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答弁本文情報

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平成十三年一月二十三日受領
答弁第四〇号

  内閣衆質一五〇第四〇号
  平成十三年一月二十三日
内閣総理大臣 森   喜  朗

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員保坂展人君提出受刑者の処遇に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員保坂展人君提出受刑者の処遇に関する質問に対する答弁書



一について

 お尋ねの事例の件数については、過去十年分を含め、そのすべての数を明らかにする資料が存在しないため、お答えすることができない。

二の(1)について

 受刑者の接見及び信書の発受(以下「接見等」という。)については、親族以外の者との接見等は、原則として禁止されているが、特に必要ありと認める場合にはこれを許すこととしている(監獄法(明治四十一年法律第二十八号)第四十五条及び第四十六条)。また、受刑者への差し入れについては、親族以外の者によるものであっても、その差し入れが受刑者の処遇上害がないと認められる場合にはこれを許すこととしている(監獄法第五十三条、監獄法施行規則(明治四十一年司法省令第十八号。以下「規則」という。)第百四十六条第二項)。
 受刑者に対しては、その改善、更生に資する善良な関係の維持に配慮しつつ、改善、更生に悪影響を及ぼす者等との交流を絶った環境の下で、個々の受刑者の行状、性向等に応じて矯正処遇を施す必要があること等から、親族以外の者との接見等及び親族以外の者からの差し入れを一律に認めることは相当ではないと考えている。

二の(2)について

 現在、法務省において把握している限りでは、スウェーデン王国及びデンマーク王国の刑務所で、個室において、受刑者とその親族との間に物理的な障壁を設けず、かつ、刑務所職員が立ち会わない形態の面会が実施されることがあることは承知しており、また、アメリカ合衆国の一部の州、大韓民国、ヴィエトナム社会主義共和国、コスタ・リカ共和国及びニカラグァ共和国の刑務所で、個室において、受刑者とその配偶者との間に物理的な障壁を設けず、かつ、刑務所職員が立ち会わない形態の面会が実施されることがあることは承知している。
  平成十一年十二月一日から平成十二年十一月三十日までの一年間に、我が国の行刑施設において、受刑者と接見の相手方との間に物理的な障壁がない場所で、職員による立会いを省略した状態で行われた接見(余罪受刑者とその弁護人等との接見を除く。)の件数、そのうち配偶者との接見の件数等は、別表のとおりである。
 このような形態による接見の処遇上の効果については、受刑者と接見の相手方とが親密な関係を維持することの一助となる場合があり得るものと考えている。一方、その運用上の問題点としては、不法な物品の授受等行刑施設の規律及び秩序を害する行為や逃走その他収容目的を阻害する行為を防止することが困難となるおそれがあること、接見を通じて観察了知される事情を当該受刑者に対する適切な処遇の実施の資料とすることができなくなること等があると考えている。
 御指摘の「プライベートな面会」がいかなるものを指すのか必ずしも明らかではないが、右のような形態による接見については、右に述べたような運用上の問題点があり、このような形態による接見を受刑者の一般的な接見の形態として認めることは困難である。

二の(3)について

 監獄法を全面的に改正するために第百二十回国会に提出した刑事施設法案では、外出について、仮釈放の応当日を経過した懲役受刑者又は禁錮受刑者が、開放的施設において処遇を受けていること、釈放前の指導及び援助を受けていることその他の法務省令で定める事由に該当する場合において、その円滑な社会復帰を図るため、刑事施設の外において、その者が一身上の重要な用務を行い、更生保護に関係のある者を訪問し、その他その釈放後の社会生活に有用な体験をする必要があると認めるときは、一日のうちの時間を定めて、刑事施設の職員の同行なしに外出することを許すことができる旨を規定している。また、同法案では、外泊について、仮釈放の応当日を経過し、かつ、六月以上刑の執行を受けた懲役受刑者又は禁錮受刑者が、開放的施設において処遇を受けていることその他の法務省令で定める事由に該当する場合において、その円滑な社会復帰を図るため必要があるときは、七日以内の期間を定めて、その者が、刑事施設の職員の同行なしに刑事施設の外に外泊して、一身上の重要な用務を行い、又は更生保護に関係のある者を訪問することを許すことができる旨を規定している。
 現行の監獄法の下においては、外出及び外泊の制度は設けられておらず、これを許した事例はない。

二の(4)について

 受刑者及び死刑確定者が制作した文芸作品を社会に発表することについては、受刑者の場合には、当該受刑者の教化上の効果、行刑施設の規律秩序の維持及び管理運営に対する支障の有無等を考慮し、個別にその許否を決定しており、また、死刑確定者の場合には、社会一般に不安の念を抱かせるおそれ及び本人の心情の安定を害するおそれの有無、本人の身柄の確保及び行刑施設の管理運営に対する支障の有無等を考慮し、個別にその許否を決定している。
 行刑施設又は矯正管区(以下「施設等」という。)が主催するコンクールにおける出品作品の取扱いについては、著作権に係る応募条件を設定する場合にはコンクールの実施に必要な範囲で行うこととするとともに、応募条件等を明記した募集要領の内容を応募者に周知徹底させることとしており、また、出品作品は、審査・展示等に必要な期間中は施設等が保管し、これが終了したときには応募者の希望に応じて返却するよう努めることとしている。

三について

 行刑累進処遇令(昭和八年司法省令第三十五号)第二十一条は、階級の進級は、作業の勉否及びその成績、操行の良否並びに責任観念及び意志の強弱(少年受刑者については、更に学業の勉否及びその成績)を考査して決定する旨を規定しており、各行刑施設において具体的な進級基準等を定めているが、これらの進級基準等については、受刑者には明らかにしておらず、また、これを明らかにすると今後の刑の執行に支障を及ぼすおそれがあることから、答弁は差し控えたい。

四の(1)について

 作業賞与金について、御指摘のようにここ数年その給与が遅滞しているということはない。

四の(2)について

 作業賞与金については、受刑者の勤労意欲の促進等を図るため、毎年、作業賞与金の計算の基礎となる基準額の引上げに努めているところである。

四の(3)について

 在監者に対する懲罰として、監獄法第六十条第一項第九号に規定する作業賞与金計算高(以下「計算高」という。)の一部又は全部の減削の懲罰を科することはある。
 平成十一年十二月一日から平成十二年十一月三十日までの一年間に、全国の行刑施設において、計算高の減削の懲罰を科した事例は千六百十七件あり、減削された計算高の合計は百五十七万千五百二十九円である。
 他の懲罰によっては十分な効果が期待できないような場合には、計算高を減削することを内容とする懲罰を科することが必要なときがあり、これが問題であるとは考えていない。

四の(4)について

 作業賞与金については、受刑者が在監中であっても、配偶者、子若しくは父母の扶助、犯罪被害者に対する賠償又は書籍の購入その他必要がある場合には、情状により、その計算高の中からこれを給することができることとされており(規則第七十六条)、お尋ねのような場合であっても、情状により、作業賞与金から送金することは可能である。
 平成十一年に、全国の行刑施設において、受刑者が、犯罪の被害者又はその遺族(以下「被害者等」という。)に対する賠償その他の慰謝の措置を講ずることを理由として作業賞与金の給与を受け、これを被害者等に直接送金した事例は、法務省において調査し得た範囲では六十三件であり、また、受刑者が、その家族等を介して被害者等に対する賠償その他の慰謝の措置を講ずることを理由として作業賞与金の給与を受け、これを家族等に送金した事例は、法務省において調査し得た範囲では百九件である。
 平成十年以前の件数については、現時点では大部分の行刑施設においてこれを明らかにする資料が存在しないため、そのすべてをお答えすることはできないが、法務省において調査し得た範囲では、千葉刑務所においては、平成三年から平成十年までの八年間に受刑者が被害者等に直接送金した事例が三百二十六件あり、岐阜刑務所においては、平成六年から平成十年までの五年間に受刑者が被害者等に直接送金した事例が十四件あり、熊本刑務所においては、平成二年から平成十年までの九年間に、受刑者が被害者等に直接送金した事例が三十六件、受刑者がその家族等に送金した事例が四十一件ある。

五の(1)について

 受刑者が体調不良を申し出た場合には、いずれの行刑施設においても、個々の受刑者の状況に応じて横臥させる等の配慮を行っているところである。

五の(2)について

 行刑施設の所在する地域の気候等に応じ、防寒対策として、舎房又は廊下に暖房設備を整備しているほか、冬用下着の貸与、衣類及び寝具の貸与数の増加等の種々の配慮をしているところであり、また、暑気対策として、扇風機、すだれ等を設置しているほか、うちわ及び夏用衣類の貸与、冷茶等の給与、入浴(シャワーの使用を含む。)回数及び着替え用下着類の貸与数の増加等の種々の配慮をしているところである。

五の(3)について

 虫歯により歯痛がある場合、歯ぐきの疾患等により食物のそしゃくに支障がある場合等において、応急的な治療の必要があるときは、投薬、抜歯等の治療を国費で行っている。その他の歯科診療の費用は、受刑者本人の負担となる。
 平成十一年中に補綴治療を含む歯科診療を受けた受刑者が自己負担した診療費の平均額は約一万二千三十七円であり、また、最高額は七十二万七千五百円である。


別表

番号 施設名 受刑者と接見の相手方との間に物理的な障壁がない場所で、職員による立会いを省略した状態で行われた接見の件数 上記のうち配偶者との接見の件数
宮城刑務所 四九 一九
福島刑務所 三五 二〇
黒羽刑務所 二〇七 五三
市原刑務所 五三二 二三〇
静岡刑務所 七三八 二六八
福井刑務所 五三 五三
加古川刑務所 二二九 七六
広島刑務所 九七 三〇
松山刑務所 一四一 八〇
一〇 沖縄刑務所
一一 川越少年刑務所 一六
一二 奈良少年刑務所 九六〇 二八八
一三 京都拘置所 三〇
一四 大阪拘置所 三三 一五
  合計 三、一二一 一、一四四
 注一 表中の形態による接見を実施した施設のみ記載した。
  二 支所における接見も本所に含めて表記した。

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