に位置する旧スペイン領西サハラは非植民地化過程で紛争となった地域である。モロッコと西サハラ独立派組織(ポリサリオ戦線)の紛争が五十年以上続いている。
 一九七五年、モロッコ王国(以下モロッコ)は西サハラを侵攻し、西サハラの領土の八割を占領した。ポリサリオ戦線は自決権の行使を求めている。ポリサリオ戦線は一九七六年二月、「サハラ・アラブ民主共和国」の樹立を宣言し、隣国アルジェリアの難民キャンプを拠点に外交活動を続けている。国連安保理は一九九一年に西サハラにおける住民投票の実施を決定した。しかし、モロッコのサボタージュがあり、欧米諸国もモロッコに圧力をかけることがないため、住民投票は実現していない。日本は、モロッコによる西サハラ併合もポリサリオ戦線の独立宣言も承認せず、国連による仲介努力を支持するという立場をとっている。
 日本は対モロッコ水産部門への支援では筆頭ドナーである。問題は、日本の対モロッコ水産部門支援の中に西サハラ占領地(海域を含む)に関わるものがあり、そうした支援の妥当性が問われるということである。つまり、日本の援助が西サハラ占領地で進められる漁業・水産業開発に使われていないか、ひいてはモロッコによる西サハラ併合という、力による現状変更にお墨付きを与えていないかが問われるのである。この場合、モロッコ全体の水揚げの約半分が西サハラの漁港からのものであることを考えると、西サハラがモロッコの漁業・水産業に占める地位は明らかで、モロッコ政府がその部門への海外からの支援を西サハラの海域に適用するであろうことは想像に難くない。これに関連して、日本のモロッコ漁業・水産部門への支援が、モロッコの西サハラ占領開始後に始まり、モロッコが西サハラでの漁業発展に本腰を入れるのと並行して展開していることも注目される。
 ここでは、日本のODAが西サハラと関係する事例として、円借款で建造され、モロッコ王国・国立漁業研究所(INRH)に配置された海洋・漁業調査船(アル・ハッサン・アル・マラケシ号)を取り上げたい。この支援事業は、これまで日本が同研究所に無償で供与してきた底魚調査船(シャリフ・アル・イドリッシ号:一九八五年)、小型浮魚調査船(アル・アミール・ムーライ・アブダッラー号:一九九九年)に続くものとして、最新機材を装備した調査船を有償で提供したものである。承諾予算は約五十三億円で、豊田通商とそのグループ会社CFAOが二〇一八年に受注し、船は三井E&S造船の岡山玉野艦船工場で建造され、二〇二〇年に引き渡された。

一 西サハラ(旧スペイン領)は非植民地化過程にある非自治地域である。非自治地域の資源利用は、「天然資源に対する恒久主権」という国際原則により、非自治地域の場合も含め、当該人民の承諾の上、当該人民の発展に資するかたちで行われなければならない。ここではとくに、アフリカ有数の漁場を誇る西サハラ海域の漁業資源の取扱いが問題となる。日本政府は西サハラをモロッコ領と認めていない。そうであれば、モロッコへのODA、とりわけその漁業・水産業部門へのODAが西サハラ及びその海域で用いられないよう、日本としては配慮しなければならないのではないか。政府の見解を求める。
二 一九九〇年代、JICAの報告書には西サハラをモロッコの一部とする記述や地図が使われていた。二〇〇〇年代になるとそうした地図は使われなくなったが、肝心の漁業部門の記述においてモロッコの水揚量を西サハラの港(ラユーンとダーフラ)の水揚げを含めたかたちで提示するなど、依然として西サハラをモロッコの一部として扱っている。西サハラの水揚量を除外すれば、モロッコ全体の水揚量は半減する。また、別な報告書では、モロッコの国土面積を、西サハラを除いて四十四万六千平方キロとしているにもかかわらず、その海岸線は三千五百kmと西サハラの海岸線を含む長さを書いている(ちなみに西サハラを含まないモロッコの海岸線は約千八百km)。
 こうした不整合について、政府の見解を求めるとともに、是正を求めたい。
三 モロッコ王国・国立漁業研究所が、日本からの円借款(約五十三億円)を用いて建造した海洋・漁業調査船(アル・ハッサン・アル・マラケシ号、二〇二〇年十二月に引渡し)を使って西サハラ占領地の海域で堂々と調査を行い、それに基づき研究し、それを西サハラでの漁業振興に役立てているのは、問題ではないか。国立漁業研究所は西サハラ占領地のラユーンとダーフラの二箇所に地域調査センターを持ち、西サハラの海域を航行しているのは問題ではないか。同研究所は一九八〇年代から西サハラの海域のタコについて調査を行っている。一九八〇年代といえば、日本が一九八六年に無償援助で同研究所に底魚調査船シャリフ・アル・イドリッシ号を供与した頃である(タコは底魚に分類される)。そして当時の同研究所の調査結果がモロッコ人研究者の研究に利用されている。つまり、同研究所はモロッコによる占領する西サハラ海域の資源利用を目的の一つにしており、海洋・漁業調査船を含む同研究所への日本のODAはそれを後押ししてきたと言えないか。政府の見解を求める。

 右質問する。

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