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平成十四年三月二十九日受領
答弁第三一号

  内閣衆質一五四第三一号
  平成十四年三月二十九日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員山内惠子君提出原子力・エネルギー教育支援事業交付金の創設が憲法及び教育基本法に違反する疑いがあることに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員山内惠子君提出原子力・エネルギー教育支援事業交付金の創設が憲法及び教育基本法に違反する疑いがあることに関する質問に対する答弁書



一の1及び2について

 一般に、特定の施策が日本国憲法及び教育基本法(昭和二十二年法律第二十五号)に反するかどうかは、当該施策の具体的内容に即して個別に判断されるべきところ、お尋ねの「その時々の政権担当者が自らの政策を宣伝・教育するために学校教育を利用すること」、「特定の政策を教育の場で宣伝・教育するよう求めること、(中略)特定の政策の宣伝・教育を促すこと、あるいは事実上強制すること」が具体的に政府のどのような行為を指すのか必ずしも明らかではないため、一概にお答えすることは困難である。
 なお、学習指導要領は、指導事項の一つとしてエネルギーや原子力に関する事項を挙げているが、これは、社会生活を営む上で、国民の一人一人がエネルギーや原子力に関する事項について理解を深め、自ら考え、判断する力を身に付けることが重要であるため、児童・生徒の発達段階に応じて、同事項を取り扱うこととしているものであるから、これに沿って教育を行うことは、日本国憲法及び教育基本法上、何ら問題はないものと考える。

一の3及び4について

 御指摘の平成十二年十一月二十四日に原子力委員会が決定した「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」においては、「原子力に関する教育」を、国民の一人一人がエネルギーや原子力に関する事項について理解を深め、自ら考え、判断する力を身に付けるための環境を整備するために必要なものと位置付けているものであり、原子力政策について一方的な観念を植え付けるような内容の教育として記述しているものではない。

一の5について

 初等中等教育の振興に関する企画及び立案並びに援助及び助言に関すること等の事務を所掌する文部科学省が、科学技術の総合的な振興を図る観点から、原子力政策のうち科学技術に関するものに関すること等の事務を所掌しても、そのこと自体が教育の場において、原子力政策について一方的な観念を植え付けるような内容の教育を行うことを意味するものではなく、教育への「不当な支配」を促すわけではないと考える。

二の1について

 平成十四年度予算における原子力・エネルギーに関する教育支援事業交付金(以下「教育支援交付金」という。)は、国民の一人一人がエネルギーや原子力に関する事項について理解を深め、自ら考え、判断する力を身に付けるための環境を整備するため、各都道府県が学習指導要領の趣旨に沿って主体的に実施するエネルギーや原子力に関する教育に係る取組を国として支援するためのものであり、具体的な内容については、各都道府県、各学校等が、一の1及び2についてで述べたような学習指導要領の趣旨に沿って、地域や学校の実態に応じ創意工夫して決定するものであることから、教育支援交付金を創設することは、教育への「不当な支配」には当たらないと考える。
 また、教育支援交付金は、御指摘の「原子力推進政策に沿った交付申請を促」すものではなく、右に述べた環境の整備のための取組を支援するものであり、御指摘は当たらないと考える。

二の2について

 教育支援交付金は、二の1についてで述べた趣旨で交付されるものであり、これを予算に計上し、支出したとしても日本国憲法及び教育基本法に反するものではないと考える。
 教育支援交付金は、現在、電源開発促進税の収入を財源として行う「電源立地対策」である「発電用施設の設置の円滑化に資するための財政上の措置」を定めた電源開発促進対策特別会計法施行令(昭和四十九年政令第三百四十号)第一条に規定されていないが、予算の執行に先立ち、同令を改正して「電源立地対策」に教育支援交付金の交付を加えることを予定している。教育支援交付金は、全国の都道府県を対象とするものであるが、電源立地地域の住民に限らず広く国民の一人一人がエネルギーや原子力に関する事項について深く理解し、自ら考え、判断する力を有することは、原子力発電施設等の立地の問題について的確に判断するための基礎となること、電源開発促進対策特別会計法(昭和四十九年法律第八十号)は、発電用施設の設置の円滑化に資するための財政上の措置に係る地域について何ら限定を加えておらず、これまでも同令第一条第一項第十六号に基づき、全国を対象に、原子力発電施設等の設置の必要性に関する知識の普及に要する費用に係る委託費の交付を行ってきたことから、全国の都道府県を対象とした教育支援交付金の交付を「電源立地対策」として行うことは、同法の趣旨に反するものではない。
 また、平成十四年度電源開発促進対策特別会計予算において、教育支援交付金が事項「電源立地地域における安全対策等の推進に必要な経費」の説明項目のうち「原子力発電施設等が設置されている地域等における放射線監視施設の設置に必要な事業費等に充てるための都道府県等に対する交付金等」に含まれているのは、都道府県等に対する交付金で安全対策や理解増進を主たる目的とするものについては、すべてこの説明項目に含めることとしているためであり、御指摘の「放射線監視施設の設置に必要な事業」は、同説明項目に含まれる事業の一例として表記しているにすぎない。

二の3について

 教育支援交付金は、各都道府県が学習指導要領の趣旨に沿って主体的に実施するエネルギーや原子力に関する教育に係る取組を国として支援するためのものであり、この教育支援交付金を活用した各都道府県の主体的な取組を各学校でどのように利用するかについては、各学校の判断にゆだねられている。したがって、教育支援交付金は、各学校が地域や学校、児童・生徒の実態等を踏まえ、創意工夫を生かした学習活動を行うという「総合的な学習の時間」の趣旨に反するものではないと考える。

二の4について

 学習指導要領が指導事項の一つとしてエネルギーや原子力に関する事項を挙げているのは、社会生活を営む上で、国民の一人一人がエネルギーや原子力に関する事項について理解を深め、自ら考え、判断する力を身に付けることが重要であるためであるところ、教育支援交付金は、このような学習指導要領の趣旨に沿うものである。

二の5について

 御指摘の財団法人日本原子力文化振興財団の冊子は、学校関係者や有識者により構成される同財団の高等学校教材開発委員会により執筆されたものと承知している。同冊子は、原子力を含む多くのエネルギー源のそれぞれの利点と欠点、茨城県那珂郡東海村で発生した臨界事故等の課題を示し、これらについて生徒が自ら調べ考えることができるような構成となっており、また、各学校が必要に応じて関連する題材を選んで活用できるような選択性の高いものであり、同冊子を学校教育の場でどのように活用するかについては、各学校の自主的な判断にゆだねられていることから、「誤った知識や一方的な観念を子どもに植え付けるような内容の教育を施すことを強制する」ものではないと考える。

二の6について

 教育支援交付金は、各都道府県が学習指導要領の趣旨に沿って主体的に実施するエネルギーや原子力に関する教育に係る取組を国として支援するためのものであり、国民の一人一人がエネルギーや原子力に関する事項について理解を深め、自ら考え、判断する力を身に付けるための教育を進める上で有意義なものであると考える。



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