答弁本文情報
平成十三年三月二十三日受領答弁第二八号
内閣衆質一五一第二八号
平成十三年三月二十三日
衆議院議長 綿貫民輔 殿
衆議院議員金田誠一君提出「秘密漏えい事件調査報告書」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員金田誠一君提出「秘密漏えい事件調査報告書」に関する質問に対する答弁書
一について
御指摘の海自三佐(以下「海自三佐」という。)は、学位授与機構への提出論文の作成を職務として遂行していたものであり、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号。以下「隊法」という。)第五十六条に違反するものではない。
隊法第五十九条第一項に規定する「秘密を漏らしてはならない」とは、当該秘密に接する権限のない者に秘密を漏らしてはならないことであると解されるところ、御指摘のC一尉及び図書係を含む平成六年八月から平成七年八月までの幹部中級艦艇用兵課程の学生全員、御指摘のB一尉、D一尉及びE一尉を含む平成六年八月から平成七年八月までの幹部中級射撃課程の学生全員並びに御指摘の学生長及びA一尉を含む平成七年三月から平成八年三月までの幹部中級艦艇用兵課程の学生全員は、当時、「戦術概説(改訂第三版)」(以下「概説」という。)に関し、秘密保全に関する訓令(昭和三十三年防衛庁訓令第百二号。以下「訓令」という。)第二条第三項に規定する関係職員であって、当該秘密に接する権限を有する者であったことから、これらの者に概説又はその複写したものを貸し与えたことは、隊法第五十九条第一項に違反するものではなく、また、これらの者が概説等を借り受けたことは、隊法第百十八条第二項に違反するものではない。
なお、概説を不正に複写した者等については、隊法第四十六条第一項第一号等に該当するものの、その動機が勉強のためで悪質性がなく、また、秘密漏えいの意図もなかったこと等から、懲戒処分を行わず、訓戒等に処した。
御指摘の十九名が有していた概説を複写したものについては、平成十二年六月三十日に海自三佐が在日本国ロシア連邦大使館付海軍武官に秘密を漏らす以前に各自により破棄されていたことから、防衛庁において、これらを保全し得なかったものである。
お尋ねの「管理者」等の職名等については、別表第一のとおりである。
お尋ねの「管理者」等の氏名については、これを明らかにすると個人の権利利益が害されるおそれがあるため、答弁を差し控えたい。
防衛庁においては、御指摘の資料等が漏えいしたことの重大性等にかんがみ、全庁を挙げて対処することとし、警視庁公安部から御指摘の漏えいの疑いについて通報があった後、直ちにこれを防衛庁長官に報告するとともに、平成十二年九月十一日、事務次官から、防衛庁のすべての部署に対し、「秘密保全体制の確立のために必要な措置について(通達)」(平成十二年九月十一日防防調第五千五百十五号)を発出し、臨時秘密保全検査の実施等の秘密保全体制の確立のために必要な措置を可及的速やかに講じたところである。
また、海上自衛隊警務隊司令を長とする特別調査チームによる調査を行うとともに、事務次官を長とする秘密保全等対策委員会による再発防止策の検討を行い、平成十二年十月二十七日、「秘密漏えい事件調査報告書」及び「秘密保全体制の見直し・強化について」をそれぞれ取りまとめ、これらを防衛庁長官に報告した。
さらに、「秘密保全体制の見直し・強化について」における指摘等を踏まえ、平成十二年十二月一日、事務次官から、防衛庁のすべての部署に対し、「秘密漏えい防止のための取扱い環境の整備について(通達)」(平成十二年十二月一日防防調第七千十二号)、「各国駐在武官等との接触について(通達)」(平成十二年十二月一日防防調第七千十三号)、「情報保全業務の実施について(通達)」(平成十二年十二月一日防防調第七千十四号)及び「隊員の服務指導等について(通達)」(平成十二年十二月一日防人一第七千十五号)を発出し、これらに記載した再発防止策を実施しているところである。
御指摘の秘密については、一般に知られたわけではないため、非公知性が失われたとは考えていない。
お尋ねの影響については、これを明らかにすることは、海上自衛隊の個々の戦術を明らかにすることとなり、海上自衛隊の円滑な任務の遂行に支障を生ずるおそれがあるため、答弁を差し控えたい。
防衛庁においては、海自三佐が警視庁による事情聴取を受けている旨の連絡があって初めて御指摘の漏えいの事実を知ったものであり、これ以前にその職務を行うことにより犯罪があると思料した者はおらず、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第二百三十九条第二項に規定する告発義務を負っていた者はいなかったと考えている。
海自三佐は、当時、「将来の海上自衛隊通信のあり方(中間成果)」に関し、訓令に規定する関係職員であって、当該秘密に接する権限を有する者であったことから、御指摘のF二佐の行為は、隊法第五十九条第一項に違反するものではない。
防衛庁においては、海自三佐が臨時に勤務していた当時の海上幕僚監部調査部調査課において、秘密文書等の取扱いに対する緊張感が欠けていたこと等から、訓令等に定める手続に従わず、「将来の海上自衛隊通信のあり方(中間成果)」が御指摘のG三佐のファイルにつづられていたものと考えている。
防衛庁においては、正式に秘密として指定されたものではないが、実質的に秘密の内容を含み、将来秘密に指定されることが予想される文書等については、「指定前秘密」の表示を行うとともに、訓令第六条から第九条まで、第二十三条、第二十九条から第三十五条まで、第三十七条から第四十条まで、第四十四条及び第四十六条第二項の規定を、それぞれ原則としてそのまま適用することとしている。
お尋ねの資料のうち、その名称、発簡番号、日付及び秘密区分等を明らかにすることができるものは、別表第二のとおりである。
海自三佐は、当時、御指摘のフロッピーディスクに含まれていた秘密に関し、訓令に規定する関係職員であって、当該秘密に接する権限を有する者であったことから、御指摘の前年の課程学生の行為は、隊法第五十九条第一項に違反するものではない。
海自三佐は、当時、御指摘の光磁気ディスクに含まれていた秘密に関し、訓令に規定する関係職員であって、当該秘密に接する権限を有する者であったことから、御指摘のH三佐の行為は、隊法第五十九条第一項に違反するものではない。
お尋ねの秘密文書の写しのうち、その名称、発簡番号、日付及び秘密区分等を明らかにすることができるものは、別表第三のとおりである。
お尋ねの防衛庁の文書は、別表第四のとおりである。これらの中には隊法第五十九条第一項に規定する「秘密」に該当する文書はない。
防衛庁においては、平成十二年九月、臨時秘密保全検査を実施した。その結果、航空自衛隊補給本部で秘密文書が誤って破棄されたと推定される事例が一件認められたほかは、異状は認められなかった。
防衛庁においては、平成十二年九月、秘密保全手続、特に秘密区分の指定並びに秘密文書等の複製、貸出し及び破棄に係る手続の厳格な励行について、管理者、保全責任者等を通じ、職員に指導を行った。
防衛庁においては、平成十二年九月、秘密文書等の作成部数の限定、適時適切な破棄等秘密文書の削減の促進について、管理者、保全責任者等を通じ、職員に指導を行った。
防衛庁においては、平成十二年九月、退庁時及び超過勤務時の管理体制の強化について、管理者、保全責任者等を通じ、職員に指導を行った。
防衛庁においては、平成十二年九月、保全責任者、保全責任者の補助者等に対し、訓令第七条の二に規定する保全教育を実施した。
防衛庁においては、平成十二年九月、各国駐在武官等と部外で接触する職員は、接触の日時、場所、相手、目的等の状況について、その者の属する部署の長に報告するよう指示した。
お尋ねの各「実施の細部」、「この通達の実施に関し必要な事項」及び「小委員会の運営に関し必要な事項」については、現在、御指摘の各通達に記載した措置等を実施する上でこれらを定める特段の必要が生じていないため、いずれも定めていない。
別表第一
管理者 | 海上自衛隊第一術科学校教育第一部長 |
取扱者 | 海上自衛隊第一術科学校の艦艇用兵科の職員の一部、幹部中級艦艇用兵課程の学生全員、砲術科の職員の一部及び幹部中級射撃課程の学生全員 |
管理者又はその職務上の上級者から特にこれらの保管を命ぜられた者 | 指定されていない。 |
保全責任者 | 海上自衛隊第一術科学校艦艇用兵科長及び砲術科長 |
保全責任者の補助者 | 海上自衛隊第一術科学校の艦艇用兵科の職員一名、幹部中級艦艇用兵課程の学生一名、砲術科の職員一名及び幹部中級射撃課程の学生一名 |
臨時に保全責任者の職務を代行する職員 | 指定されていない。 |
別表第二
名称
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発簡番号
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日付
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秘密区分等
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海上防衛構想【新たな対処構想】(中間報告) | なし | 平成九年二月二十四日 | 指定前秘密 (極秘) |
各種戦の様相 | なし | 平成九年七月十八日 | 指定前秘密 (極秘) |
将来の海上自衛隊通信のあり方(中間成果) | なし | 平成九年二月二十四日 | 指定前秘密 (秘) |
艦艇及び航空部隊の将来構想 | なし | 平成九年五月二十九日 | 指定前秘密 (秘) |
研究開発体制・態勢の見直し(資料編) | なし | 平成九年五月二十九日 | 指定前秘密 (秘) |
電子戦データ処理装置の将来構想(ソフトウェアの維持整備) | なし | 平成九年六月十一日 | 指定前秘密 (秘) |
海上自衛隊の態勢見直し検討委員会の設置について(通達) | 海幕防第三千二十五号 | 平成八年六月二十八日 | 注意 |
海上自衛隊の態勢見直し検討における基本方針について(通知) | 海幕防第四千九百八十号 | 平成八年十一月七日 | 注意 |
C4I検討作業部会の設置について(通知) | 海幕防第五千九十五号 | 平成九年十一月十八日 | 注意 |
将来の情報態勢に関する検討作業部会(R委員会調査部グループ)について | なし | 平成九年九月五日 | なし |
第6回R委員会について | なし | 平成九年九月十日 | なし |
別表第三
名称
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発簡番号
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日付
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秘密区分等
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情報月報第二百六号 | 調二第六号 | 平成八年一月五日 | 極秘 |
情報月報第二百八号 | 調第七十五号 | 平成九年四月二十三日 | 極秘 |
情報月報第二百九号 | 調第百五号 | 平成九年五月二十九日 | 極秘 |
情報月報第二百十号 | 調第百十四号 | 平成九年六月三十日 | 極秘 |
情報月報第二百十一号 | 調第百三十七号 | 平成九年七月二十八日 | 極秘 |
情報月報第二百十二号 | 調第百五十五号 | 平成九年八月二十八日 | 極秘 |
情報月報第二百二十号 | 調第五十六号 | 平成十年四月二十二日 | 極秘 |
英文電報の作成参考資料(幹部中級課程用) | なし | 昭和六十二年十二月一日 | 秘 |
戦術概説(改訂第三版) | なし | 平成四年六月二十四日 | 秘 |
平成八年度情報本部説明資料 | なし | 平成七年六月 | 秘 |
我が国の領海及び内水で潜没航行する外国潜水艦への対処について(通達) | 防防運第五百九十九号 | 平成九年二月七日 | 秘 |
我が国の領海及び内水で潜没航行する外国潜水艦への対処について(通達) | 海幕運第五百九十号 | 平成九年二月七日 | 秘 |
我が国の領海及び内水で潜没航行する外国潜水艦に対する浮上要求等の実施について | 自艦隊(作)第八十九号 | 平成九年二月七日 | 秘 |
長官定例情勢報告(#6) | なし | 平成九年二月二十五日 | 秘 |
金大中政権誕生後の見通し | なし | 平成十年二月二十六日 | 秘 |
我が国周辺諸国の情勢 | なし | 平成九年三月六日 | 秘 |
我が国の領海及び内水で潜没航行する潜水艦への対処 | なし | 平成九年三月十七日 | 秘 |
艦艇射撃教範 | 海上自衛隊教範第三百七十六号 | 平成九年九月二日 | 秘 |
モルドヴァ軍事情勢 | なし | なし | 秘 |
モルドヴァ軍事情勢 | なし | なし | 秘 |
トルクメニスタン軍事情勢 | なし | なし | 秘 |
CFE条約 | なし | なし | 秘 |
アルバニアの国防 | なし | なし | 秘 |
艦艇及び航空部隊の将来構想 | なし | 平成七年三月十日 | 指定前秘密 (秘) |
将来の海上自衛隊通信のあり方(中間成果) | なし | 平成九年二月二十四日 | 指定前秘密 (秘) |
電子戦データ処理装置の将来構想(ソフトウェアの維持整備) | なし | 平成九年六月十一日 | 指定前秘密 (秘) |
別表第四
区分
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名称等
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防衛大学校 | 「主な新着図書」(図書館ニュースから抜粋) |
防衛大学校紀要(論文三点、題名不明) | |
防衛研究所 | 「新着図書案内」 |
「新着任者に対する連絡事項」 | |
「調査研究実施報告書」 | |
「平成十二年度図書購入リスト」 | |
防衛研究所の「平成十一年度特別研究成果報告書」のうち次の五点 ・軍による国際貢献の在り方と題する報告書 ・ミサイル脅威と日本の安全保障と題する報告書 ・冷戦後における核保有国の核戦略についてと題する報告書 ・冷戦後における米国の国防政策をめぐる論議についてと題する報告書 ・我が国の航空機工業の展望と防衛産業としての基盤維持の在り方と題する報告書 |
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海上自衛隊 | 運用作業参考と題する資料 |
運用術提要と題する資料 | |
ガスタービン機関と題する資料 | |
艦艇長勤務参考と題する資料 | |
気象と題する資料 | |
空水協同参考資料と題する資料 | |
航空作戦概論と題する資料 | |
射撃理論と題する資料 | |
蒸気タービン機関と題する資料 | |
水中音響理論と題する資料 | |
戦史講義資料と題する資料 | |
戦略参考資料と題する資料 | |
対空戦・対水上戦と題する資料 | |
対潜戦術と題する資料 | |
対米通信と題する資料 | |
ディーゼル機関概説と題する資料 | |
統合概論と題する資料 | |
統率参考資料と題する資料 | |
洋上補給作業参考と題する資料 | |
ロジスティックス概論と題する資料 |