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答弁本文情報

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平成十三年五月十五日受領
答弁第五四号

  内閣衆質一五一第五四号
  平成十三年五月十五日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員小沢和秋君外一名提出九州新幹線建設に伴う文化財保護に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員小沢和秋君外一名提出九州新幹線建設に伴う文化財保護に関する質問に対する答弁書



(一)について

 御指摘の熊本県指定無形民俗文化財「八代神社祭礼神幸行列」は、熊本県指定重要無形民俗文化財「妙見宮祭礼神幸行列」(以下「行列」という。)のことであると考えられるが、行列は、無形の民俗文化財であるため、有形の民俗文化財である県指定重要民俗文化財について規定した熊本県文化財保護条例(昭和五十一年熊本県条例第四十八号)第二十九条第一項の規定は適用されないことから、日本鉄道建設公団(以下「公団」という。)は、同項の規定に基づく届出を行っていない。なお、同項には、事前協議に関する規定はない。

(二)について

 御指摘の新幹線高架橋は、行列が通る道路をまたぐ構造となっており、その道路面からの高さについては行列の通行に十分な高さが確保されること等、現在、公団と八代市教育委員会との間で祭の進行に支障を来すことがないようにするべく話合いが行われているところである。

(三)について

 (一)についてで述べたとおり、熊本県文化財保護条例には、無形の民俗文化財について事前協議を義務付ける規定はない。
 なお、国及び地方公共団体は、文化財が我が国の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであることを認識し、その保存が適切に行われるよう努めなければならないものであり、各地方公共団体の文化財保護条例等に基づき指定された文化財の保存については、当該地方公共団体が、条例等に基づき適切に対処すべきものと考える。

(四)について

 昭和四十一年四月一日に文化財保護委員会と公団との間で取り交わされた「日本鉄道建設公団の事業施行に伴う埋蔵文化財包蔵地の取扱いに関する覚書」(以下「覚書」という。)においては、公団の事業に関係のある埋蔵文化財包蔵地(以下「包蔵地」という。)の取扱いについて、事業が実施される前に公団が文化財保護委員会(現在では、都道府県教育委員会)に協議することとされており、路線の確定後の当該協議において、包蔵地は(イ)事業地区に含めないもの、(ロ)事業地区に含めるが保存を図るもの及び(ハ)埋蔵文化財の発掘調査(以下「発掘調査」という。)を行って記録を残すものの三種類に区分して取り扱われている。
 公団は、九州新幹線(鹿児島ルート)については、鹿児島県教育委員会とは平成四年から平成十二年までの間に、熊本県教育委員会とは平成四年から現在に至るまで、福岡県教育委員会とは平成十年から現在に至るまで、覚書に基づく協議を行っており、その結果、現在までのところ、(イ)又は(ロ)に該当する包蔵地はなく、(ハ)に該当する包蔵地については、工事の着手前に発掘調査を行い、記録を残すこととしたところである。
 なお、九州新幹線(長崎ルート)については、いまだ路線の確定には至っていないが、今後、路線が確定し公団が事業を実施する場合には、覚書に基づき、当該事業の実施前に、公団と長崎県教育委員会及び佐賀県教育委員会との間で包蔵地の取扱いについて協議が行われることとなる。

(五)について

 九州新幹線(鹿児島ルート)の建設に伴う発掘調査は、覚書に基づき公団が熊本県及び鹿児島県に委託して実施しているが、公団と両県との間の埋蔵文化財包蔵地発掘調査委託契約(以下「委託契約」という。)に基づき、発掘又は発見された出土品については、公団に代わって両県により、法令上の諸手続が執られ、適切に保管されることとなる。さらに、両県は、受託業務が完了したときは、発掘調査報告書を公団に提出するとともに、公団に代わって同報告書を両県の教育委員会に提出することとされているため、調査終了後の埋蔵文化財の記録についても適切に保存されることとなる。
 また、両県の教育委員会は、文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号。以下「法」という。)第五十七条の三第四項及び第九十九条第一項第六号の規定に基づく勧告として、公団に対し、発掘調査の結果、重要な遺跡が発見された場合には、その保存について別途両県の教育委員会と協議するよう、あらかじめ通知しており、重要な遺跡の保存については、公団が関係する県教育委員会と協議して定めることとなる。

(六)及び(七)について

 新幹線の路線が確定されるに当たっては、公団はその候補ルート上の土地につき事前に文献等により埋蔵文化財の分布状況を調査して、新幹線建設が包蔵地に与える影響を評価し、その結果について地元自治体及び地元住民の意見を十分に聴取した上で、できる限り包蔵地を避けて候補ルートを選定するよう配慮しているところである。
 なお、路線の確定後であっても、発掘調査の結果、重要な遺跡が発見された場合には、(五)についてで述べたとおり、公団は、関係する都道府県教育委員会と必要に応じ路線の変更も含めて協議を行うこととなる。

(八)及び(九)について

 委託契約は単年度契約であり、そこでは発掘調査の期間は年度末までとされているが、仮に調査期間が不足する場合には、次年度以降に改めて委託契約を締結し、発掘調査を継続することが可能である。
 また、委託契約における受託者たる熊本県及び鹿児島県は、現地における埋蔵文化財発掘の専門的知見を有する者として、九州新幹線建設に伴う事前の発掘調査を円滑に行い、公団に代わって出土品についての法令上の諸手続の実施や発掘調査報告書の提出等を行うものであり、行政上の立場とは異なることから、委託契約に遺跡の保存についての協議項目を定めることはなじまない。
 一方、熊本県教育委員会及び鹿児島県教育委員会は、(五)についてで述べたとおり、発掘調査の結果、重要な遺跡が発見された場合には、その保存について別途協議するよう、あらかじめ公団に対して通知している。
 このように、両県の教育委員会は、法令に基づき、埋蔵文化財の保護上必要な措置を採ることができることとされている。

(十)について

 (六)及び(七)についてで述べたとおり、新幹線の路線が確定されるに当たっては、公団は事前に文献等により、埋蔵文化財の分布状況を調査し、できる限り包蔵地を避けて候補ルートを選定するよう配慮しているところである。
 一方、新幹線建設に伴う発掘調査については、土地の大幅な形質変更をもたらすことから、通常、当該土地の買収が必要となるが、限りある財源の有効利用を図る観点から、路線の確定後、事業用地の範囲を確定した上で、当該用地において実施することが現実的であり、路線の確定前に発掘調査を行うことは困難であると考えている。
 なお、発掘調査の結果、重要な遺跡が発見された場合には、(六)及び(七)についてで述べた協議を行うこととなる。

(十一)について

 九州新幹線博多・船小屋間については、本年四月二十五日に同区間を含む博多・新八代間の工事実施計画が認可され、同区間の路線が確定したところであり、今後は(四)についてで述べたとおり、公団は佐賀県教育委員会及び福岡県教育委員会と包蔵地の取扱いについて協議を行うこととなる。また同区間の着工は、平成十二年十二月十八日の政府・与党申合せに基づき、安定的な財源見通しを確保した上で行われているものであり、拙速な着工ではない。
 また、九州新幹線(長崎ルート)については、現在その候補ルートについて、地元自治体及び地元住民の意見等を踏まえ、最終的な検討を行っているところである。

(十二)について

 埋蔵文化財は、貴重な国民的財産であり、可能な限り現状で保存することが望ましいものである。しかしながら、開発事業によりやむを得ず現状のまま保存できない場合には、少なくとも当該埋蔵文化財の記録を保存するため、法令に基づき、当該埋蔵文化財の現状による保存を不可能とする原因となった開発事業の事業者に対し発掘調査の実施を指示し、その発掘調査の経費についても、当該開発事業が個人の住宅建設である場合等を除いて、当該事業者に負担を求めることとなっている。
 このことは、事業者が国の機関等である場合も同様であり、文化庁が自ら予算を計上し発掘調査の事業主体となることは考えていない。

(十三)について

 文化庁では、毎年度、都道府県等の教育委員会が発掘により文化財を発見した場合の法第五十九条第二項の規定による通知及び都道府県等の教育委員会が行う法第六十一条第一項の規定に基づく出土文化財の鑑査についての事務処理状況の調査を通じて、埋蔵文化財の保存状態を把握しているが、このうち国の機関が行った公共事業に伴う発掘調査の結果、保存された埋蔵文化財のみを対象とした調査はしておらず、お尋ねの状況については把握していない。
 なお、平成十二年十二月、都道府県教育委員会の担当者に対し、都道府県における埋蔵文化財調査体制と遺跡の実態に関するアンケート調査を実施し、その中で、平成五年以降、国の機関が行った公共事業に伴う発掘調査の結果により保存された遺跡についても記入を依頼したところであり、現在、取りまとめ中である。

(十四)について

 全国には膨大な数の埋蔵文化財包蔵地が存在しており、また、土地の利用関係と密接に関係していることから、すべての埋蔵文化財を現状で保存することは現実的に困難である。このため、やむを得ず現状のまま保存できない場合には事前の発掘調査を行い、その埋蔵文化財が有している歴史的・文化的意義を明らかにし、遺構を中心にその記録を作成して、出土遺物とともに将来のために保存しているところである。
 なお、法においても、第五十七条の二第二項で、発掘調査による「埋蔵文化財の記録の作成」が定められているところである。



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