答弁本文情報
平成十四年八月二十七日受領答弁第一六二号
内閣衆質一五四第一六二号
平成十四年八月二十七日
衆議院議長 綿貫民輔 殿
衆議院議員長妻昭君提出食品の安全等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員長妻昭君提出食品の安全等に関する質問に対する答弁書
一の1について
エンドリンが検出されるほうれんそう等の輸入、販売等を行った場合は、食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)第七条第二項に違反することになるが、本年四月二十六日、農民運動全国連合会(以下「農民連」という。)は、同月八日に東京都内の飲食店で購入した「ホウレンソウとしめじソテー」(以下「本件食品」という。)について残留農薬検査を行ったところ、エンドリンが〇・一ppm検出された旨を発表した。これを受けて、埼玉県が当該飲食店に納品されていた「冷凍食品カットほうれんそうIQF」について残留農薬検査を行ったが、エンドリンは検出されなかったところである。
アフラトキシンB1が含まれる食品の輸入、販売等を行った場合は、同法第四条に違反することとなるが、輸入時の検査でアフラトキシンB1の検出が確認された食品に係る輸入業者による輸入届出年月日等については、別表のとおりである。
エンドリンについて現在までに行われた調査研究では、発がん性を否定する結論は得られていない一方、発がん性を肯定するものも認められないことから、IARC(国際がん研究機関)が化学物質を発がん性に係る評価結果に基づき五段階に分類した分類表においては、グループ3(人に対する発がん性について分類できないもの)に分類されているところであるが、主な調査研究の内容は次のとおりである。
(二) 平成四年のWHO(世界保健機関)の報告書によれば、実験動物を用いた六件の慢性毒性・発がん性併合試験が紹介されており、マウスを用いた二件の試験のうち、一件では発がん性が認められないとされ、他の一件では発がん性を評価できないとされており、また、ラットを用いた四件の試験では、いずれも発がん性が認められないとされている。
他方、アフラトキシンB1については、IARCの分類表において、グループ1(人に対する発がん性を有するもの)に分類されており、人においてがんを引き起こす可能性が確認されているところであるが、アフラトキシンB1に関する主な調査研究の内容は次のとおりである。
(二) FAO(国連食糧農業機関)及びWHOが合同で設置したJECFA(食品添加物専門家会議)の平成十年の報告書によれば、実験動物を用いた研究論文が紹介されており、動物が一生涯にわたりアフラトキシンB1を摂取した場合に肝腫瘍を引き起こす飼料中のアフラトキシンB1の濃度は、魚類及び鳥類では一キログラム当たり十マイクログラムから三十マイクログラム、ラットでは一キログラム当たり十五マイクログラムから千マイクログラム、ツパイでは一キログラム当たり二千マイクログラムとされている一方、数種のマウスでは一キログラム当たり十五万マイクログラムの濃度でも肝腫瘍の発生が認められなかったとされている。また、霊長類においては、リスザルに一キログラム当たり二千マイクログラムを十三か月間投与した場合に肝腫瘍が認められたが、アカゲザル、アフリカミドリザル及びカニクイザルに一頭当たり平均九十九ミリグラムから千二百二十五ミリグラムを二十八か月から百七十九か月を超える期間投与した場合の肝腫瘍の発生率は、七パーセントから二十パーセント程度であったとされている。
一の3について
農民連がエンドリンを検出したと発表した本件食品に用いられていた「冷凍食品カットほうれんそうIQF」は、株式会社西洋フードシステムズの経営するCASA光が丘店が本年四月一日から同月六日にかけて仕入れたものであり、同月二十六日の農民連による調査結果の発表後は本件食品の販売を自粛していることから、本件食品の販売期間は最長で同月一日から同月二十六日までの二十六日間であったと推定される。
また、輸入時の検査においてアフラトキシンB1を含んでいることが確認された食品については、食品衛生法違反として廃棄、積戻し等の措置が採られ、我が国に輸入されないことから、国内では販売されていない。
エンドリンについては、一の2についてで述べたとおり、人に対する発がん性は立証されておらず、また、人においてがんを引き起こす可能性を示すデータも得られていない。
アフラトキシンB1については、平成十年のJECFAの報告書において、一日に体重一キログラム当たり一ナノグラムを継続的に摂取した場合の肝臓がんの発生リスクは、十万人当たりの年間がん発生件数で、B型肝炎の抗原保有者では〇・三件、B型肝炎の抗原非保有者では〇・〇一件とされており、発がんリスクの存在が確認されているところである。
エンドリンについては、仮に本件食品に農民連が発表した濃度のエンドリンが残留していたとしても、これまでの毒性学的知見によれば直ちに人に対する健康影響が生ずることはなく、また、その販売期間は短期間であり、継続摂取による健康影響の懸念もないと考えられるほか、本件食品の原材料である「冷凍食品カットほうれんそうIQF」について埼玉県が行った調査ではエンドリンは検出されなかったことから、本件食品の摂取実態の調査を行うことは考えていない。
アフラトキシンB1については、輸入業者がナッツ類等の輸入時に検査を行い、アフラトキシンB1が検出された貨物については輸入前に廃棄又は積み戻しの措置を講じていること、各地方自治体からアフラトキシンB1が含まれた食品が発見されたとの報告もないこと等から、国内における摂取はないものと考えており、摂取実態の調査を行うことは考えていない。
都道府県等に対して、過去五年間において離乳食又はベビーフードから違法添加物等が検出された事例の有無について調査を依頼したところ、違法添加物及び発がん性物質の使用事例はない旨の報告を受けたところである。また、離乳食、ベビーフード等の加工食品には残留農薬の基準値が設定されていないことから、基準値以上の残留農薬があった実態の有無等についてお答えすることは困難である。
本年七月二十二日の衆議院決算行政監視委員会第三分科会において、厚生労働大臣から、今後どのようにしたら国民の不安を解消できるかという観点から、御指摘の食品等輸入届出書に使用農薬の記載を義務化することも含め、残留農薬の規制について総合的に検討する旨を答弁したところであるが、輸入業者による食品等輸入届出については、輸出元が多数の農場から農産物を仕入れている場合等に輸入業者が使用農薬のすべてを確認することは難しく、また、仮に輸入業者に把握し得る農薬名のみを食品等輸入届出書に記載させることとしたとしても、記載されていない農薬の残留の有無が確認されない限り、国民の不安を解消することは難しいと考えられる。
現在、検疫所による残留農薬の検査において更に多くの農薬を迅速に検査する方法の検討を行い、順次検査対象農薬を追加することとしており、本年九月にも検査対象農薬を追加する予定である。