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平成十四年四月二十六日受領
答弁第四四号

  内閣衆質一五四第四四号
  平成十四年四月二十六日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員小沢和秋君外一名提出電磁波の人体への影響防止と携帯電話の中継鉄塔建設紛争解決に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員小沢和秋君外一名提出電磁波の人体への影響防止と携帯電話の中継鉄塔建設紛争解決に関する質問に対する答弁書



(一)について

 お尋ねの「電磁波」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、無線通信に用いられる電波については、従来、継続的な研究、国内外の関連情報の収集及びその検討を行い、それが人体に好ましくない影響を与えないための適切な基準を策定するなどしてきたところであり、国民の健康にかかわる重要な問題であることから、今後とも適切な対処に努めてまいりたい。
 なお、御指摘の国際がん研究機関による超低周波電磁界に関する報告(以下「IARC報告」という。)及び国立環境研究所による超低周波電磁界に関する報告については承知しているが、無線通信に用いられる電波の電磁界と超低周波電磁界とではその性質が大きく異なるため、右の報告の内容は無線通信に用いられる電波には当てはまらないと考える。世界保健機関(以下「WHO」という。)も、IARC報告の内容が無線通信に用いられる電波には当てはまらない旨の発表をしているものと承知している。

(二)について

 無線通信に用いられる電波については、それが人体に好ましくない影響を与えないよう、電波の電界強度、磁界強度及び電力束密度(以下「電波の強度」という。)の基準が電波法施行規則(昭和二十五年電波監理委員会規則第十四号)第二十一条の三及び別表第二号の二の二で定められており、また、携帯電話端末等の一般環境における局所比吸収率(以下「局所SAR」という。)の基準が無線設備規則(昭和二十五年電波監理委員会規則第十八号)第十四条の二で定められているところである。
 我が国の電波の強度の基準及び局所SARの基準(以下「我が国の基準」という。)は、科学的根拠に基づくものであり、適切なものと考える。このため、我が国の電波の強度の基準を満たす携帯電話用基地局又は我が国の局所SARの基準を満たす携帯電話端末については、それらから発射される電波をばく露される者の年齢にかかわらず、人体に好ましくない影響を与えることはないと考えており、現時点において、更なる規制を行う必要はないものと考える。
 なお、WHOが、各国政府等において、超低周波電磁界に対する具体的対策及び学校等の近辺における携帯電話用基地局の設置等に対する具体的対策をとるよう勧告したとの事実もないものと承知している。

(三)について

 我が国の局所SARの基準は毎キログラム当たり二ワットであり、米国の局所SARの基準は毎キログラム当たり一・六ワットであって、いずれも携帯電話端末から発射された電波をばく露された者の年齢によって異なる基準を定めるものではない。
 我が国の局所SARの基準は、米国の局所SARの基準とは異なっているが、科学的根拠に基づくものであり、適切なものと考える。
 なお、我が国の局所SARの基準は、WHOと連携して活動している国際非電離放射線防護委員会が平成十年四月に定めて、WHOがその安全性を認めている「時間変化する電界、磁界及び電磁界へのばく露制限のためのガイドライン」(以下「国際ガイドライン」という。)における局所SARの基準と同一であり、また、欧州委員会に加盟する国を始め多くの国は、我が国と同様に国際ガイドラインにおける局所SARの基準を採用しているところである。
 また、米国の局所SARの基準は、米国電子電気学会における検討結果を踏まえ米国規格協会により策定されたものであるが、その具体的な根拠等の詳細については承知していない。

(四)について

 我が国の局所SARの基準を定める無線設備規則第十四条の二の規定が昨年六月一日に設けられ、本年六月一日から施行されることから、それ以降、我が国において使用される携帯電話端末は、我が国の局所SARの基準に適合したものでなければならず、また、このことは、電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)第三十八条の二の規定に基づき総務大臣又はその指定する者によって審査されることとなっている。
 我が国の局所SARの基準に適合する携帯電話端末であれば、それが人体に好ましくない影響を及ぼすことがないから、そのような携帯電話端末について、政府がそれぞれの局所SARの数値を公表する必要はないものと考える。
 なお、総務省は、昨年五月、七十六機種の携帯電話端末の局所SARの数値を調査し、それらのすべてが毎キログラム当たり二ワットを超えるものではないことを確認したところである。
 携帯電話端末を製造する事業者等による局所SARの数値の公表及び表示は、それぞれの事業者等の自主的な判断により行われるべきものと考える。

(五)について

 厚生労働省は、従来、医薬品、医療用具等のより安全な使用に資するよう、「医薬品・医療用具等安全性情報」と題する刊行物を定期的に発行し、また、これと同じ内容を同省のホームページに掲載するなどして、広範囲の医療関係者、患者等に対して、医薬品、医療用具等の利用に関する注意事項等の情報を提供してきたところである。
 御指摘の女性の事故を受けて、厚生労働省は、本年一月十七日に発行した「医薬品・医療用具等安全性情報」において、植込み型心臓ペースメーカ等を使用している患者に対して盗難防止装置や金属探知器のそばに必要以上に長く留まらないこと等を注意喚起し、医療機関に対して患者への一層の指導を要請するとともに、盗難防止装置を取り扱う事業者に対して盗難防止装置の設置場所の明示等の協力を求めたところである。
 電磁波が人体に与える影響については、電磁波の性質が周波数により異なること等から一概にお答えすることは困難であるが、今後とも研究等を継続して行い、適切な対処に努めてまいりたい。
 なお、携帯電話端末が一部の機種の植込み型心臓ペースメーカに極めて近接した位置で使用された場合、携帯電話端末から発射された電波が植込み型心臓ペースメーカの誤動作を引き起こすことがあると承知している。このため、総務省、厚生労働省等においては、携帯電話端末を植込み型心臓ペースメーカから二十二センチメートル以上離して使用するよう関係者に注意喚起しているところであるが、仮に、携帯電話端末によって植込み型心臓ペースメーカの誤動作が生じたとしても、携帯電話端末を植込み型心臓ペースメーカから離すことによって植込み型心臓ペースメーカの機能は直ちに正常に復することから、実際に植込み型心臓ペースメーカ装着者の健康に好ましくない影響を及ぼす危険性は極めて少ないものと考えている。
 また、無線通信に用いられる電波で非常に強いものを人体にばく露した場合、ばく露された部位に温度上昇が生ずるという熱作用等が知られているが、(二)についてで述べたとおり、無線通信に用いられる電波が人体に好ましくない影響を与えないよう適切な基準が策定されているところである。

(六)について

 総務省において、厚生労働省等の関係省庁と十分に連携して無線通信に用いられる電波の安全性を適切に確保してきたところであり、御指摘は当たらないものと考える。
 なお、総務省においては、今後とも、無線通信に用いられる電波の安全性に関する研究等を継続し、我が国の基準の根拠となる科学的データの信頼性向上を図るとともに、研究成果を正確に公表することにより、安心して安全に電波を利用できる環境の更なる整備を推進していく所存である。

(七)について

 御指摘のとおり、株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ九州が工事妨害禁止の仮処分を福岡地方裁判所久留米支部及び熊本地方裁判所に申し立てたことについては承知している。御指摘のような携帯電話用基地局の建設に係る紛争は、当事者である携帯電話事業者と周辺地域の住民との間におけるものであり、当事者間の話合いによって解決されるべきものであるため、お尋ねについて、政府としてお答えする立場にない。

(八)について

 総務省においては、御指摘のような携帯電話用基地局の建設に係る紛争について、周辺地域の住民から要望が寄せられた場合には、その内容を関係の携帯電話事業者に連絡し、周辺地域の住民との話合いに努めるよう要請しているところであり、引き続きそのような対応に努めてまいりたい。



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