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平成十四年五月二十八日受領
答弁第六一号

  内閣衆質一五四第六一号
  平成十四年五月二十八日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員北川れん子君提出原子力発電施設等放射能業務従事者に係る疫学的調査に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員北川れん子君提出原子力発電施設等放射能業務従事者に係る疫学的調査に関する質問に対する答弁書



一について

 いわゆる被ばく線量登録管理制度(以下「登録管理制度」という。)において、放射線業務従事者等につき財団法人放射線影響協会(以下「放影協」という。)に設けられた放射線従事者中央登録センター(以下「中央登録センター」という。)で行われる各種の登録の項目の名称及びその数は、別表一のとおりであり、住所及び本籍は登録すべき項目とはされていないと承知している。
 右登録を行うのは、登録管理制度に参加している事業者(以下「参加事業者」という。)及び放射線管理手帳発効機関(以下「手帳発効機関」という。)であるところ、参加事業者が放射線業務従事者等からどのようにして住所情報を得ているかまでは把握していないため、お尋ねの「現場で作業に入る前に労働者が書く書類」における住所記載の有無及び御指摘の「過去には民宿の住所ですませたこともあった」との事実の存否についてはお答えすることができない。
 放影協が行っている原子力発電施設等放射線業務従事者に係る疫学的調査(以下「放射線疫学調査」という。)における調査対象者の住所の確認については、生死確認の追跡調査に当たり、放影協において、参加事業者等の協力を得て調査対象者の住所情報を入手し、住所地の市区町村長から住民票又は住民票の除票の写し(以下「住民票等」という。)の交付を受けることにより行っている。住民票等の交付を受けることができた者については、雇用先が倒産又は廃業したとしても、住民票等により住所を確認することが可能である。
 放射線業務従事者等の住所が中央登録センターに登録すべき項目とされていないことは、外国人についても同様である。また、当該外国人が本国へ帰った場合、生死確認の追跡調査等を行うことはできない。

二について

 平成二年度から平成六年度までに実施された放射線疫学調査(以下「第T期調査」という。)におけるお尋ねの「登録のみの場合」とは、中央登録センターに事前登録がされたものの、実際には当該登録に係る者が放射線業務に従事しなかった場合をいう。この場合は、これらの者を放射線疫学調査の対象から除外したことから、参加事業者等に対し住所情報の提供を求めなかったものである。

三について

 第T期調査の調査対象は、平成元年三月三十一日までに中央登録センターに事前登録された者のうち、日本原子力研究所若しくは動力炉・核燃料開発事業団の施設又は商業用原子力発電施設で放射線業務に従事した者(日本国籍を有しない者及び女性を除く。)である。
 平成七年度から平成十一年度までに実施された放射線疫学調査(以下「第U期調査」という。)の調査対象は、平成七年三月三十一目までに中央登録センターに事前登録された者のうち、日本原子力研究所、動力炉・核燃料開発事業団(平成十年十月一日以降においては核燃料サイクル開発機構。以下同じ。)、日本原燃株式会社若しくは登録管理制度に参加している核燃料の加工事業者等の施設又は商業用原子力発電施設で放射線業務に従事した者(日本国籍を有しない者を除く。)である。
 このように、核燃料の加工事業者等の施設で放射線業務に従事した者については、第T期調査では調査対象としていないが、第U期調査では参加事業者の施設で放射線業務に従事した者を調査対象としている。医療関係機関で放射線業務に従事した者については、医療関係機関が参加事業者ではないため、いずれの調査においても調査対象としていない。研究機関で放射線業務に従事した者については、いずれの調査においても参加事業者である日本原子力研究所又は動力炉・核燃料開発事業団で放射線業務に従事した者を調査対象としている。廃棄物埋設施設又は廃棄物管理施設で放射線業務に従事した者については、第T期調査では日本原子力研究所の施設で放射線業務に従事した者を、第U期調査では日本原子力研究所又は日本原燃株式会社の施設で放射線業務に従事した者を調査対象としている。

四について

 第U期調査の解析対象から除外された者について、お尋ねの(一)から(七)までのグループの人数の内訳は、別表二のとおりである。
 御指摘の「(一)放射線業務に従事しなかった者」とは、中央登録センターに事前登録がされたものの、実際には放射線業務に従事しなかった者であり、登録された時点では放射線業務に従事することが予定されていたため登録されたものと考えられる。
 放影協において算出したところ、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)の施行の日から平成十年三月三十一日までにおける「(二)日本国籍を有しない者」の一人当たりの平均累積線量は四・七ミリシーベルト、累積線量の最大値は二百・七ミリシーベルト、累積線量の最小値は零ミリシーベルトであったと聞いている。また、同期間における「(三)住所情報が得られなかった者」の一人当たりの平均累積線量は一・四ミリシーベルト、累積線量の最大値は二百六十六・五ミリシーベルト、累積線量の最小値は零ミリシーベルトであったと聞いている。

五について

 お尋ねの調査は、放射線による健康への影響に関する疫学的調査の手法の一つであり、広島及び長崎の原子爆弾被爆者に対する疫学的調査や、アメリカ合衆国、カナダ等における原子炉等の施設の放射線業務従事者に対する疫学的調査でも広く採用されている。
 原子爆弾被爆者の疫学的調査からも、低線量域の放射線による健康への影響は発がんが主であるとされており、放射線疫学調査もまず低線量域の放射線とがんとの関連について明らかにすることを目指している。これまでの調査では、解析対象集団の平均年齢が若いため同集団における死亡者が少なく、統計的に十分に信頼性のある結果を得るには至っていないが、今後、調査を継続することにより、得られる結果の信頼性が高くなることが予想されるため、今後も調査を継続することが必要である。
 なお、御指摘の第U期調査の報告書の記述のとおり、致死率の低いがんについては、死亡についての調査のみでは放射線とがんとの関連を正確に把握することは困難であるため、補助的な調査として、放射線業務従事者のがん罹患状況に関する調査の実施の可能性について検討を行っている。

六について

 放射線管理手帳(以下「手帳」という。)の取扱い、記入等の事務手続に関しては、中央登録センターが「放射線管理手帳運用要領(事業者用)」及び「放射線管理手帳記入要領(事業者用)」(以下「運用・記入要領」という。)を作成しており、これらに基づいて手帳の記入その他の運用が行われていると承知している。
 運用・記入要領においては、参加事業者は、事業所で作業者を放射線業務に従事させる場合は手帳を携行させること、手帳の保管は原則として当該放射線業務従事者等を雇用している参加事業者が行うこと、参加事業者が手帳の記入をする際には、原則として黒ボールペンを使用し、自動記帳機の場合は黒リボンを用いること等とされている。
 手帳に記載されている被ばく線量等の数字と中央登録センターに登録された線量記録等とを照合して確認することについては、手帳の記入等の運用が放影協と参加事業者及び手帳発効機関との間の契約に基づいて自主的に行われているものであること並びに手帳の記入等の運用状況にかんがみ、政府が、個別の手帳の内容について確認する必要があるとは考えていない。放射線業務従事者等は、自己の放射線管理の記録等について、雇用する参加事業者等に申し出て照会することができるものと承知している。
 また、運用・記入要領において、放射線業務従事者等が退職等で離職する場合には、本人に手帳を渡さなければならないとされているところ、これを法令等で義務付けることについては、手帳の運用が放影協等において自主的に行われていることにかんがみ、その必要があるとは考えていない。

七について

 労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第六十七条第一項に定める健康管理手帳(以下「健康管理手帳」という。)は、がんその他の重度の健康障害を生ずるおそれのある業務で、労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号)第二十三条に定めるものに従事していた者のうち、一定の要件に該当する者に対し、離職の際に又は離職の後に交付しているものであるところ、同条に定める業務に放射線業務は含まれておらず、現在、放射線業務に従事していた者に対しては、健康管理手帳は交付されていない。
 放射線業務については、労働安全衛生法及び電離放射線障害防止規則(昭和四十七年労働省令第四十一号)により、個々の放射線業務従事者につき被ばく限度を超えないことが事業者に義務付けられ、その遵守が徹底されているところであって、健康管理手帳による離職後の健康管理が必要とまでは言えないと考えている。

八について

 第T期調査は平成二年度から平成六年度にかけて実施されたが、平成五年度末の時点で生死の確認ができた集団が解析の対象とされた。一方、第U期調査では、平成六年度以降に生存が確認された者を含めて第T期調査からの継続分として追跡調査が行われたため、お尋ねのように解析の対象者が増加しているものである。

九について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、放射線業務従事者等が健康診断を受診することは、公立病院においても可能である。

一〇について

 お尋ねの「電離放射線労働災害補償制度」及び「原子力損害賠償請求」の「適用」が何を指すのか明らかではないが、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)による保険給付の請求がなされた場合には、同法第四十六条に基づき、行政庁は、使用者等に対して、必要な報告、文書の提出又は出頭を命ずることができるものとされており、これは、保険給付の請求が被ばくによって疾病を発症したとして行われる場合も同様である。原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号)においては、原子力事業者がデータを提出することは義務付けられていない。

一一について

 第T期調査及び第U期調査の報告書は、これまでの調査では、「低線量域の放射線が悪性新生物の死亡率に影響を及ぼしているとの明確な証拠は見られなかった」としつつ、解析対象集団が「低線量域の放射線被ばくに伴うがん死亡率のリスクを評価するのに足る十分な統計学的検出力を持つには至っていない」ことから、「低線量域の放射線と健康影響についてより信頼性の高い科学的知見を得るためには、長期にわたる観察が必要」などと述べており、「影響がない」と断定しているものではないから、御指摘は当たらないと考える。
 放射線疫学調査の信頼性を向上させるためには、長期にわたる生死確認の追跡調査、死因調査等を通じて取得した多くの調査データについて統計解析等を実施する必要があることから、今後とも調査を行うことが必要であると考えている。
 なお、放射線疫学調査では二十歳から八十四歳までの死亡者を対象にしており、死亡率を比較する場合は、同じ年齢分布の集団間で比較する必要があると考える。

一二について

 放射線疫学調査は、文部科学省の委託により放影協が実施しているものであり、コンピュータプログラムの開発やデータの入力等調査の補助的な作業の一部を除き、放影協に設置された放射線疫学調査センターの職員が、国内の放射線科学、疫学、統計学等の専門家の指導及び助言を得て実施しているものである。
 これまでに第T期調査及び第U期調査に国が支払った費用の総額は三十九億四千五百七十七万九千円であり、その詳細は、別表三のとおりである。

一三について

 放射線疫学調査の報告書の保存期間は、文部科学省文書処理規則(平成十三年文部科学省・文化庁訓令第一号)第六十二条により三年とされている。
 右報告書は、公開で開催されている原子力委員会及び原子力安全委員会に文部科学省が報告する形で公表され、資料は財団法人原子力安全技術センターの原子力公開資料センター等で公開されている。また、地方においても容易に閲覧できるよう、放影協のホームページにおいて報告書全文を公開する予定であると承知している。


別表1 登録の種類、項目の名称、項目の数 1/2


別表1 登録の種類、項目の名称、項目の数 2/2


別表2


別表3 第T期調査、第U期調査



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