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令和八年七月一日提出
質問第二五号

留学生の妊娠・出産を契機とする退学等の実態把握に関する第三回質問主意書

提出者  早稲田ゆき




留学生の妊娠・出産を契機とする退学等の実態把握に関する第三回質問主意書


 外国人留学生が妊娠又は出産を理由又は契機として、退学、除籍、休学、転校・転学、帰国勧奨、在留資格更新困難、相談先につながれない孤立等に直面する事例が指摘されている。
 政府は、二〇二六年六月十六日付け内閣衆質二二一第一六号答弁書において、留学生が妊娠又は出産した事実のみをもって、本人の意思に反して退学、休学、転校・転学又は帰国を求めることは適切ではないとの見解を示した。また、妊娠又は出産した事実のみをもって直ちに在留資格「留学」を失うものではなく、在留期間更新又は在留資格変更の可否は個別の事情に応じて判断される旨の見解を示した。
 さらに、二〇二六年六月三十日付け内閣衆質二二一第一九号答弁書において、政府は、大学、短期大学及び高等専門学校に対して毎月求めている外国人留学生の退学者、除籍者及び所在不明者等に係る定期報告において、「退学又は除籍の理由」の一つとして「本人の妊娠・出産」を新たに追加したことを明らかにした。一方で、日本語教育機関又は認定日本語教育機関に在籍する外国人留学生について、退学、除籍、休学、転校・転学又は所在不明等の理由として「妊娠・出産」を報告項目に追加することは、現時点では考えていない旨を答弁した。
 しかし、独立行政法人日本学生支援機構の二〇二五年度外国人留学生在籍状況調査結果によれば、二〇二五年五月一日現在の外国人留学生総数は四十万八千六十九人であり、このうち日本語教育機関に在籍する留学生は十四万百七十四人である。日本語教育機関に在籍する留学生は、外国人留学生全体の約三十四・三パーセント、すなわち三分の一を超えている(注一)。
 法務省の「日本語教育機関の告示基準解釈指針」では、合理的な理由なく生徒の意に反して退学等させる行為は人権侵害行為に当たるとされ、特に、妊娠・出産等を直接の理由とした退学強制、すなわちマタニティハラスメントは、人権侵害行為の例として明記されている(注二)。また、文部科学省の通知においても、妊娠した生徒に学業継続の意思がある場合には、安易に退学処分や事実上の退学勧告等を行わず、休学、転学等、学業を継続するための方策について必要な情報提供を行うことが示されている(注三)。
 公開文書で確認できる範囲でも、日本語教育機関の募集要項、学生募集要項、事前通知・同意書等において、妊娠を納入金不返還、退学又は帰国と結びつける記載が複数確認される。具体的には、SAELU学院「募集要項」では、「返金しない場合」の例として妊娠を挙げている(注四)。KSN日本語「留学生募集要項」では、「以下の場合には、退学届けを提出した場合でも返金しません」とした上で、妊娠を列挙している(注五)。SBC姫路日本語学院「学生募集要項」でも、「返金しない場合」として、妊娠を列挙している(注六)。これら三件はいずれも、学納金返還不可の理由として妊娠を明記している例である。
 また、エイシン長岡日本語学校「事前通知・同意書」には、「日本語学校在学中に妊娠が発覚した場合、学業と出産・育児等との両立が難しいため、一旦退学・帰国」と記載されている(注七)。同文書は返金規定そのものではないが、妊娠の発覚を退学・帰国につなげる文書であり、妊娠を契機とする退学強制又は帰国勧奨の問題を示す資料として重要である。
 本質問において「募集要項等」とは、日本語教育機関又は認定日本語教育機関が入学希望者又は在籍生に対して公開又は配布する学生募集要項、入学案内、誓約書、同意書、学費返還規程、納入金規程、事前通知書その他これらに類する文書をいう。
 また、本質問において「妊娠等を理由とする不利益な記載」とは、主として妊娠又は出産を理由又は契機として、納入金を返金しない、退学若しくは休学を求める、転校・転学を求める、在籍継続を認めない、進級又は卒業を認めない、帰国を求める等の取扱いを定める記載をいう。
 以上を踏まえ、以下質問する。

一 告示日本語教育機関及び認定日本語教育機関における不利益記載の確認について
 1 法務省の「日本語教育機関の告示基準解釈指針」において、妊娠・出産等を直接の理由とした退学強制、すなわちマタニティハラスメントは、人権侵害行為の例として明記されているとの理解でよいか。政府の見解を示されたい。
 2 本質問で示した注四から注七までの募集要項等について、出入国在留管理庁又は文部科学省は、当該文書の記載内容、現在の掲載状況、当該記載の趣旨及び実際の運用状況を確認するか。確認する場合は、担当する行政機関、確認する項目及び確認の時期を示されたい。確認しない場合は、その理由を示されたい。
 3 告示日本語教育機関又は認定日本語教育機関の募集要項等に、妊娠を理由又は契機として、納入金を返金しない、退学を求める、休学を求める、転校・転学を求める、在籍継続を認めない、進級又は卒業を認めない、帰国を求める等の記載があることを出入国在留管理庁又は文部科学省が把握した場合、当該機関に対し、少なくとも以下の事項を確認する必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。
  @ 当該記載の趣旨
  A 当該記載の現在の運用状況
  B 当該記載に基づき、妊娠を理由又は契機として納入金を返還しなかった事例の有無
  C 当該記載に基づき、妊娠を理由又は契機として退学、休学、転校・転学又は帰国を求めた事例の有無
  D 妊娠した留学生本人の意思確認の方法
  E 学業継続を希望する場合の休学・復学・転校・転学等の選択肢の説明の有無
  F 医療機関、地方公共団体、出入国在留管理庁、法的支援機関又は民間支援団体への接続の有無
 4 前問3に掲げる事項について確認することは、個別契約上の返金義務の有無を判断するものではなく、告示日本語教育機関及び認定日本語教育機関における人権侵害行為又は不適切な取扱いの有無を把握するための行政上の確認である。このような確認を行うことは、出入国在留管理庁又は文部科学省の所掌及び権限の範囲内で可能であるとの理解でよいか。政府の見解を示されたい。
 5 妊娠を理由又は契機として入学を辞退した入学希望者又は退学した留学生に対し、既納の学納金を返還したか否かは、当該募集要項等の記載が妊娠を理由とする経済的不利益として運用されているかを把握する上で重要な確認事項であると考えるが、政府の見解を示されたい。
 6 日本語教育機関が、募集要項等において、妊娠を理由又は契機として納入金を返金しない旨を定め、当該記載に基づき、妊娠を理由又は契機として入学を辞退した入学希望者又は退学した留学生に対し既納の学納金を返還しなかった場合、当該取扱いは、直ちに個別契約上の効力を判断するものではないとしても、妊娠を理由とする経済的不利益として、少なくとも出入国在留管理庁又は文部科学省による確認、助言、指導又は改善の求めの対象となり得るとの理解でよいか。政府の見解を示されたい。
二 妊娠を理由又は契機とする退学・帰国記載への対応について
 1 告示日本語教育機関又は認定日本語教育機関の募集要項等において、「日本語学校在学中に妊娠が発覚した場合、学業と出産・育児等との両立が難しいため、一旦退学・帰国」とする趣旨の記載があることを出入国在留管理庁又は文部科学省が把握した場合、当該記載は、留学生が妊娠又は出産した事実のみをもって、本人の意思に反して退学、休学、転校・転学又は帰国を求めることは適切ではないとする政府見解との整合性を確認すべき記載であるとの理解でよいか。政府の見解を示されたい。
 2 前問1のような記載を把握した場合、出入国在留管理庁又は文部科学省は、当該機関に対し、当該記載の削除又は修正、及び妊娠した留学生が学業継続を希望する場合の支援方針の明示を求めることができるか。求めることができないとする場合は、その理由を示されたい。
 3 妊娠した留学生に対し、本人の意思確認を十分に行わず、休学・復学・転校・転学、医療機関、地方公共団体、出入国在留管理庁、法的支援機関又は民間支援団体への接続に関する情報提供を行わないまま、退学又は帰国を求めた場合には、個別具体の事情を踏まえるとしても、少なくとも人権侵害行為又は不適切な取扱いに該当し得るとの理解でよいか。政府の見解を示されたい。
三 確認・指導の手順について
 1 告示日本語教育機関について、出入国在留管理庁が、募集要項等における妊娠を理由又は契機とする不利益な記載又は運用を把握した場合、どの部局が、どのような手順で、当該機関への確認、助言、指導又は改善の求めを行うのか。現行制度上の手順を示されたい。
 2 認定日本語教育機関について、文部科学省が、募集要項等における妊娠を理由又は契機とする不利益な記載又は運用を把握した場合、どの部局が、どのような手順で、当該機関への確認、助言、指導又は改善の求めを行うのか。現行制度上の手順を示されたい。
 3 告示日本語教育機関が、妊娠を理由又は契機とする不利益な記載又は運用について、必要な助言、指導又は改善の求めにもかかわらず是正しない場合、当該機関が日本語教育機関の告示基準に適合しているかを確認し、必要に応じて告示抹消等を含む対応の検討対象となり得るとの理解でよいか。政府の見解を示されたい。
 4 認定日本語教育機関が、妊娠を理由又は契機とする不利益な記載又は運用について、必要な助言、指導又は改善の求めにもかかわらず是正しない場合、当該機関が認定基準に適合しているかを確認し、必要に応じて認定取消し等を含む対応の検討対象となり得るとの理解でよいか。政府の見解を示されたい。
四 告示日本語教育機関及び認定日本語教育機関への周知について
 1 出入国在留管理庁及び文部科学省は、告示日本語教育機関及び認定日本語教育機関に対し、募集要項等において、妊娠又は出産を理由又は契機として、納入金不返還、退学、休学、転校・転学、在籍継続の否定、進級又は卒業の否定、帰国等を一律に定める記載を置くことは不適切である旨を、通知、事務連絡、Q&A、説明会資料等により周知する必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。
 2 前問1の周知を行う場合は、実施する行政機関、対象機関、周知方法及び実施時期を示されたい。周知しない場合は、その理由を示されたい。
 3 周知に当たっては、少なくとも、@妊娠又は出産した事実のみをもって本人の意思に反して退学、休学、転校・転学又は帰国を求めることは適切ではないこと、A妊娠又は出産した事実のみをもって直ちに在留資格「留学」を失うものではないこと、B本人が学業継続を希望する場合には、休学・復学・転校・転学、在留資格手続、医療機関、地方公共団体、法的支援機関又は民間支援団体への接続について情報提供を行うこと、C妊娠を理由又は契機とする納入金不返還等の経済的不利益が不適切な取扱いとなり得ることを明示すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
五 注四から注七までの文書への具体的対応について
 1 本質問で示した注四から注七までの募集要項等について、出入国在留管理庁又は文部科学省は、質問主意書への答弁時点までに、当該文書の記載内容及び現在の掲載状況を確認するか。確認しない場合は、その理由を示されたい。
 2 本質問で示した注四から注七までの募集要項等について、出入国在留管理庁又は文部科学省は、当該機関に対し、当該記載の趣旨、現在の運用状況、当該記載に基づく退学、休学、帰国又は納入金不返還の事例の有無を確認するか。確認する場合は、確認する行政機関及び確認時期を示されたい。確認しない場合は、その理由を示されたい。
 3 本質問で示した注四から注七までの募集要項等について、出入国在留管理庁又は文部科学省が確認した結果、妊娠を理由又は契機として納入金不返還、退学、休学、転校・転学又は帰国を一律に定める記載又は運用が確認された場合、当該機関に対し、当該記載の削除又は修正、及び妊娠した留学生への学業継続支援方針の明示を求めるか。求めない場合は、その理由を示されたい。
注一 独立行政法人日本学生支援機構「二〇二五年度外国人留学生在籍状況調査結果」https://www.studyinjapan.go.jp/ja/statistics/enrollment/data/2605291000.html
注二 法務省「日本語教育機関の告示基準解釈指針」https://www.moj.go.jp/isa/content/930005393.pdf/$File/930005393.pdf
注三 文部科学省「公立の高等学校における妊娠を理由とした退学等に係る実態把握の結果等を踏まえた妊娠した生徒への対応等について(通知)」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1411217.htm
注四 SAELU学院「募集要項」(同学院ウェブサイト掲載、二〇二六年六月三十日閲覧、URL:https://saelu.net/jp/download/%E5%8B%9F%E9%9B%86%E8%A6%81%E9%A0%85.pdf/$File/%E5%8B%9F%E9%9B%86%E8%A6%81%E9%A0%85.pdf)。該当箇所には、返金しない場合として、自己都合による退学の例に妊娠を挙げる趣旨の記載がある。
注五 KSN日本語「留学生募集要項」(同校ウェブサイト掲載、二〇二六年六月三十日閲覧、URL:https://ksn-japanese.jp/wp/wp-content/uploads/2021/03/%E5%AD%A6%E7%94%9F%E5%8B%9F%E9%9B%86%E8%A6%81%E9%A0%85-KSN%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E.pdf/$File/%E5%AD%A6%E7%94%9F%E5%8B%9F%E9%9B%86%E8%A6%81%E9%A0%85-KSN%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E.pdf)。該当箇所には、退学届を提出した場合でも返金しない事由として妊娠を挙げる趣旨の記載がある。
注六 SBC姫路日本語学院「学生募集要項」(同校ウェブサイト掲載、二〇二六年六月三十日閲覧、URL:https://www.jl-acad.com/assets/document/ApplicationDocument.pdf/$File/ApplicationDocument.pdf)。該当箇所には、返金しない場合として妊娠を挙げる趣旨の記載がある。
注七 エイシン長岡日本語学校「事前通知・同意書」(同校ウェブサイト掲載、二〇二六年六月三十日閲覧、URL:https://eishin-js.com/wp/wp-content/themes/ejs-v2/assets/doc/ad_2_20190912/ad_2_20200925.pdf/$File/ad_2_20200925.pdf)。該当箇所には、日本語学校在学中に妊娠が発覚した場合、学業と出産・育児等との両立が難しいため一旦退学・帰国とする趣旨の記載がある。

 右質問する。

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